【無痛分娩】漫画「コウノドリ」第10巻を読んで(ネタバレ注意)

スポンサーリンク

2015年の秋に綾野剛さん主演のドラマでも話題になった漫画「コウノドリ」(鈴ノ木ユウ作)。産婦人科を舞台にした、人間的あな魅力に満ちた作品です。その第10巻に描かれたのが「無痛分娩」でした。

漫画「コウノドリ」とは

無痛分娩 コウノドリ綾野剛

漫画「コウノドリ」は、2012年から「モーニング」(講談社)に短期集中連載の形で始まり、2017年4月現在も継続。単行本17巻まで発売されています。

主役は、医師でジャズピアニストでもある鴻鳥サクラ。聖ペルソナ総合医療センターの産科を舞台に、様々な背景を持つ妊婦とその家族の物語が紡がれていきます。

僕は2015年の秋にTBSで放送されたドラマで知りました。綾野剛さん演じる主人公の、プロフェッショナルでありながら人間味あふれる姿に感動し、毎週欠かさずに見ました。

その後、鈴ノ木ユウさんの原作漫画を読み、この作品の魅力にますますハマッていきました。

第10巻に描かれた「無痛分娩」

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

コウノドリ 10巻
価格:607円(税込、送料別) (2017/4/30時点)

 

その第10巻に描かれたのが、「無痛分娩」をめぐる物語でした。

僕の妻は、次女の出産時に無痛分娩を選択(希望)しました。ところが、硬膜外麻酔の失敗による「硬膜穿孔」と、それにともなう「脳脊髄液減少症」という医療事故で、出産後長期間にわたって苦しみました。

※ここから、作品の内容にちょっと触れます。ネタバレにあたる部分がありますので、作品を先に読みたい方はご注意ください。

「コウノドリ」第10巻に登場するのは、心臓に疾患を抱えた妊婦です。出産の際の心臓への負担を避けるために、主人公の鴻鳥サクラから、無痛分娩の方針を告げられます。

つまり、この妊婦は自ら希望して無痛分娩を選んだのではなく、医療的な事情で、医師がその分娩方法を選択したのです。これは重要なポイントです。

病院のマンパワーを考えて、鴻鳥ははっきりと

「ウチの病院は、妊婦希望の無痛分娩はできないよ」

と言っています。なぜなのでしょうか?

無痛分娩の実施に必要な体制とは

無痛分娩 コウノドリ綾野剛2

聖ペルソナ総合医療センターの院長が、高額な自由診療費をとることのできる妊婦希望の無痛分娩を始めたいと言ったときに、鴻鳥サクラが返したセリフは、非常に示唆に富んでいます。

「毎日ひっきりなしに搬送が来ている中で、予期できない陣痛に合わせて麻酔を入れて管理していくなんて、今のこの病院の体制では100%無理です」

そして、実現するための体制として、こういうセリフを言っています。

「理想を言えば、産科麻酔専門の麻酔科医が、24時間バックアップ出来れば一番いいと思いますけどね」

これは重要な指摘です。現状では、無痛分娩を実施している産科の多くでは、専門の麻酔科医ではなく、産科医が麻酔のコントロールも兼ねているようです。

2017年4月25日に報道された、大阪の個人病院における無痛分娩の死亡事故も、麻酔を打ったのは産科医である院長自身でした。

鴻鳥は、「餅は餅屋」として、硬膜外麻酔のコントロールは、専門家である麻酔科医が行うべきだと言っているのです。

ところが、日本では麻酔科医の数がまったく足りておらず、少ない人員がフル稼働しているような状況です。これが、日本で無痛分娩が普及拡大しない最大の理由となっています。

鴻鳥の同僚が、こう言います。

「確かに産科麻酔の専門医を雇ってわざわざ希望での無痛分娩のために24時間対応するなんて、この病院じゃあ、まぁ無理だな」

これに対して、鴻鳥はこう返します。

「人員を確保しやすい平日の昼間だけ対応している病院もあるけど… 出産は予定通りにはいきませんから」

スポンサーリンク

無痛分娩を希望するなら、麻酔科医の体制を見よ

2017年4月17日の新聞記事で報じられたように、無痛分娩の死亡事故は、硬膜外麻酔のトラブルが起こったときに、対応しきれなかったケースが多いと考えられています。

前述の2017年4月25日に報じられた大阪の死亡事故も、麻酔による呼吸不全に対応できなかったことが原因となりました。産科医の院長が麻酔のコントールも兼ねるという、極めて脆弱な体制で無痛分娩が行われていたと思われます(詳しい状況は分からない)。

僕も無痛分娩の医療事故を経験した者として、何度も繰り返して言いますが、もし無痛分娩を希望(医療的な事情ではなく)されるなら、専門の麻酔科医が万全の体制でコントロールしてくれるのかどうかを、必ず確認してほしいと思います。

もし、万全の体制が約束されていない場合、麻酔に伴うリスクをよく理解し、責任をもって選択してください。

「コウノドリ」のいくつかのセリフには、このように無痛分娩に関する、現在の日本の医療現場の実情が映し出されています。

〔追記〕
2011年4月に京都の産院で起こった医療過誤訴訟。赤ちゃんが脳に重大な障害を持って生まれ、その後3歳で亡くなったという痛ましい事故でした。事故の原因のひとつとして「陣痛促進剤」の過剰投与が示唆されています。
【無痛分娩】2011年4月に京都の産婦人科で起こった事故 脳に障害、3歳で死亡 ―陣痛促進剤の過剰投与か―

〔追記〕
2012年11月に京都の同じ病院で起こった訴訟。母子ともに意思疎通のできない重大な障害を負いました。原因の可能性として「局所麻酔薬中毒」が挙げられました。
【無痛分娩】2012年11月に京都の産婦人科で起こった事故 母子ともに脳障害で提訴 ―局所麻酔薬中毒か―

〔追記〕
2015年8月には、神戸の病院で、36歳の母親が陣痛促進剤の過剰投与と思われる子宮からの大量出血などで亡くなる事故がありました。異変が起こった後の病院側の対応にも問題があり、刑事告訴されました。
【無痛分娩】2015年8月に神戸の産婦人科で起こった事故 36歳の母親が死亡 ―陣痛促進剤の過剰投与で刑事告訴―

〔追記〕
2015年9月には、同じく神戸の違う病院で、硬膜外麻酔の事故によって母子ともに重い障害を負い、母親は1年8か月の昏睡の末、35歳で亡くなりました。赤ちゃんは今も脳の障害を抱えています。麻酔の処置を行った後、きちんと監視をせず妊婦を放置した結果、この事故は起こりました。
【無痛分娩】2015年9月に神戸の産婦人科で起こった事故 31歳の母親が死亡 ―麻酔科医の不足が一連の事故の根底に―

〔追記〕
2016年5月にも京都の同じ病院で医療事故が起こっています。この事故でも、母子ともに意思疎通のできない重大な障害を負いました。原因として「全脊髄麻酔状態」が考えられています。
【無痛分娩】2016年5月に京都の産婦人科で起こった事故 母子ともに脳障害で提訴 ―全脊髄麻酔に陥ったか―

〔追記〕
これらの事故(2017年4月~6月に相次いで報道された)を受けて、日本産婦人科医会が全国の産婦人科に対して実態調査を行うことになりました。今後の安全性向上に生かされるよう、強く希望します。
【無痛分娩】日本産婦人科医会が実態調査を開始 ―現場の状況を把握し、これ以上の犠牲者を出すなー

「お腹を痛めなければ…」という迷信は捨てる

この物語には、医療現場の実情の他に、お産をめぐるもうひとつの側面が描かれています。それは、「お腹を痛めなければ…」という古めかしい迷信に関するものです。

心臓に疾患を抱える妊婦は、友人からこんなことを言われます。

「無痛分娩なんて、赤ちゃんより自分のコトが大切だから」

「楽して産むんだから、母性もおっぱいも出ない」

「たとえ病気でも、麻酔を使った出産は、自然に産んだ母親の愛情には適わないからカワイソウ」

こういう言葉は、あまりにも配慮に欠け、暴力的だと思います。しかも、この妊婦の場合、心臓に疾患があるため、通常の出産ではリスクがあるため、医師の判断として無痛分娩を行おうとしているのです。このように、二つのリスク(心臓疾患によるリスクと、無痛分娩によるリスク)を天秤にかけた上で、より高いリスクを回避するために、医師が無痛分娩を選択するのであれば、それに従うべきだろうと僕は思います(その場合も、麻酔科医の体制はしつこいくらいに確認すべきですが)。

お産は、一人一人が選択すべきものです。リスクについて把握し、医師と入念に相談し、病院の体制を確認した上で、責任をもって決断するのであれば、誰からも非難されるものではないと思います。

スポンサーリンク

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ