【コウノドリ】2017年 第5話 おなかの中で亡くなった赤ちゃん ―IUFD(子宮内胎児死亡)の現実―(※ネタバレ注意)

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2017年10月からスタートしたドラマ「コウノドリ」の第2シリーズ。11月10日放送の第5話は「長期入院 ママがあなたにできること」と題して、おなかの中で赤ちゃんが亡くなってしまうIUFD(子宮内胎児死亡)のエピソードが描かれました。

切迫早産からのIUFD(子宮内胎児死亡)

ドラマで描かれたのは、妊娠27週の妊婦、西山瑞希(にしやま・みずき)のケース。診断の結果、切迫早産の可能性があり急遽入院することになります。

今生まれてしまうと、胎児が未熟で自発呼吸ができない可能性があるため、絶対安静が求められるのです。2か月におよぶ長期入院となります。

悲劇は入院から1か月後に起こります。妊娠32週に入ったころ。検診でエコーをみた鴻鳥サクラは、胎児の心拍を確認できないことを告げます。子宮内で赤ちゃんが死んでしまったのです。

IUFD(子宮内胎児死亡)とは

おなかの中で赤ちゃんが亡くなってしまうことは、決して珍しいことではありません。まず、「流産」と「死産」の違いについて確認しましょう。産科婦人科学会では、次のように定義されいてます。

・流産 → 妊娠22週未満で赤ちゃんが亡くなる場合
・死産 → 妊娠22週以降に赤ちゃんが亡くなる場合

(ただし、厚生労働省では法律的に妊娠12週以降を死産と定義しています。その時点で生まれたとしても生命を維持できない時期であるため、この定義については議論が分かれています)

流産は全妊婦の約8%~15%に起こるとされていて、時期によって以下のように分類されます。

・化学流産(妊娠5~7週)全流産の22~44%
・初期流産(妊娠8~12週)全流産の34~48%
・後期流産(妊娠12~22週)全流産の2%未満

妊娠22週以降に胎児がなくなってしまうことを、IUFD=intrauterine fetal death(子宮内胎児死亡)といいます。そして、亡くなってしまった胎児の出産を死産と呼んでいます。死産は、どのくらいの確率で起こってしまうのでしょうか。

妊娠22週以降の出産児224,485例を対象として、日本における死産の疫学検討が行われた際の死産症例は2316例。つまり、流産のリスクを乗り越えた妊娠22週以降の妊婦さんの中で、死産は100人に1人の割合(約1%)で起きてしまうのです。

死産と早期新生児死亡数(生後1週間以内に亡くなること)を合わせて「周産期死亡」と言います。時期によって、以下のような割合で起こります。

・妊娠22~23週(6か月後半)33.3%
・妊娠24~27週(妊娠7か月)13.0%
・妊娠28~31週(妊娠8か月)6.3%
・妊娠32~36週(妊娠9か月)2.0%
・妊娠37週~(正期産・臨月)0.2%
・早期新生児死(生後1週間)43.3%

こうして見ると、妊娠22週以降の早い時期であるほど、死産のリスクが高いことが分かります。

今回のドラマでは、妊婦の西山瑞希は妊娠32週で心拍の停止が確認されました。

IUFD(子宮内胎児死亡)の原因

ドラマの中で、産科医の四宮(星野源)のセリフに「死産の4分の1は原因不明」という言葉があります。その通り、原因も分からないまま、いつのまにか亡くなってしまうというケースが多くあるようです。

ただ逆に言うと、4分の3のケースでは原因が特定できるわけです。上記の疫学調査では、以下のようなものが挙げられています(死産2316例の内訳)。

・原因不明 580例(25.0%)
・常位胎盤早期剥離 412例(17.8%)
・胎児形態異常(胎児水腫を除き、染色体異常を含む)393例(17.0%)
・臍帯因子(臍帯脱出、圧迫など)374例(16.1%)
・多胎・双胎間輸血症候群 186例(8.0%)
・非免疫性胎児水腫 130例(5.6%)
・周産期の感染(絨毛羊膜炎、母体感染を含む)68例(2.9%)
・胎盤疾患(常位胎盤早期剥離、前置胎盤を除く)65例(2.8%)
・妊娠高血圧症候群61例(2.6%)
・以上に含まれない胎児・新生児低酸素症53例(2.3%)
・その他の母体疾患47例(2.0%)

(引用:佐藤昌司※1:日本の死産の疫学‐日本産科婦人科学会周産期登録データベースから. 産科と婦人科.75(4).413‐417.2008)

今回のドラマでは、鴻鳥が夜を徹して論文を調べ、究明を試みますが、結局原因は分かりませんでした。赤ちゃんの死亡を確認した翌朝、次にようなやり取りが交わされます。

瑞希「私のせいですか?私が切迫早産だったからですか?もっと安静にして、シャワーの回数を減らしていればよかったですか?」

鴻鳥「違います。西山さんのせいではありません」

瑞希「じゃあ、なんで赤ちゃん死んじゃったんですか?入院してて、なんで助からなかったんですか?」

鴻鳥「僕も昨日から、ずっと考えています。なんでだ…なんでだろうって。でも、分からないんです。妊娠初期からずっと経過を見てきて、西山さんがご夫婦でうれしそうに検診に来られていたことを覚えています。入院して1か月。赤ちゃんのために頑張っていたことも知っています。しかし、僕には今回のことを予測することができませんでした。結果としてこうなってしまい、申し訳ありません」

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IUFD(子宮内胎児死亡)は自覚症状がない

IUFD(子宮内胎児死亡)は、妊婦健診の超音波検査で診断されるまで無症状で経過することが多いといわれてます。ただ、微細な変化を感じる場合もあるようです。

胎動を自覚し始める妊娠中期~後期においては、「胎動感の消失」を感じることがあるといいます。また、下腹部の違和感、異物感、冷感、乳房の張りの消失などを感じることがあります。

胎児が死亡してから日数が長くなると、子宮の縮小傾向が見られるようになる場合もあります。ただ、時問が経過しても諸症状に気付かず、妊婦健診時に胎児死亡が発見されることが多いのが現状のようです。

それだけに、赤ちゃんが亡くなっていることを告げられた時のお母さんの戸惑い、困惑は、大きなものになります。ドラマでも、そうしたお母さんの衝撃が克明に描かれていて、胸を締め付けられるものがありました。

亡くなった赤ちゃんは経腟分娩で生む

亡くなった赤ちゃんは、経腟分娩で生むのが一般的です。帝王切開は母体を必要以上に傷つけ、次回以降の妊娠出産にも大きな影響を残すので、第一選択にはなりません。

ドラマの中では、胎児の死亡が確認された後で、鴻鳥は次のように説明します。

鴻鳥「おなかの赤ちゃんですが、できれば早めに産んであげるのが望ましいと思います。亡くなった赤ちゃんの組織の一部がお母さんの血液の中に入ると、血が固まりづらくなって出血が止まらなくなることがあります。そうすれば出産の間に大出血を起こすこともあります」

瑞希「今からですか?」

鴻鳥「いえ。明日の朝からできるように準備しましょう」

瑞希「…分かりました」

ここで説明されているのは、DIC(播種性血管内凝固症候群)と呼ばれるもので、胎児成分に由来する組織が母体血中に侵入して、凝固異常を起こすものです。このリスクは極めて稀とも言われていて、このことを理由に出産を急かすのは、お母さんの心のケアの観点から、問題視する声もあるようです。

ただ、やはり死亡から時間が経ってしまうと、胎児の状態は刻々と痛んでいきます。ドラマでのこの後の展開にあるように、生まれてきた赤ちゃんとの限られた時間を大切にすることを考えると、赤ちゃんがきれいなうちに生んであげるのがいいのではないかと僕も思いました。

ただ寄り添う夫から学ぶこと

強く印象に残ったのは瑞希の夫、西山寛太のあり方でした。寡黙でほとんど口を開かない硬派な彼が、赤ちゃんの死と向き合う妻に、静かに寄り添い続ける姿には考えさせられるものがありました。

我が子をおなかの中で死なせてしまった妻が抱える悲しみ、自責の念、後悔…

僕たち夫は、妻の直面する計り知れない思いを、どう共有することができるでしょうか。安直な言葉をかけて、かえって傷つけてしまうかもしれません。苦しむ妻の姿を見ていられなくなるかもしれません。

瑞希の夫、寛太は、涙を流し続ける妻の背中を見つめ、ただ静かに寄り添い続けます。ただ、受け止める。それが夫にできる唯一のことなのかもしれません。そしてきっと、もっとも難しいことなのだと思います。

赤ちゃんとの限られた時間を大切に過ごす

今回のドラマの最大の見どころは、亡くなった赤ちゃんが荼毘に付されるまでの限られた時間を、いかに過ごすかという点だったように思います。

吉田羊さん演じる助産師の小松さんは、こんな風に瑞希に声をかけます。

小松「今日は母児同室だから、いつでもあかりちゃんのこと、抱っこしてあげてね。…おっぱい痛む?ちょっといい?少し張ってきてるね。冷たいタオル持ってこようか?冷やせば楽になると思うけど。…そう、無理しないでね」

瑞希「なんで…体はお母さんなのに…」

小松「そうだね。今は西山さん自身、色んなことが突然起きて何も考えられないと思う。ただ、西山さん聞いて。おなかの中で亡くなってしまったあかりちゃんは、西山さんの戸籍に残してあげられないんだ。だからね、抱っこでもいいし、沐浴をしてあげてもいい。絞ったおっぱいをあげてもいいし、写真をいっぱい撮ってあげてもいい。手形や足形をとってもいいし、髪の毛や爪を切って残してあげてもいい。あかりちゃんと一緒に過ごせる間に、あかりちゃんのためにしてあげたいと思うこと、もしあったら、うちらは何でも協力するから。もちろん、無理にってことではないけどね」

寛太「あの、ふたりでお風呂入れてやってもいいですか?」

小松「もちろん」

赤ちゃんの亡骸を沐浴してあげる夫婦。これほど崇高なシーンがあるだろうかと、涙を禁じえませんでした。

戸籍に残すことのできない大切な命の証を、心に刻んでいく作業。壮絶な悲しみと背中合わせの美しい瞬間。

夫婦のあり方を痛切に考えさせられました。出産・育児をきっかけに夫婦関係を破綻させてしまった僕にとって、心に突き刺さるようなシーンでした。

赤ちゃんへの祝福と妻への感謝

瑞希が退院する日。「祈りの部屋」と書かれた部屋に西山夫婦と産科のスタッフが集います。そして、スタッフ全員が、丁寧におくるみに包まれた赤ちゃん(あかりちゃんと名付けられた)の亡骸を順に抱っこしていく。そして助産師の小松さんが運んできた箱には、美しい誕生ケーキが。

これは夫の寛太が、妻のための作ったもの。ケーキに添えられたプレートには「あかり おめでとう ママありがとう パパより」と書かれている。

亡くなってしまった赤ちゃんに「おめでとう」と伝えること。そして、自分を責め続けているであろう妻に「ありがとう」と伝えること。

理屈では語ることのできないこうした思いを、ドラマだからこそ感じ取ることができました。西山瑞希役の篠原ゆき子さんという女優さん、西山寛太役の深水元基さんという俳優さん、どちらも僕は知らない方でしたが、真に迫る素晴らしい演技を見せてくれました。

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