【コウノドリ】2017年 第4話 トーラック(TOLAC)とは ―帝王切開後の自然分娩のリスク―

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2017年10月からスタートしたドラマ「コウノドリ」の第2シリーズ。11月3日放送の第4話は「自然分娩ー"良い母親"になるためのリスク」と題して、第1子を帝王切開で産んだ女性が第2子を自然分娩で産もうとするエピソードが描かれました。

トーラック(TOLAC)とは何か

「コウノドリ」第4話で話題となったのは、「トーラック」という言葉でした。これは「Trial of labor after cesarean section」の頭文字「TOLAC」で、直訳すると「帝王切開後の自然分娩への挑戦」を意味します。

第1子で帝王切開をした妊婦が、第2子の出産で自然分娩(経膣分娩)に挑戦することを指します。

そして、トーラック出産に成功すると、「ブイバック」、つまり「Vaginal birth after cesarean delivery」=「VBAC」、直訳すると「帝王切開出産後の経腟分娩」となります。

トーラックを希望する女性の心理

今回のドラマでは、安めぐみさんが演じる秋野蓮(あきの・れん)を通じて、トーラックを希望する女性の心理が描かれます。

蓮は第1子の出産が帝王切開となったことに後悔の念を抱いています。「おなかを痛めずに産んだ」「楽をして産んだ」という罪悪感から、長女をきつい言葉で怒ってしまうのは、自分に母親としての愛情が足りないからだと思い込んでいるのです。

同じ理由でトーラックを希望する妊婦さんは多くいるようで、ドラマに対する反響にもそういった声が寄せられました。

トーラックが可能な条件

トーラック出産に挑戦できる人には条件があります。

・胎児の頭と骨盤の大きさから経腟分娩で問題ないと診断
・帝王切開が過去に1回だけである
・帝王切開は横に切られている(子宮下節横切開)
・術後の経過が順調だった

第1子の出産が緊急帝王切開だった場合は、計画的に帝王切開を行った場合よりも大きく縦にメスを入れます。そうなるとリスクがより高まるため、トーラックは許可されないことが多いそうです。

また、子宮筋腫摘出など子宮体部筋層に届く手術をしたことがある場合も、トーラックは許可されません。

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トーラックのリスク

トーラックには大きなリスクが伴います。ドラマの中のやりとりを見てみましょう。

蓮「ここなら自然分娩できると紹介されて来たんです」

鴻鳥「トーラックには必ずリスクが伴います。それはご存じですか?」

蓮「はい。自分なりには調べてます」

鴻鳥「ご主人はご理解されていますか?」

夫「あ…えっと…何となく説明は聞きましたが」

小松「男の人には、ちょっと難しい話だよね」
(※吉田羊さんが演じる助産師)

蓮「あの、私やっぱり後悔が残っていて…」

夫「またその話かよ!」

蓮「陣痛を味わって産道を通して産むと、子供に対する愛情、違うんですよね」

小松「そんなこと気にしちゃダメだよ。それはあくまで思い込みだから」

夫「それ、僕も言ったんです」

蓮「先生、お願いします。私どうしても自然分娩がいいんです。チャレンジさせてください」

鴻鳥「トーラックの成功率は、だいたい7割くらいだと思ってください。分娩が進まなかったり、赤ちゃんが苦しそうなサインを出したら、緊急帝王切開に切り替えます。それとトーラックは、まれに子宮破裂を起こすことがあります。もし子宮破裂が起きてしまったら、お母さんはもちろん、おなかの中の赤ちゃんも危険です」

蓮「危険…っていうのは?」

鴻鳥「赤ちゃんの脳に後遺症が残ったり、最悪、亡くなるケースもあります」

夫「あの、その子宮破裂が起る確立って、どれくらいなんですか?」

鴻鳥「1000人に5人くらいです」

夫「1000分の5…」

蓮「それでも、私やりたいです。痛みから逃げた。楽して産んだ。だから上の子の子育てもうまくいってないんじゃないかって、私そう思ってるんで」

このやり取りにあるように、大きなリスクのひとつに「子宮破裂」があります。帝王切開を経験したことのない女性の経腟分娩の場合は、子宮破裂のリスクが0.01%なのに対し、帝王切開を経験している人のリスクは10倍から100倍になるといわれています。

さらに、帝王切開経験をしたことのある妊婦さんの帝王切開での子宮破裂の発生頻度は0.16%なのに対して、トーラック出産の場合は0.52%というリスクの高さになるといわれているようです。まさに鴻鳥が説明したように「1000人に5人くらい」ということになります。

子宮破裂の確率を簡単にまとめると、

・帝王切開の経験なし+自然分娩 → 0.01%
・帝王切開の経験あり+帝王切開 → 0.16%
・帝王切開の経験あり+トーラック → 0.52%

つまり、自然分娩で第1子も第2子も産む人に比べると、第1子を帝王切開で産んで第2子をトーラックで産もうとした場合の子宮破裂のリスクは、なんと50倍以上に高まるのです。

また、脳性麻痺など、赤ちゃんの体へ重度の障がいを残してしまうこともあるようなので、トーラックを行う場合には、家族と医師との間で、考えられるリスクやその対応について話し合いを重ねることが大切です。

産科医は妊婦の心に寄り添ってほしい

秋野蓮のように第1子の帝王切開によって罪悪感を抱いてしまうのは、周囲の人間の心無い言葉がきっかけになることが多いと言います。

「おなかを痛めなければ母親としての愛情が湧かず、生まれてくる子供がかわいそう」

などという迷信を吹き込む人は、驚くほど多いのが現状のようです。そういう言葉を、親や夫、友人など近しい関係の人に言われるのは、ただでさえ不安な妊婦にとって大きな負担となります。

そういう人たちの意識を変えるのは簡単ではありません。だからこそ、医師のあり方が問われるのだと思います。

帝王切開も立派なお産なのだということを、最も理解のある専門家として、妊婦にきちんと伝えてあげてほしいです。

〔関連記事〕
【コウノドリ】2017年 第3話 無痛分娩の必要性と産後うつのリアル(※ネタバレ注意)

今回のドラマでは、蓮の陣痛が思うように進まず、高まるリスクを回避するために、最終的に帝王切開に切り替えることになります。でも、鴻鳥をはじめとする医師のチームが、ギリギリまで妊婦の希望をかなえようと必死に経過を見守ったことで、蓮は納得してそれを受け入れることができたのだと思います。

もし、医者の都合を押し付けるような形で、妊婦の気持ちがないがしろにされるような形で、帝王切開が実施されてしまったならば、蓮は心の傷をさらに深めることになったでしょう。

無事出産が終ったとき、鴻鳥はこんな言葉を蓮にかけます。

「秋野さん、赤ちゃんも、こんなに頑張ってくれたお母さんに感謝しています。どう産んだかよりも、どう思って産もうとしたか。その思いはきっと赤ちゃんに伝わっています。みなちゃん(長女)にとっても、そして赤ちゃんにとっても、秋野さんは世界一のお母さんなんです。おめでとうございます!」

この言葉によって蓮の心は救われ、第1子の帝王切開のトラウマも乗り越えていきます。

出産を通じて夫も成長する

今回もうひとつ注目のポイントだったのは、蓮の夫の成長でした。

絵に書いたようなダメ夫。出産についてまったく当事者意識がなく、妻が陣痛で入院しても、同僚との飲み会に行こうとして(しかも屋形船…)ひんしゅくを買うような男。

そんな夫が、命がけで出産に臨む妻を目の当たりにして、目を覚まします。

妻が自然分娩を諦めなければならなくなったとき、彼はこう声をかけます。

「蓮はいい母親だよ。頑張ってくれて、ありがとう」

蓮は夫のこの言葉があったから、帝王切開を決意できたのでしょう。

そして、妻のトーラックの希望をかなえようと徹夜で寄り添ってくれた医師に対して、彼はこう言って頭を下げます。

「僕たち夫婦のわがままを聞いてくれてありがとうございます」

意識が低ければ「妻のわがままを」と言ってしまいそうなところです。僕だったら、そうい言ってしまったかもしれない。

でも彼は「夫婦のわがまま」と言ったのです。見習いたいと思いました。僕はもう2人の子供が生まれてからずいぶん時間が経ってしまって、今さら手遅れかもしれませんが、「コウノドリ」はこんな僕にもたくさんの気付きを与えてくれます。

「コウノドリ」関連の記事

産科医療の現場を描いた名作漫画「コウノドリ」とそのドラマ。大きな感動と考えるきっかけを与えてくれるこの作品について、いくつかの記事を書いています。

〔原作漫画〕
漫画「コウノドリ」第1巻に、「切迫流産」のエピソードが紹介されました。厳しい現実に夫婦はどう向き合うのか。学ぶことのたくさんある作品、これからパパになる男性にもぜひ読んでいただきたいです。
【コウノドリ】漫画 第1巻 「切迫流産」のリスク ―症状と対処法・治療法―

無痛分娩に関して、原作漫画に描かれたエピソードについて書きました。
【コウノドリ】漫画 第10巻 「無痛分娩」が心疾患を抱える妊婦に適用されるケース

〔2017年秋のドラマ第2シリーズ〕
第3話は、産後うつの深刻な現実を突き付け、大きな反響を呼びました。原作漫画の第10巻に登場した無痛分娩のエピソードもドラマで描かれました。
【コウノドリ】2017年 第3話 産後うつの深刻な現実、そして無痛分娩が必要なケース

第4話では、第1子を帝王切開で生んだお母さんが第2子を自然分娩で生もうとトライするケースが描かれました。
【コウノドリ】2017年 第4話 トーラック(TOLAC)とは ―帝王切開後の自然分娩のリスク―

第5話では、死産に直面したお母さんとその夫の姿が描かれました。日本における死産の現状についても、記事で触れています。
【コウノドリ】2017年 第5話 おなかの中で亡くなった赤ちゃん ―IUFD(子宮内胎児死亡)の現実―

第6話では、甲状腺に持病を持った妊婦が急変して亡くなってしまうという痛ましいエピソード。そのリスクについて考えました。
【コウノドリ】2017年 第6話 妊婦と甲状腺機能亢進症 ―甲状腺クリーゼのリスクを知る―

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