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【映画の感想】是枝裕和監督『万引き家族』 本当の絆とは何かを問う感動作

こんにちは!えいぷりおです。

すごーく遅ればせながら、是枝裕和監督の『万引き家族』を見てきました。

第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(最高賞)を受賞。2018年6月に公開されました。

家族とは何か…? 本当の絆とは何か…?

この映画は家族のあり方を静かに問いかけます。

もしあなたが、親子関係や夫婦関係に行き詰まって苦しんでいるとしたら、この映画はあなたのためのものです。

僕自身、自分の家族のことを重ね合わせて、様々なことを感じました。そのことを書き留めておきます。

映画『万引き家族』とは

映画『万引き家族』の概要です。

『万引き家族』

監督・脚本・編集:是枝裕和

撮影:近藤龍人

音楽:細野晴臣

公開:2018年6月8日

受賞:

  • 第71回 カンヌ国際映画祭
    パルム・ドール(最高賞)
  • 第36回 ミュンヘン国際映画祭
    アリ・オスラム賞(外国語映画賞)

家族というものを様々な視点で見つめてきた是枝監督。現代社会の様々な問題を折り込みながら、本当の絆とは何かを、深い慈しみをもって描いた作品となりました。

名優たちの紡いだ家族像

この作品の主人公は、ある6人家族。都会に埋もれた小さなボロボロの平屋に身を寄せ合って暮らしています。

彼らは本当の家族ではありません。一人ひとりが心に傷を抱えながら、絆を求めて、犯罪を共有することでつながっています。

それぞれの登場人物の事情は詳しくは説明されませんが、生活の断片から彼らの背景が少しずつ見えてきます。

注意
ここから先、ネタバレの情報が含まれます。まだご覧になっていない方は、先に映画をご覧になることをおすすめします。

柴田治/リリー・フランキー

東京の下町に暮らす日雇い労働者。現場で怪我をして、ろくに働かなくなるダメな男だけど、ウソがなく、情に厚く、憎めません。

こういう役をリリー・フランキーさんほど自然に演じられる人を僕は他に知りません。もはや「演じている」という領域を超越しています。

子供に万引きさせることについて問いただされたとき、彼は

「他に教えられることが何もないんです」

と語ります。

万引きは犯罪。そんなふうに断罪するのは簡単です。でも…

おそらく彼は、教養もなく、手に職もなく、ずっと貧困の底辺を生きてきたのでしょう。子供に対して、まっとうに生きる道を教えてやれなかったのだと思います。

それでも、実の親から虐待された子供たちに、彼は愛を注ぎました。子供たちに「自分は大切にされている」と感じられる場を与えました。

柴田信代/安藤サクラ

治の妻。クリーニング店工場のパート従業員。親からひどい虐待を受けた過去、そしてかつての夫からも激しいDVを受けた過去を持っています。

安藤サクラさんからは、年齢を超越した凄みがにじみ出ています。あの存在感は何なんだろう。

幼いゆりを両親のもとに返しに行くシーン。ゆりの母親が「産みたくて産んだわけじゃない!」とわめくのを聞いて、信代はゆりを自分の娘として育てる決意をします。

「産みたくて産んだわけじゃない!」

と母親から言われる悲しみを、信代は身をもって知っていたんですね。

物語の終盤に忘れられない場面がありました。

取調室で警察官から、

「あの子達に、あなたは何と呼ばれていた?お母さん?ママ?」

と聞かれたときの、信代の表情。胸をえぐられるような悲しみをたたえた彼女の表情に圧倒されました。

〔関連記事〕2014年に公開され、安藤サクラさんが日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞をとった『百円の恋』。安藤さんの役者魂に圧倒される作品です。

【映画の感想】安藤サクラ主演『百円の恋』 人はどん底から必ず立ち上がれる!

柴田亜紀/松岡茉優

信代の妹。女子高生の格好をして接客する風俗店で働いています。

両親との関係に挫折し、家を出ています。風俗店での源氏名「さやか」は妹の名前。大きなコンプレックスと心の傷を抱えて、この家に転がり込みました。

風俗店の客の一人に、池松壮亮が演じる青年がいます。彼は何らかの障害を持っていて、うまく話ができず、自傷行為を繰り返しています。

亜紀は、そんな彼に自らを重ねます。

「私もね、自分を殴ったことあるよ。痛いよね…」

若く美しい女性なのに、自分を傷つけるような生き方しかできない亜紀。

そんな彼女にとって、6人家族は唯一心をあたためることのできる拠り所だったのです。

柴田祥太/城桧吏

治の息子。学校には通っておらず、治とタッグを組んで万引きをしています。愛読書はスイミー。

本当の息子ではなく、パチンコ屋の駐車場の車中に置き去りにされて、ぐったりしていたところを、車上荒らしをしていた治が救い出しました。

祥太は両親から育児放棄されていたのです。

柴田家に来てからは、育児放棄されることはなくなりました。しかし、誘拐されてきた身なので、学校に通うことができません。教育の機会を奪われたのです。

物語の終盤で、柴田家が離散したあと、彼は施設に入り、学校にも通うようになります。

治(リリー・フランキー)との別れの場面、去りゆくバスの中で、祥太が小さくささやく言葉は、涙なくしては見られません。

ゆり(りん、北条じゅり)/佐々木みゆ

治が柴田家に連れて帰ってきた少女。両親からは虐待を受けています。

ゆりは信代(安藤サクラ)と、腕に同じ傷跡を持っています。親からアイロンを押し当てられた火傷のあとです。

ゆりは、信代の傷跡を優しくなでます。「もう痛くないよ」と言っても、首を振って、なで続けます。

親からつけられた傷は決して癒えないことを、幼い心でちゃんと分かっているのです。

柴田家が離散したあと、兄の祥太と違って、彼女は両親のもとに引き戻されます。そして、また虐待の日々が始まります。

映画のラストカット。ベランダに閉め出されたゆりは、遠くの空を見つめます。

不安、絶望、恐怖、そして数ヶ月間の楽しかった柴田家との日々…

幼いゆりが本当の意味で救われる日は来るのでしょうか。僕たちは、このような子供たちのために何ができるのでしょうか…?

柴田初枝/樹木希林

治の母。年金受給者。夫とはすでに離婚しています。

都会に埋もれた小さなボロボロの平屋に、血の繋がりのない5人を住まわせています。

詳しくは描かれていませんが、元夫に裏切られるような形で離婚に至ったようです。

だから彼女は知っているのです。法的な家族のつながりなど何も意味がないことを。

家に集った6人は、世間から認められる「家族」ではありません。でも初枝は、心に傷を抱える者どうしの特別な絆を感じていたのだと思います。

6人で電車に乗って海水浴に行くシーン。波打ち際ではしゃぐ5人を遠目に見ながら、彼女は声に出さずに感謝の気持ちをささやきます。

「自分で選んだ絆は強い」

6人の中で、キーになるのは幼いゆりです。

両親から虐待を受け、柴田家に発見されたとき、彼女は真冬のベランダに閉め出されていました。

連れ出されたゆりは、自らの意思で、両親のもとには戻らず、万引き家族の一員になることを選びます。

安藤サクラ演じる信代は、

「私たち、選ばれたのかな。あの子に」

「こうやって自分で選んだ方が強いんじゃない?・・・キズナよキズナ」

と語ります。

僕たちの社会では、親を選ぶことなど本当はできません。

でももし、法的な関係も血縁も取り外せるとしたら、僕たちは主体的にどのような家族関係を選ぶのでしょうか。

本当の絆とは何か…?

それを考えるためには、既存の枠組みを一度はずしてみることも大切なのではないか。

『万引き家族』を見て、僕はそんなことを考えました。

自分の家族を振り返って

僕は自分の築いてきた家族関係に行き詰まっています。

二人目の子供の妊娠・出産を機に、夫婦関係は壊れてしまいました。

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今は単身赴任のため別居中ですが、妻のもとにいる子供たちは、僕の悪口を吹き込まれて育っています。

妻とは、もう何かを分かり合えるとは思っていません。

でも、せめて子供たちには、人のことをフェアな目で見られる人になってほしい。

そのために、今の「家族の形」にこだわるべきなのか…?

毎日悩んでいます。

もし離婚して、子供たちの親権が妻にいったとしたら、僕という存在は子供たちの人生から消えてしまうのではないか。

そんなふうに恐れている自分がいます。

ひとたび結婚してしまうと、法的なことやお金のことなどが大きすぎて、柔軟に考えるのが難しくなります。

『万引き家族』は、法的な形をなしていない、お金もない、そんな奇妙な人たちの物語です。

だからこそ、現代社会にがんじがらめになった僕たちに、訴えかけてくるのだと思います。

参考図書

是枝裕和監督が自ら小説化した本。映画では詳しく語られなかった一人ひとりの背景などが描かれています。これを読んでから、もう一度映画を見ると、見え方がより深くなりますよ。

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是枝監督が2016年に書いた自叙伝。『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』などの作品を振り返り、「この時代に表現しつづける」ための方法と技術、困難、そして可能性が綴られています。

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  • 『奇跡』(2011年)
  • 『そして父になる』(2013年)
  • 『海街diary』(2015年)
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えいぷりお的まとめ

家族を描いた映画は数あれど、『万引き家族』は僕たちの時代のひとつの縮図として、他にはない強い読後感を残します。

貧困、虐待、育児放棄(ネグレクト)、DVといった家庭の問題、さらには、年金不正受給、高齢者社会、ギャンブル依存、雇い止め、労災などの社会的な問題まで織り込まれています。

これだけの問題を抱えながらも、6人家族には笑顔があり、互いに慈しむ気持ちがあります。

僕の家族には、あの笑顔があるだろうか?彼らのように互いを慈しんでいるだろうか?

そんな問いかけを与えてくれる作品でした。

あなたの家族はどうですか?もし行き詰まって悩んでなら、この映画を見に行ってみてください。

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