こんにちは!アート大好き、えいぷりおです。
メディア・アートの最先端を行くチームラボの「水」という展示を見てきました。
世界的な日本画家、千住博(せんじゅ・ひろし、1958~)とのコラボ。
どんな展示だったのか、感想を記します。
大阪は「水の都」
まず、今回の作品展示の概要です。
千住博 & チームラボ
コラボレーション展「水」
- 場所:堂島リバーフォーラム(大阪)
- 期間:2018年7月14日~9月9日
(1週間延長されました) - 入場料:1000円
なぜ大阪で「水」の作品なのか?それは、大阪が「水の都」だから。
大阪は、江戸時代から淀川の水運を使って諸藩の物資が集まる「天下の台所」でした。その中心が中之島です。
▼ 右手に見るのが中之島。会場となった堂島リバーフォーラムはその対岸の遊歩道沿いにあります。
今回の展示は、堂島リバーフォーラムの会館10周年を記念して企画されました。
▼ 入り口に掲げられたポスター。
このポスターに描かれた滝の絵と波の絵が、今回の展示のモチーフです。
この絵を描いた千住博さんについて、簡単にご紹介しましょう。
日本画家、千住博とは
千住博(せんじゅ・ひろし、1958~)は、東京出身の日本画家。東京藝術大学大学院を修了。
1995年に代表作「滝(The Fall)」をヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア)に出品。東洋人初の名誉賞を受賞しました。
日本を代表する画家として国際的に活躍し、今はニューヨーク在住。
ちなみに、弟の千住明さんは作曲家、妹の千住真理子さんはバイオリニストとして著名です。まさに芸術家一家ですね。
【参考図書】 千住博さんの本格的な画集です。以前、図書館で見たことがあるのですが、千住さんがライフワークとして「水」をいかに大切にしているのかが伝わってきました。印刷も素晴らしいです。
【参考図書】 可愛らしい絵本も描いています。迷子になった小鹿が星空の下をさまよう物語。文字のない絵本で、不思議な世界が深く印象に残ります。
チームラボとは
千住博さんとコラボしたのが、メディア・アート界の騎手チームラボです。
チームラボは、2001年に東京大学と東京工業大学の大学院生ら5名によって設立された、デジタルアートの制作集団。
公式サイトには、活動のコンセプトがこう表現されています。
テクノロジーとクリエイティブの境界はすでに曖昧になりつつあり、今後のこの傾向はさらに加速していくでしょう。そんな情報社会において、サイエンス・テクノロジー・デザイン・アートなどの境界を曖昧にしながら、『実験と革新』をテーマにものを創ることによって、もしくは、創るプロセスを通して、ものごとのソリューションを提供します。
(引用:チームラボ公式サイト)
【参考図書】 チームラボとは何者かが分かる本。代表の猪子寿之(いのこ・としゆき)さん著。日本の伝統美術を敬愛しながら、どのようにデジタルで再構築するのか、その思考の一端に触れることができます。8作品を収めたDVD付き。
変わり続ける「水」の姿をアートする
右奥の入り口から展示会場へ。3枚の暗幕をくぐって中に入ります。
一歩足を踏み入れると、別世界にいざなわれます。公式サイトのこの動画を見ると雰囲気が分かると思います。
会場はちょっとした迷路のようになっていて、すべての壁がスクリーンと鏡になっています。
スクリーンには、荒々しい波が映し出され、飛沫を上げてぶつかり合います。
アニメーションとは、まったく違う世界観。
カメラでは撮影することのできない、吸い込まれるような闇夜の海。
水面に描かれた美しい光の線。
夜の空に浮かび上がる濃紺の闇。
まぎれもない日本画の海が、本物の波のように動いています。
神秘的な音楽が流れ、視覚とのズレが不思議な感覚をもたらします。
鏡が効果的に配置され、床は艶出しの黒アクリル。反射する波の映像を見ていると、暗い海が永遠に続いていくような錯覚にとらわれます。
見る者を360度包み込む暗い海の世界が,ふっとひらけると、美しい光の筒が現れます。
淡いブルーで描かれた滝の絵が、薄い布に描かれ、光を透過します。
音もなく微かに揺れる蒼い光に、全身が浄化されていきます。
デジタルであることを感じさせないテクノロジー
飛沫を上げる波に見入っていると、だんだんデジタルアートであることを忘れていきます。
本当に漆黒の大海原にいるような気がしていくるのです。
でも、その裏には、複雑なテクノロジーが隠されています。
本物の波の動きを解析して、絵を動かすだけでも、大変な技術だと思います。
僕が驚いたのは、波の動きが決まったパターンの繰り返しではなく、二度と同じ動きをしないことです。
瞬間ごとに次の動きが生み出される。まさに自然そのもの。このようなプログラミングができるなんて、神がかっています。
そして、映写の技術。
僕が数えたところ、38個のプロジェクターが使われていました。それらが、切れ目なく連動して映像を映し出します。
プロジェクターどうしの映像のつなぎ目は、目を凝らしても分かりませんでした。驚くべき精度です。
この手の展示は、映像のつなぎ目など、技術的な詰めの甘さが見えると、一気に現実に引き戻されてしまいます。
チームラボの制作者たちは、見る者がアートの世界に没入できるよう、細心の注意を払って調整を重ねたのだろうなぁと想像しました。
ダイナミックな変化も味わいたかった
ですが、物足りなさも感じたのも、正直な気持ちです。
展示物が波と滝、これしかなかったからです。
たった2枚の絵を見るのに1000円の入場料はちょっと高いなぁ… などと興ざめなことを考えてしまいました。
僕の貧相なアイデアで恐縮ですが「こうしたら、もっと面白かったのになぁ」というのを考えてみました。
まず、何かしらの「変化」、例えば「時間軸」のような要素が加わると、もっと楽しめるのではないかと。
夜明けの静かな海、日中の輝く海、夕日が沈む海、そして闇夜の海… みたいな感じで、時間帯が刻々と変化していくのです。
こういう変化があると、1時間でも2時間でも飽きずに見てしまうと思います。
さらに、何かしらの「驚き」や「発見」があると、ちょっと得した気分になりますよね。
例えば、イルカが現れたり、遠くを船が通ったり… ちょっとした遊び心がほしかったです。
千住博の日本画の世界観を大切にしつつも、僕たちの想像を超えるような変化や驚きや発見があったらよかったなぁと感じました。
えいぷりお的まとめ
現代は「もの」ではなく「体験」にお金を使う時代と言われます。
さらに、同じ体験でも、より立体的で、五感すべてに訴えるような体験が求められる時代になっていくと思います。
これからのアートは、ただの平面的な世界ではなく、世界に入り込み、触れて味わうようなものになっていくでしょう。
今回の「水」展も、世界に入り込む体験型のコンテンツでした。
チームラボが今後、どんなアーティストとコラボして、どんな新しい世界を作ってくれるのか、楽しみです。