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【産後クライシスとは?】 妊娠・出産をきっかけに起こる夫婦の危機

こんにちは。えいぷりおです。

産後クライシス」という言葉が、広く認知されるようになってきました。妊娠・出産をきっかけに、妻が夫を憎むようになる現象のことです。

この記事は、「産後クライシス」をテーマに書いた連載のひとつです。

今回は産後クライシスとは何かについて、専門家の解説を交えてお伝えします。

「産後クライシス」とは

「産後クライシス」とは「産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況」を意味します。

この言葉は2012年9月放送のNHK「あさイチ」で話題となり、世間に知られるようになりました。

産後クライシスによって離婚にまで発展する夫婦が年々増加していると言われています。

離婚する夫婦の3割が、産後2年以内に離婚

こちらの表をご覧ください。

産後 0~2歳の表

(引用:平成23年度全国母子世帯等調査

これは、離婚して母子家庭になった世帯を対象に行った調査で、離婚した時に末っ子が何歳だったかを調べています。

赤枠で囲ったところに注目してください。離婚した時に、末っ子が0~2歳だったというケースが、全体の何%かを示しています。

平成18年には、31.0%。そして、その5年後の平成23年には、34.2%に増加しています。今僕がこの記事を書いているのは平成29年ですから、さらに増加している可能性が濃厚です。

つまり、離婚した夫婦の3割以上が、末っ子が0~2歳のタイミングで離婚を決断していて、その割合は年々増加傾向にあるのです。

ちなみに、末っ子の年齢が3~5歳、6~8歳・・・と順に見ていくと、平成18年に比べて平成23年は、すべての年齢層で離婚した夫婦の割合は減少しています。0~2歳で離婚する夫婦の割合だけが、際立って増加しているのです(父子家庭についても、まったく同じ傾向が見られます)。

生後2年までの夫婦が離婚を選択する理由として注目されているのが、産後クライシスなのです。

産後、妻から夫への愛情は急速に冷める

もう一つ、衝撃的なグラフをご覧ください。

産後 愛情グラフ

(引用:ベネッセ次世代育成研究室の調査

このグラフは、夫婦がお互いに「相手を愛している」かどうかを示しています。

妊娠しているときには、「妻を愛している」と感じる夫の割合は74.3%。そして、「夫を愛している」と感じる妻の割合もまったく同じ74.3%です。

ところが、出産後、0歳児期、1歳児期、2歳児期・・・と時間が経つに従って、この愛情グラフは下降線をたどっていきます。

男性の下降線は、まだゆるやかで、2歳児期でも51.7%と、なんとか半分以上をキープしています。

しかし女性の冷め方は急激で、2歳児期には34.0%にまで落ち込んでしまい、男性との間に大きな溝ができていることが分かります。

夫婦の意識の差が浮き彫りになった恐ろしいグラフですね。夫は、妻の愛情がここまで冷え込んでいることに気付かないかもしれません。

2012年9月放送のNHK「あさイチ」

「産後クライシス」という言葉が知られるようになったのは、2012年9月5日にNHKで放送された「あさイチ」の特集がきっかけと言われています。

特集のタイトルは夫婦を壊す『産後クライシス』

実際に産後クライシスに陥った夫婦の実話を交えながら、専門家が産後クライシスについて解説し、これまで語られることのなかった夫婦の危機に光を当てました。

多くの視聴者から「自分も同じだ!」と大きな反響が寄せられました。

ここからの記述は、この番組から引用してお伝えしていきます。

出産後の夫婦の認識には大きな差がある

産後 街頭インタビュー

番組の冒頭では、何組かの夫婦の街頭インタビューが紹介されました。

インタビューはアンケート形式で行われ、まず「子供が生まれた後、相手への愛情は減ったか?」という問いが投げかけられます。ヘッドホンを使って、それぞれが本音を言いやすい状況にして行われました。すると、

夫「妻への愛情は、出産後も特に変わらない」

妻「表向きは変わっていないが、内心はちょっと愛情がダウンした。育児にもっと参加してくれるだろうという期待感があったので・・・」

と夫婦間で食い違う見解が。続いての質問は、夫婦同時に○×形式で。問いは「産後に夫婦の危機があったか?」というもの。すると、

夫「危機なんて、なかった」

妻「当然あった!オムツ替えやお風呂に入れるのを、夫が最初イヤがったから・・・」

他の夫婦も、妻からは不満の声が続々と挙がります。

妻「『子供が泣いているよ』って言ってないで、あなたが何かしてよ!と思った」

妻「妻は家にいて子供の面倒を見て家事をすべてやるものだ、という夫の思い込みと、自分のギャップを埋められないまま、子供が生まれてしまった。今は離婚しないけど、子供が巣立ったら、その時は覚えてろよ!という気持ち。産後の恨みは忘れない

調査の結果、10組の夫婦のうち、6組の妻が産後クライシスを感じていました。注目すべきは、6組のうち5組は、夫に自覚がまったくなかったことです。

産後クライシスは夫への失望から

産後 先生

VTRには、お茶の水女子大学教授の菅原ますみさんが登場。産後の夫婦関係について、発達心理学の観点から研究しておられる方だとか。

菅原さんは、産後クライシスの原因をこのように話しました。

「産後クライシスの原因は、妻が期待するほど共同作業がうまくいかないこと。なかなか夫が育児や家事をやる時間がなかったり、仕事で疲れすぎていて体力・気力がなかったり。

さらに、家事・育児は女性の役割だよねという社会全体が共有している思い込みも大きい。

妻は期待するほどのサポートが得られず、そこに対する失望が反映して、産後クライシスを生んでしまう

産後1年で妻の愛情は急速に冷める

先程ご紹介したグラフを、もう一度見てみましょう。

産後 愛情グラフ

(引用:ベネッセ次世代育成研究室の調査

この結果について、スタジオMCのイノッチがこんな発言をしました。

「妻の愛情が最初の1年で急落しているのが特徴的。最初がいかに肝心かを示しているのでは」

鋭い指摘ですよね。最初の1年で妻から夫への愛情は、74.3%→45.5%に急落。出産直後の夫のあり方が、妻のその後の愛情に決定的な影響を与えているのですね。

夫は、妻が妊娠したら、すぐに心の準備を始めなければならないということでしょう。

夫に欠けているには親としての自覚

産後 コンサル渥美

このグラフについて、スタジオゲストとして、ワーク・ライフ・バランスのコンサルタントをしているという渥美由喜さんが登場。なぜ、夫婦間の愛情にギャップができてしまうかについて、こう説明しました。

「赤ちゃんが生まれると、妻の愛情は赤ちゃんに向かう。それと同時に、こんな大変な子育てを、当然夫もやってくれるだろうと期待する。しかし、期待するほどには夫はやってくれない。どんどん不満が募ります。

一方、夫はそういう妻の気持ちには無頓着で、他人事のように思っている。そういう夫婦の認識のずれが、夫婦間の愛情のギャップとして現れてくる

なぜ男は妻の気持ちの変化に気付かないのかについては、こんな風に語りました。

「核家族化の世の中になって、男性が育児の現場に触れる機会が失われている。

一方、妻は産婦人科に通う中で、先輩のママ友から色々教わって知識を蓄えている。夫は子供が生まれてきても、オロオロするだけで役に立たない。出産の時点で、親としての自覚に大きな開きができている」

産後の恨みは一生残る

スタジオゲストとして登場したカウンセラーの荒木次也さんは、これまでに500組以上の夫婦のカウンセリングをしてきたそうです。

産後 荒木カウンセラー

「夫婦関係に悩んで相談にくる方々の7割は、産後からの問題を抱えている。しかし、夫はそのことをほとんど分かっていない。妻はずっと恨み続けるので、子供が大きくなってからも、様々な場面で『またか・・・』と思い出すのです」

前に登場したコンサルタントの渥美さんは、こう指摘します。

産後クライシスを経験した妻の多くが、将来的に離婚することを考えている。産後クライシスで埋め込まれた地雷が、夫の親の介護の際に爆発するケースもある。夫の親の介護など絶対にしないと考えている妻は、本当に多い。一生引きずる問題なのです」

参考にした本

2012年9月放送のNHK「あさイチ」の担当ディレクターと記者が書いた本です。女性の視点を中心に書かれているので、男性が学ぶには参考になると思います。

妊娠・出産でボロボロになった妻の心情が、具体的なエピソード満載でつづられています。あなたの奥さんがなぜいつもイライラしているのか、分かるようになります。

「ファザーリング・ジャパン」という日本最大のパパ団体の講師陣が書いた本。先輩パパたちの目線で、育児のノウハウを教えてくれます。

2児の父が妻の産後をつぶさに観察した産後日記です。男女の産後の日々の感じ方の違いが漫画で描かれていて、とても読みやすいです。

夫婦問題カウンセリング7000件の実績をもつ著者による本。産後クライシスに限らず、夫婦関係全般に渡って書かれています。

えいぷりお的まとめ

産後クライシスは一過性のものではありません。一生引きずり、離婚にも至りかねない深刻な問題です。

僕自身、産後クライシスから夫婦関係が決定的に壊れ、家庭内別居になってしまいました。

夫は妻の妊娠・出産に、強い覚悟を持って臨まなければなりません。

夫として、父親として、しっかり関わっていくという責任感が伝われば、妻は安心するはずです。

出産から1年間が勝負です。そこで人間的な成長を示せなければ、その後の夫婦関係に大きな禍根を残すことになるでしょう。

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