こんにちは。そなてぃねです。
2020年6月2日に、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が無観客のライブ配信を行いました。
演奏者どうしの距離は通常より広めの「175センチ」。
ヨーロッパを代表するオランダの名門オーケストラも、「ウィズ・コロナ時代」を見据えて新たな一歩を踏み出そうとしています。
演奏会の概要
【ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 演奏会】
〈管弦楽〉
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
〈指揮〉
グスターボ・ヒメノ
- ベートーヴェン作曲
交響曲 第7番 イ長調 作品92
2020年6月2日
コンセルトヘボウ
無観客 ライブ配信
オランダの新型コロナ感染状況
6月7日現在のオランダにおける新型コロナウイルスの感染状況に触れておきます。
▼米国ジョンズ・ホプキンス大学の「COVID-19 Dashboard」の統計データから引用。オランダの新規感染者の推移がこちら。
このグラフによると、3月に入ってから新規感染者数が指数関数的に増え、3月26日には1日1000人を超えます。
その後3週間以上も高止まりの状態が続き、多い時は1300人超。1日の新規感染者数が1000人を下回ったのは4月20日になってからでした。
その後徐々に減少に転じますが、6月に入ってからも1日200人ペースが続いています。
6月7日現在、感染者の累計は47780人、死者数は6032人。オランダの人口は1738万(日本の7分の1ほど)ですから、かなり深刻な状態だということが分かります。
今回の無観客ライブ配信は、オランダ当局の「100人以下かつ互いに1.5mの距離を確保できる場合、不可欠な集会は実施できる」という5月8日付けの指針に基づいて行われました。
演奏者どうしの距離は「175センチ」
▼まず彼らは、5月28日に奏者どうしの距離を確保できるかどうかリハーサルを行いました。
(楽団の公式HPから引用)
場所は、彼らのホームグラウンドであるコンセルトヘボウの客席側です。手前に見えているのがステージ。客席をすべて取り払って広いスペースを作り、そこに楽団員が並んでいます。
これだけ広がった形で、本当にステージに乗ることができるのでしょうか…?
それでは、6月2日に行われたステージの様子を見てみましょう。
弦楽器奏者も一人ずつ譜面台
▼こちらがライブ配信された動画です。
▼正面から見た全体の並び。リハーサルの時より小さな編成になっています。
▼僕が書き起こしたステージ図面がこちら。間違っていたらごめんなさい。
弦楽器の正確な人数はよく分かりませんでした。ご容赦ください。
自信はありませんが、第1ヴァイオリン11人、第2ヴァイオリン9人、ヴィオラ7人、チェロ5人、コントラバス5人くらいの規模だと思います。
弦楽器は通常、2人で1組になって1本の譜面台を共有します。このペアを「プルト」と言って、客席に近い側の人を「表」、遠い側の人を「裏」と呼んだりします。
表と裏で音を弾き分けたり(ディヴィジ)、裏の人が譜めくりをしたりと、プルトの中で役割分担があります。
というわけで、普通は各パートの人数は偶数になることが多いのです。
ところが今回は、演奏者どうしの距離を広げたことで譜面台を共有できず、全員が1本ずつ譜面台を持つ形になっていました。
「プルト」の概念が崩れ、ヴィオラとチェロの首席奏者は、隣に仲間がいない状態になっていました。
▼一人に1本ずつ譜面台。譜めくりの時はどうするんだろう…?
ステージが広いから可能だが…
175センチというのは、畳の長い方の辺より少し短いくらいですから、結構な距離です。こうした余裕のある配置が可能なのは、コンセルトヘボウのステージが広いからだと思います。
▼斜めから見ると、奥行きの広さが分かりますよね。
今回はベートーヴェンの交響曲だったので、編成があまり大きくなく、この人数で演奏することができました。
▼ところが、大編成の曲の場合は、こんなに「密」になります(過去の映像)。
こういう曲は当面、演奏できないということになりますね…
演奏はさすがのクオリティ
普段とは違う距離感とはいえ、演奏はさすがのクオリティ。名門オーケストラの適応力の高さを感じました。
レパートリーは限定されますが、このスタイルで古典の作品は演奏ができることが確認できたわけです。
あとは感染状況が落ち着いて、観客を入れての公演が許可されれば、オランダのオーケストラ業界も本格的に動き出すことになるでしょう。
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