こんにちは。えいぷりおです。
2020年秋に出版された野原広子さんのコミックエッセイ『妻が口をきいてくれません』を読みました。
この本は、夫婦関係に悩むすべての人に読んでもらいたいです。
「あ、これは自分の物語だ…!」
「妻はあの時、こんなふうに苦しかったのか…」
「夫はあの時、こんなふうに悩んでいたのか…」
きっとこんなふうに共感したり、考えさせられたりして、何らかのヒントが得られると思います。
【夫婦関係の修復を目指して】
夫から見た世界 ~なぜ妻は無視するようになったのか~
この作品は、3部構成になっています。第1章は夫の視点で、第2章は妻の視点で描かれ、第3章では周囲の人たちが関わりながら、夫婦が新たなステージに進んでいきます。
夫はある日を境に、妻から完全に無視されるようになります。最初は軽く考えていた夫は、徐々にその深刻さに気づき始めます。なんと妻の無視は、5年以上も続くことになるのです。
けれど、何が原因か分からない。教えてほしいと懇願しても無視される。次第に妻に話しかけることが恐怖になっていきます。
「最近、妻の近くにいると息ができない。うまく話せない。体が強張る」
僕には、この夫の心境が痛いほどよく分かります。僕も妻から無視されたり、何を言っても人格否定されるという経験をしてきたからです。
それはまさに「生き地獄」。どんなに努力しても、妻と一緒に生きていく道が見つけられず、離婚の二文字が迫ってくる…
追い詰められていく夫の心境に、僕は自分自身を重ね合わせて、胸が痛くなりました。
けれど第2章に入ると、その認識が180度覆されていくのです。
妻から見た世界 ~なぜ夫は共感してくれないのか~
第2章は妻の視点で描かれ、夫を無視するに至った心の動きが明らかになっていきます。
夫が何気なく発した言葉の数々によって、妻はどれほど傷つけられてきたのか…
夫の存在を心の中から消してしまわなければ生きていけないほどに、どうしようもなく追い詰められていく妻の悲しみが描かれていきます。
そして、夫のすべてが嫌いになっていく心境が語られます。
「一度嫌いになったら転げ落ちるようにどんどん嫌いになっていく。歩く音が嫌い。歯磨きの音が嫌い。服のぬぎ方が嫌い。靴下のぬぎ方が嫌い。食べ方が嫌い。ドアの閉め方が嫌い…」
僕の妻もこんなふうに僕のことを嫌いになっていったのか… 妻の心の中を覗いてしまったような気持ちになって、息が苦しくなりました。
第1章で夫に共感していた自分が、第2章では夫の愚かさに自分を重ねて打ちひしがれる… この作品は読む者の心を激しく揺さぶります。
ふたりが進んでいく世界 ~周囲の人たちとの関わりの中で~
そして最終章、会話のなかった5年以上の月日を経て、夫婦は新たなステージに進んでいきます。
ネタバレになるので結末は書きませんが、大事なポイントとなるのは幼い子供たちの存在です。
妻は一番苦しいときに子供たちに救われます。そして夫は、子供たちを通じて妻の苦しみに初めて気付きます。
夫の同僚や妻の友人も、重要な役割を果たします。
夫婦関係は密室化して周囲の世界から切り離されていきがちです。だからこそ、周りの人たちとの繋がりが不可欠です。
夫の同僚は「まだやり直せると思う。本当に一人になったら寂しいよ」と励まします。
妻の友人は「ダンナさん、やさしいね。口きかないことを許してたって、それって… 愛されてたんじゃないの?」と、頑なになった心を解きほぐします。
僕にも、こういう言葉をかけてくれる人が数人います。悩みを打ち明けることができる、本当に尊敬できる人たちです。
殻に閉じこもらずに自らを客観視するためにも、彼等のような存在を、大切にしていきたいと思いました。
あとがき
この作品のラストは、ハッピーエンドとも言い切れないし、残念な結末とも言えない。その後の二人の紆余曲折が暗示されつつ幕を閉じます。
この複雑な後味こそ、夫婦関係の本質なのかもしれません。
夫婦の悩みに答える解説本は色々あると思いますが、この『妻が口をきいてくれません』という作品は、理屈ではなく心にダイレクトに伝わってくるという点で画期的です。
素朴な絵でありながら、登場人物の表情が豊かで、心の機微が繊細に描き出されているのです。
夫婦関係がうまくいかず、疲れ切っているときにこそ、読みやすくて心に染みるこの漫画がおすすめです。きっと何らかのヒントを見つけられるでしょう。
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