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【書評・本の感想】小杉健治著『父からの手紙』 親として子供にどんなメッセージを残せるか?

こんにちは。えいぷりおです。

小杉健治さんの小説父からの手紙を読みました。

初版は2003年。15年以上前の本ですが、50万部を突破して今も書店に平積み。「泣ける!」との目立つポップで売り出されています。

ミステリー小説でありながら、親子の絆とは何かが丁寧に描かれた傑作です。

今回は、『父からの手紙』を読んで、ひとりの父親として僕が感じたことを書きます。

『父からの手紙』のあらすじ

『父からの手紙』は、一見まったく関係のないふたつの物語が交互に描かれ、それらが徐々に重なり合っていく展開になっています。

その緻密な構成には圧倒されます。

『父からの手紙』

 

著者 小杉健治

発行 光文社(2006年3月)

えいぷりお感激度 ★★★☆☆(星3つ)

 

家族を捨て、阿久津伸吉は失踪した。しかし、残された子供、麻美子と伸吾の元には、誕生日ごとに父からの手紙が届いた。十年が経ち、結婚を控えた麻美子を不幸が襲う。婚約者が死体で発見され、弟が容疑者として逮捕されたのだ。姉弟の直面した危機に、隠された父の驚くべき真実が明かされてゆく。完璧なミステリー仕立ての中に、人と人との強い絆を描く感動作!(文庫本の裏表紙から引用)

親として子供にどんなメッセージを残せるか

僕がこの小説で考えさせられたのは、次のふたつの点です。

  • 親として子供にどんなメッセージを残せるか
  • 自己犠牲は大切な人を決して幸せにしない

まず、ひとつめについて。

主人公の麻美子の元に誕生日ごとに届く父からの手紙。その末尾には、必ず次のようなメッセージが書かれています。

「私はいつまでも君たちの父親であり、君たちの幸福を願い、常に傍らにいて君たちを見守っています」

シンプルな言葉の中に、父親としての溢れるような愛情が込められています。

立場は違いますが、僕もいま娘に会えない状況が続いています。

単身赴任で家族と離れて暮らすようになったのですが、以前から関係の壊れてしまっている妻に帰宅を拒否され、まだ幼い娘に会わせてもらえないのです。

会いたくて心が張り裂けそうです。せめて娘に愛していることを伝えたい…

そんな時に、この小説を書店で見つけました。

もし娘に手紙を書くとしたら、僕は父親としてどんなメッセージを与えられるだろう?

もし僕がこのまま娘に会えずに死んでしまうとしたら、どんな言葉を残せるだろう?

そう考えると、生き方が変わってきます。

娘にとって誇りに思える父親でありたい。正直な人間でありたい。誰かを幸せにできる存在でありたい…

『父からの手紙』を読みながら、そんなことを考えました。

娘に誕生日プレゼントと手紙を送ることにしました… 半年間も会えていない愛おしい娘へ…

自己犠牲は大切な人を決して幸せにしない

『父からの手紙』のもうひとつの重要なテーマは自己犠牲です。

この小説には、自分を犠牲にすることで大切な人を救いたいと考える、善意の人たちが登場します。

しかし、彼らの自己犠牲は大切な人を決して幸せにはしません。

密接した人間関係、特に親子の関係において、これはとても起こりがちなことです。

自己犠牲は一見美しいように見えますが、実はもっとも安易な方法だということが、この小説を読むとよく分かります。

誰かを幸せにしようと思ったら、まず自分自身が幸せにならなければいけないのです。

文章がしつこいのが残念

400ページ以上の長編を読んでいて残念だったのは、文章が少々しつこいこと。

登場人物の心境が丁寧に描かれるのはいいのですが、何度も同じような表現が繰り返されるのは、正直ちょっと苦痛でした。

僕が慌ただしい気持ちで読みすぎているのでしょうか…?

登場人物たちの行きつ戻りつ逡巡する心の描写を、もっとじっくり楽しめばいいのかもしれませんね。

えいぷりお的まとめ

15年前に書かれたミステリー小説が、今改めて平積みになっているのは、なぜだろう?

虐待事件が後を絶たない現在、親子の絆を描いた『父からの手紙』のような物語が、ますます求められているのかもしれません。

あなたがもし子を持つ親だとしたら、ぜひ読んでみてください。

きっと「愛する子供のために自分はどんなメッセージを残せるだろう…?」と考えるきっかけになると思います。

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