「自律神経失調症」とは何か。知っているようでよく分からない、それでいてとても身近な疾患です。心身にもたらされる様々な症状と対処法についてお伝えします。
自律神経失調症の症状
「自律神経失調症」と呼ばれる疾患には、身体的なものから精神的なものまで、実に様々な症状があります。列記してみましょう。
・全身倦怠
・疲労
・だるさ
・めまい
・立ちくらみ
・頭痛
・動悸
・息切れ
・高血圧
・低血圧
・生理不順
・便秘
・下痢
・不安感
・抑うつ気分
・緊張
・イライラ
・顔のほてり
・発汗
・冷え
・ふるえ
・肩こり
・吐き気
・食欲不振
・不眠
・・・他
数え切れないほどの症状の数ですね。器質的な原因がはっきりしない病気は、すべて「自律神経失調症」にカテゴライズされてしまうと言っても過言ではありません。
「自律神経」とは何か
「自律神経」の「自律」とは、どのような意味でしょうか。辞書には次のように定義されています。
「他からの支配や制約を受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること」
つまり自律神経とは、自分の意思とは関係なく、無意識のうちには自律的にはたらいている神経のことを指します。私たちが眠っている時も、食べている時も、考え事をしている時も、24時間365日、常に淡々と、心身が滞りなく機能するようにはたらき続けているのが「自律神経」なのです。
そして、自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」の2つの要素から成り立っています。2つがバランスよくはたらくことで、心臓をはじめとする内臓や血液の流れなどが管理され、呼吸、消化、代謝などのはたらきが調節されています。
出典:サントリー健康情報レポート
交感神経とは
「交感神経」と「副交感神経」は、「アクセル」と「ブレーキ」に例えられます。まず、「アクセル」の役割を受け持つ「交感神経」には、次のようなはたらきがあります。
・血管を収縮させる
・血圧を上げる
・心臓のはたらきを高める
・筋肉を緊張させる
・消化~排泄を抑制する
・発刊を促進する
このように、交感神経は心身を活発にするはたらきを受け持っていて、主に日中にはたらきます。脳と身体がしっかり動くよう、いい意味でも悪い意味でも、心身に緊張状態をもたらします。
副交感神経とは
次に、「ブレーキ」の役割を受け持つ「副交感神経」についてです。次のようなはたらきを担っています。
・血管を拡張させる
・血圧を下げる
・心臓のはたらきを抑える
・筋肉を弛緩させる
・消化~排泄を促す
・発刊を抑える
このように、副交感神経は心身を落ち着かせるはたらきを受け持っていて、主に夜間にはたらきます。脳と身体をリラックスさせ、睡眠をうながします。
2つのバランスが重要
心身の健康は、「交感神経」と「副交感神経」のバランスによって決まります。どちらか一方に大きく偏った状態が続くと、心身の状態が不安定になります。交感神経が優位になりすぎると緊張状態が持続してしまい、逆に副交感神経が優位になりすぎると活動力が低下してしまいます。
出典:サントリー健康情報レポート
自律神経の乱れが引き起こす疾患
自律神経が乱れることで、上に挙げたような様々な症状が起こりますが、それが進行すると、やっかいな病気に発展することがあります。以下のような病気が考えられます。
神経性胃炎
仕事などによる精神的なストレスや過労が原因となる胃炎です。ストレスや生活習慣の乱れなどから自律神経がバランスを崩し、胃酸が過剰に分泌されて、気分がふさぐ、のどがつかえる、胸やけがする、胃が痛む、胃がもたれる、といった症状が現れます。
過敏性腸症候群
腸のぜん動運動に異常が起こり、腹痛をともなう慢性的な下痢や便秘などが起こります。下痢と便秘が交互に起こることもあります。何週間も下痢が続いたり、一時的に治まり、その後再発するという現象を繰り返すこともあります。検査で調べても、目に見える異常が認められないのが特徴です。
メニエール病
ストレスなどが原因で内耳のリンパ液に異常が生じます。自分や周囲がぐるぐる回るめまいと、どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り、そして難聴の3つが同時に起き、多くの場合、強い吐き気や嘔吐をともないます。危険な疾患ではありませんが、放置すると耳鳴り・難聴が進行します。
〔参考記事〕
【女性のめまい】4つの主要な原因と対処法
過呼吸症候群(過換気症候群)
過剰な精神的ストレスが引き金となって、突然浅く速い呼吸を繰り返す疾患です。動悸や酸欠状態のような息苦しさを感じます。さらに呼吸のしすぎによって血液中の二酸化炭素が過度に減少することで、めまい、手足のしびれや筋肉のこわばりなどが生じます。息苦しさから呼吸をしようとして、さらに呼吸のスピードが速まる悪循環に陥ることもあります。
血圧サージ
健康診断で血圧は正常だと言われている人の中に、朝起きた直後や就寝後に、急激な血圧の上昇を起こすケースがあります。これが「血圧サージ」と呼ばれる疾患で、脳卒中や心臓病のリスクを高めることが分かっています。こうした血圧異常は交感神経の変調がきっかけで起こると考えられています。
【関連記事】
【血圧サージ】急激な血圧上昇がもたらす脳卒中や心臓病のリスク
自律神経のバランスは、こうして崩れる
自律神経は実はとてもデリケートで、生活において様々な影響を受けます。また、加齢などの避けることのできない要因も関係してきます。自律神経のバランスを崩す原因を、まとめてみましょう。
生活リズムの乱れ
交感神経は昼間が、副交感神経は夜が活動のピークになるります。つまり、脳や身体が活発に活動すべき日中には交感神経が、休息すべき夜間には副交感神経がよくはたらくようになっています。
それが、残業や夜ふかしなどで、休息すべき時間帯に休息できなくなると、副交感神経が優位になるべき夜の時間帯に、交感神経が優位になってしまい、2つのバランスが崩れます。
短期間の乱れなら、回復にはあまり時間がかかりませんが、長期的に不規則な生活が続くと、自律神経失調症の様々な症状が現れます。
激しい感情の起伏
ストレスが溜まってイライラしたり、電車に乗り遅れそうになってドキドキしたり、上司の八つ当たりが始まってビクビクしたり…。こういった激しい感情の起伏も、自律神経のバランスに影響を及ぼします。頻繁に繰り返されると、交感神経と副交感神経の切換に影響がおよび、自律神経失調症に陥いることになります。
環境の急激な変化
夏場に、冷房の効いた室内と、暑い屋外への出入りを頻繁に行ったりすると、自律神経は1日に何度も体温や発汗の調節をすることになります。すると、いわば自律神経が過労状態となって機能が低下し、冷えやのぼせといった症状が現れます。
加齢
中高年になると副交感神経の働きがガクンと低下します。交感神経のはたらきは歳を重ねてもあまり変わりませんが、副交感神経の働きは年齢とともに低下していくため、交感神経だけが強くはたらくアンバランスな状態になりやすいのです。
中でも注意しておくべきなのは、体内のライフラインである血流の低下です。血流のコントロールは自律神経の重要な役割の一つです。加齢とともに、血管を拡張に導く副交感神経のはたらきが低下すると、血管の収縮が過剰になり、血流が低下します。そのため、すみずみの細胞まで栄養や酸素が行き渡りにくくなります。
また、自律神経のアンバランスは腸内環境の悪化も引き起こします。腸に増えた有害物質は、血液に取り込まれ、全身に運ばれることになります。こうした状態が続くと、身体の機能は低下し、老化も進みやすくなってしまいます。
【関連記事】
【ハーブデトックス】身体の毒素をすべて排出!2ヶ月間の断食プログラムに挑戦(体験談1)
更年期障害
「更年期障害」とは、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」が、40代半ばから急激に減少し、この突然の変化に体がついていけず起こる様々な不調です。
更年期障害になることによって自律神経のバランスも乱れます。「少しだるいだけだから…」などと軽くみずに、長引く場合は医師に相談してみてください。
自律神経のバランスを崩しやすい性質
生まれつき敏感で緊張しやすい人、神経質で小さいことでも気になってしまう人は、交感神経が優位になりがちで、自律神経のバランスを崩しやすいタイプと言えます。
リラックスした状態を作っていくためには、呼吸法や瞑想など、精神的なトレーニングが有効です。
スポンサーリンク
[ad#adsense1]
自律神経のバランスを整える方法
では、どのようにして自律神経のバランスを維持するのか。また、いったん崩れてしまったバランスを修復するのか。その方法をご紹介していきます。
規則正しい生活を
すべての基本ですが、朝起きて、夜寝る、という生活リズムを大切にしましょう。そうすることで、日中に交感神経がはたらき、夜間に副交感神経がはたらくという、自律神経のリズムも整います。
まず朝起きたら、カーテンを開けて日光を浴びましょう。そうすることで、体内時計がリセットされ、身体にリズムが生まれます。
朝食をしっかり摂る
朝は、副交感神経が優位な休息モードから、交感神経が優位な活動モードに切り替わるタイミングです。ですが、一気に切り替えるのではなく、ゆっくりと穏やかに切り替えて行くことがポイントとなります。
ですので、朝食も心に余裕をもってゆっくりと摂りましょう。朝から強い緊張感で心身に負荷をかけるのではなく、ゆとりをもって1日をスタートすることが大事です。
【関連記事】
【朝食】朝は「排泄の時間」―朝ごはんにはフルーツ(果物)と水分を―
朝の支度をバタバタしない
できるだけ出発ギリギリまで寝ていたい人も多いと思いますが、その分、準備がバタバタになり、駅までダッシュするようなことになると、交感神経が刺激されすぎて、バランスを崩すことになります。
10分早く起きるだけでも、朝の時間に余裕ができます。ゆったりとした心境で準備をして、駅までの道のりも楽しみたいものです。
イライラしたら温かい飲み物を
ストレスは自律神経の天敵です。温かい飲み物で、過敏になった交感神経を落ち着かせましょう。ホットミルクでイライラを抑えるカルシウムをとったり、ハーブティーでリラックスしたりすると効果的です。
ゆっくり大きく深呼吸
日中であっても、交感神経の緊張が高まりすぎるのは禁物です。心身にストレスがかかったら、少し仕事から離れて、深呼吸をしてみてください。まずは緊張状態を自覚すること、そして自覚ができたら、深呼吸を実践してみること。これができたら、交感神経が加熱するのを抑えることができて、自律神経のバランスが維持されます。
ぬるめの入浴
夜の入浴は、交感神経が優位な状態から、副交感神経が優位な状態に切り替えていくのに、重要な時間になります。ぬるめのお湯に、ゆっくりと浸かることで副交感神経のはたらきが促されます。眠る1~2時間前くらいに入浴すると、就寝のタイミングにちょうど深部体温が下がりはじめて、入眠しやすくもなります。
睡眠については、こちらの記事もどうぞ。
【かくれ不眠】睡眠の質を高め、不眠を解消するために
室温の低めなミストサウナやスチームサウナも、リラックスするのに効果的です。こちらの記事も参考になさってください。
【サウナの効果】正しい入り方を知って健康に!
昼食後の短時間の昼寝
昼食後の睡魔に襲われる時間帯に、15~20分ほどの短時間の昼寝をすることは、疲労をリセットし、体内時計を維持するのに効果的です。
短時間の昼寝については、こちらの記事に詳しく書かれています。
【眠気を覚ます】 疲労スッキリ!たった20分の昼寝術
おだいじになさってください
ここに書かれている対策は、どれも皆さんご存じのことばかりだと思います。ですが、忙しい毎日の中で実践できているかというと、どうでしょうか。特に40歳を過ぎてからは、仕事が忙しくなる時期であると同時に、副交感神経のはたらきが低下してしまう時期でもあり、適切な対策が重要になります。自律神経のバランスは、心身の根幹です。大事にケアしていきたいものです。