2016年の夏に関西空港から感染が広がった麻疹(=はしか)は、9月11日時点で感染者115人。その7割近くを20~30代が占めていることが報告されました。はしかの年代別の感染リスクと対処法についてまとめます。
日本における麻疹ワクチンの歴史
※麻疹についての基本的な知識は、こちらをご覧ください。
※子供の病気については、こちらにまとめています。
麻疹ワクチンが定期接種(公費での接種)が始まったのは1978年です。当時は1回のみの摂取。1歳児に対して摂取されました。
1989年からは新三種混合ワクチン(MMR)として接種されるようになります。MMRとは、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)のワクチン、風疹ワクチンが混合されたものです。これも1歳児に対して1回のみの接種でした。
MMRはその後、ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)の副作用を招くことが分かり、1993年に中止。再び麻疹ワクチン単品の接種に戻りました。
ところがその後、1回のみの接種では、徐々に免疫力が低下することが指摘され、2006年4月から2回接種が義務付けられるようになりました。
2007年には高校生や大学生に大流行が起こり問題となりました。その解決策として、2008年から5年間限定で、中学1年生と高校3年生に対して公費での接種が行われることになりました。1歳の時に1回のみ接種していたこの世代に対して、2回目の接種の機会を与えたのです。
年代別の接種回数
1977年4月1日より前に生まれた人たちは、麻疹ワクチンを1回も受けていない世代です。2016年現在、39歳以上の人たちです。
1978年に導入された麻疹ワクチンを受けた最初の世代は、1977年4月2日以降に生まれた人たちです。2016年現在、39歳以下の世代です。彼らは1回しか接種を受けていません。
2回の接種を受けている最初の学年は、2008年に高校3年生だった人たち、つまり1990年4月2日以降に生まれた人たちです。つまり、2016年現在、26歳以下の世代です。彼らは、2008年から5年限定で行われた中学1年生と高校3年生への2回目の接種を受けることができた一番上の学年です。
まとめると、以下のようになります。
1977年4月1日以前に生まれた人たち
(この記事が書かれた2016年9月現在、39歳以上の人たち)
麻疹ワクチンを1回も受けていない。
1977年4月2日~1990年4月1日に生まれた人たち
(2016年9月現在、26歳~39歳の人たち)
麻疹ワクチンを1回のみ受けている。
1990年4月2日以降に生まれた人たち
(2016年9月現在、26歳以下の人たち)
麻疹ワクチンを2回受けている。
年代別の麻疹への感染リスク
麻疹ワクチンを受けている回数によって、感染に対するリスクが変わってきます。前項で分類した3つの世代ごとにまとめてみます。
1977年4月1日以前に生まれた人たち
(2016年9月現在、39歳以上の人たち)
麻疹ウイルスには「空気感染」という特徴があり、異次元とも言えるすさまじい感染力を持っています。そのため、ワクチンを打っていないこの世代は、ほぼ100%子供時代に麻疹に感染していて、免疫を獲得しています。そのため、一生麻疹にはかからないと考えられています。
1977年4月2日~1990年4月1日に生まれた人たち
(2016年9月現在、26歳~39歳の人たち)
麻疹ワクチンを1回しか受けていないため、子供時代は感染を免れていますが、その後徐々に抗体価が下がっていき、大人になってから感染するリスクが高まっています。
2016年夏の流行で、感染者のうち20代が38%、30代が30%と、20~30代が全体の7割近くを占めているのは、26歳~39歳が「谷間世代」となっているためです。
※1回のみのワクチン接種では効果がない理由は、こちらを。
1990年4月2日以降に生まれた人たち
(2016年9月現在、26歳以下の人たち)
麻疹ワクチンを2回受けているため、感染の可能性が低い世代です。ほとんどの人が麻疹にかかることはないと考えられています。
ワクチンの接種率は100%ではない
ただ注意しなければならないのは、ワクチンの接種率は100%ではないことです。何らかの事情で1歳の時と小学校入学前にワクチンを打っていない人もいます。年代や地域によっては、接種率が80%程度のこともあります。つまり10人に1~2人は、ワクチンを打っていない可能性があるのです。
自分が受けるべきワクチンをきちんと受けているのかは、母子手帳を見ると記録されているはずです。もし母子手帳を持っていない場合は、抗体価の検査を受けることができます。これは健康保険の対象外なので3000~5000円ほどの負担が生じます。
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