「疲れやすい」「寝起きが悪い」といった様々な症状の原因として、「フェリチン」という物質の不足が考えられます。
特に、「月経の異常」「立ちくらみ、めまい」など、女性が抱えている多くの問題の裏には、「フェリチン不足」が隠れているかもしれません。
この記事では、フェリチンとは何かを詳しく解説します。
フェリチン不足がもたらす様々な症状
まず、次の項目をご覧ください。皆さんは、どのくらい当てはまるでしょう?
- 疲れやすい
- 寝起きが悪い
- 肌荒れ
- 風邪をひきやすい
- むくみがある
- 便秘や下痢
- 食欲不振
- 吐き気がする
- 動悸、息切れ
- 胸が痛む
- 頭痛、頭重
- 冷え性
- 月経の異常
- 神経過敏
- 注意力低下、イライラ
- 髪が抜けやすい
- 歯茎の出血
- アザが良くできる
- 湿疹ができやすい
- 顔色が悪い
- のどの不快感
- 立ちくらみ、めまい、耳鳴り
- 肩こり、腰痛、背中の痛み
多岐にわたる症状ですが、これらは、鉄分の不足によって起こる可能性のある症状です。
鉄分の不足は、なぜ起こるのでしょうか?
それは「フェリチン」という物質と関わっています。
では、「フェリチン」とは何なのでしょうか。
フェリチンとは
フェリチンは、こんな物質
フェリチンとは、上の図のような形をした、たんぱく質です。
色分けされているように、24個のユニットが組み合わさって、一つのたんぱく質を形作っています。
白いつぶつぶが見えますよね。これは「鉄イオン」です。いわゆる「鉄分」ですね(この記事では「鉄分」と記すことにします)。
このようにフェリチンは、たくさんの鉄分を貯蔵することができるのです。
フェリチンは身体のどこにある?
フェリチンは身体のどこにあるのでしょうか?
フェリチンは、肝臓、心臓、脾臓、骨髄、小腸粘膜などに、たくさん存在しています。
それぞれの場所で、しっかり鉄分を貯蔵して、いつでも使えるように待機しているのです。
では、フェリチンが保持している鉄分は、何に使われるのでしょうか?
鉄分は「血の中」で活躍する
鉄分が活躍する場は「血」です。
血の中で酸素を運んでいるのは「赤血球」ですよね。
赤血球の中で、酸素を保持する役割をしているのは「ヘモグロビン」というたんぱく質です。
そして、ヘモグロビンの中で酸素と結合するのは「鉄分」です。
つまり、血の中の鉄分が不足してしまうと、全身に酸素を運ぶことができなくなるのです。
フェリチンは鉄分の補給係
血中の鉄分が足りなくなると、フェリチンの出番です。
肝臓、心臓、脾臓、骨髄、小腸粘膜などで待機していたフェリチンから、血中に鉄分が補給されます。
そうすることで、貧血になってしまうのを防ぐのです。
ヘモグロビンが最前線で活躍する兵隊だとすると、フェリチンは鉄分を補給する後方支援部隊のような感じですね。
しかし、もしフェリチンが足りなくなってしまったら、どうなるでしょうか?
フェリチンが足りなくなったら…
フェリチンが鉄分をすべて放出してしまったら、どうなるでしょうか?
実は、最初は誰もそのことに気付きません。
なぜなら、補給を受けたヘモグロビンは、まだ元気だからです。本当は補給庫は空っぽなのに…
下の図を見ると、イメージしやすいかもしれません。
(引用:フェリチン不足ナビ)
ではなぜ、補給庫の役割をしているフェリチンがなくなってしまったことに、気付くことができないのでしょうか?
通常の血液検査ではわからないフェリチン不足
血液検査では、普通は「フェリチン」の値は注目されません。貧血などの指標としては「ヘモグロビン」の値が使われます。
ヘモグロビンの値が正常でも、貯蔵庫(フェリチン)の鉄分は空っぽ、という事態になっている可能性があるわけです。
血液検査でヘモグロビンの値だけを見ている限り、この潜在的な鉄分不足は、見逃されてしまうのです。
フェリチンの血液検査については、こちらの記事を参考にしてください。
【フェリチンの血液検査】鉄分を補給する食事とサプリ また貧血全般の正しい診断を受けるための基礎知識については、次の記事にまとめています。 【貧血の治療は血液内科で】貧血に潜む大きな病気、正しい診断を受けるための専門医血液検査でフェリチンを測定してみる
フェリチンの測定法には、代表的なものがふたつ方法があります。
医療機関によって基準値(正常な値)は、かなり異なりますが、一例を挙げてみましょう。
〔RIA法の基準値〕
・男性20~220ng/ml
・女性10~85ng/ml
〔金コロイド凝集法の基準値〕
・男性40~100ng/ml
・女性20~70ng/ml
数値が基準より下回っている場合は「貧血」と診断されます。
ただ、この基準値もあいまいな部分があるようで、実際には、値が30ng/mlを下回ると、様々な症状が現れはじめるとも言われています。
アメリカの基準では40ng/mlを下回ると、女性は妊娠してはいけないと言われるそうです。
フェリチン不足による症状
鉄分が不足すると、全身に様々な影響が現れます。
最初の項目でも触れましたが、もう一度、確認しておきましょう。
- 疲れやすい
- 寝起きが悪い
- 肌荒れ
- 風邪をひきやすい
- むくみがある
- 便秘や下痢
- 食欲不振
- 吐き気がする
- 動悸、息切れ
- 胸が痛む
- 頭痛、頭重
- 冷え性
- 月経の異常
- 神経過敏
- 注意力低下、イライラ
- 髪が抜けやすい
- 歯茎の出血
- アザが良くできる
- 湿疹ができやすい
- 顔色が悪い
- のどの不快感
- 立ちくらみ、めまい、耳鳴り
- 肩こり、腰痛、背中の痛み
実に様々な症状が現れますね。
鉄分の不足は「貧血」の原因になるだけではありません。
実は、鉄分は新しい細胞を作るのに不可欠な物質なのです。
だから、皮膚細胞がうまく作られなくなると、肌が荒れたり、髪が抜けたり、アザができたり、といった症状が出てきます。
同じ理由で、免疫細胞がうまく作られなくなると、風邪をひきやすくなったりします。
脳内のセロトニンやドーパミンのような神経伝達物質も作られなくなると、精神的な落ち込み(うつ症状)やイライラ、睡眠障害などの症状に悩まされることになります。
これらの結果として、慢性的な疲労が蓄積していくのです。
フェリチン不足は女性に起きやすい
女性にフェリチン不足が多い理由のひとつは、「生理」です。
生理による出血で大量の鉄分が失われます。この時に失われた鉄分を補い続けるのは、簡単ではありません。
毎日の食事の中で、女性は男性よりも5~7mgも多くの鉄分を摂取する必要があります。
これはかなり大変なことですので、知らず知らずのうちに、女性の多くが、慢性的なフェリチン不足=潜在的な鉄分不足に陥っているのです。
生理以上に大きいのが、妊娠・出産です。
出産時には何リットルも出血することがあります。そして、その後の授乳でも多くの鉄分を体外に流し続けるわけです。
これを補い続けるのは至難です。貯蔵庫が底をついてしまうのは目に見えています。
産婦人科では、妊婦に対して、そういったケアをきちんとしているのでしょうか? 多くの場合、こうした観点で十分なケアはなされていないのではないでしょうか。
学術的な証拠
鉄分不足によって様々な症状が起こることの、学術的な証拠を示しておきましょう。
カナダの医学誌『Canadian Medical Association Journal』で発表された研究によれば、スイスのローザンヌ大学のバーナード・ファヴラット博士が、原因不明の疲労を訴えている198人の女性を対象にある調査を実施しました。
女性の半分には鉄分の錠剤を投与し、残りの半分には偽の薬を投与しました。その結果、12週間にわたって鉄分のサプリメントを摂取し続けた人たちの50%が、疲労が少なくなったことが判明したのです。
この実験から、鉄分を摂取することが有効な治療になることが分かります。
鉄分を効率的に摂取する
鉄分を含む食べ物を摂ることが重要なことが分かりましたね。
実は鉄には二つの種類があります。「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」です。
〔ヘム鉄〕
吸収率 23~28%
食べ物 レバー・しじみやあさりなどの貝類・かつお、卵黄など
〔非ヘム鉄〕
吸収率 1~5%
食べ物 プルーン、きな粉、ココア、ひじき、ほうれん草など
こうしてみると、ヘム鉄の方が吸収率に圧倒的に優れていることが分かります。
鉄分が多いことで有名なプルーンは「非ヘム鉄」なので、実は吸収率はあまりよくないのですね。効率的な鉄分補給には向いていないかもしれません。
鉄分の吸収を助ける食べ物
鉄分の吸収を助ける栄養素として知られるのは、たんぱく質、ビタミンC、ビタミンB群などです。
これを豊富に含む食べ物として、レモン、オレンジ、いちごなどが挙げられます。特にレモンは、吸収率を2倍にも引き上げると言われています。
フェリチン不足を補うサプリ
食事からだけで、必要量の鉄分を補うのは、忙しい現代人には至難の業です。特に、様々な症状にすでに悩まされている人は、積極的にサプリメントの力を借りた方がいいと思います。
こちらの記事では、オススメサプリをご紹介しています。ぜひご覧ください。
【フェリチンの血液検査】鉄分を補給する食事とサプリおだいじになさってください
女性は身体的にも精神的にも様々な症状に悩まされているケースが多いですよね。僕の妻もそうですが、原因が分からず、自分を責めている方も多くいると思います。
でも、その原因が鉄分の不足によるものだとしたら、改善の余地があるということです。希望がある、ということです。
こういった観点で診察してくれるお医者さんがいるかどうか、僕は残念ながら知りません。希望の持てる情報が得られたら、このサイトでシェアしていきたいと思います。
最初の気づきのきっかけとして、今回の記事が皆さんのお役に立てば幸いです。