【無痛分娩】2011年4月に京都の産婦人科で起こった事故 脳に障害、3歳で死亡 ―陣痛促進剤の過剰投与か―

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京都府京田辺市の産婦人科医院における、無痛分娩に伴う医療過誤訴訟が次々に明らかになっています。今回報道されたケースでは、赤ちゃんが脳に重度障害を負った状態で生まれ、3歳で亡くなっています。カギとなるのは「陣痛促進剤」の過剰投与です。

2017年6月14日の新聞記事

無痛分娩 タイトル4

6月6日の新聞記事では、2016年5月に起こった無痛分娩の医療事故が。続いて6月12日の記事では、2012年11月に起こった事故が報じられました。今回新たに報道されたのは、さらにさかのぼって、2011年4月に起こった事故でした。

まずは、新聞記事の内容を見てみましょう。

無痛分娩で脳障害3件目発覚 京都の産婦人科、3歳で死亡

出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩(ぶんべん)を行う京都府京田辺市の産婦人科医院「ふるき産婦人科」で医療過誤が相次いで発覚した問題で、2011年に無痛分娩で出産した京都府の別の夫婦の長女も脳に重度障害を負っていたことが13日、分かった。両親によると、子どもは意思疎通ができない寝たきりとなり、介護の末に3歳で亡くなったという。

夫婦は13年、同医院に対し、医療ミスが原因だとして介護費や慰謝料など計約1億円を求めて提訴。京都地裁で係争している。

訴状などによると、母子ともに妊娠中から同医院で検診を受け、異常はなかったという。11年4月、同医院は分娩監視装置を装着せず、無痛分娩のための硬膜外麻酔を実施し、さらに陣痛促進剤を注入した。吸引分娩と腹部を強く押した後に、帝王切開で出産したが、子どもは仮死状態で出生した。同医院は約4時間後に宇治市の総合病院に転院させた。

夫婦側は「産婦人科診療ガイドラインに定められた監視装置を装着せずに陣痛促進剤を使用し、硬膜外麻酔を実施した」と指摘。そのうえで、「促進剤を過剰投与し、高濃度の麻酔を使用し、決められた妊婦の血圧測定もしなかった結果、低酸素脳症を発症させた」と主張している。

ふるき産婦人科は取材に対し、「裁判になっていることなので取材に応じられない」と話した。

同病院をめぐっては、無痛分娩による硬膜外麻酔ミスで京都市左京区の母子、京田辺市の母子の計4人が意思疎通や自発呼吸ができなくなるなど重度障害を負ったとして、2件の医療過誤訴訟が京都地裁に提訴されている。

(引用:京都新聞

〔追記〕
2015年8月には、神戸の病院で、36歳の母親が陣痛促進剤の過剰投与と思われる子宮からの大量出血などで亡くなる事故がありました。異変が起こった後の病院側の対応にも問題があり、刑事告訴されました。
【無痛分娩】2015年8月に神戸の産婦人科で起こった事故 36歳の母親が死亡 ―陣痛促進剤の過剰投与で刑事告訴―

〔追記〕
2015年9月には、同じく神戸の違う病院で、硬膜外麻酔の事故によって母子ともに重い障害を負い、母親は1年8か月の昏睡の末、35歳で亡くなりました。赤ちゃんは今も脳の障害を抱えています。麻酔の処置を行った後、きちんと監視をせず妊婦を放置した結果、この事故は起こりました。
【無痛分娩】2015年9月に神戸の産婦人科で起こった事故 31歳の母親が死亡 ―麻酔科医の不足が一連の事故の根底に―

〔追記〕
これらの事故(2017年4月~6月に相次いで報道された)を受けて、日本産婦人科医会が全国の産婦人科に対して実態調査を行うことになりました。今後の安全性向上に生かされるよう、強く希望します。
【無痛分娩】日本産婦人科医会が実態調査を開始 ―現場の状況を把握し、これ以上の犠牲者を出すなー

無痛分娩の抱えるリスク

無痛分娩の抱える最大のリスクは、硬膜外麻酔にともなうものです。次のような可能性が想定されます。

・麻酔薬に対するアレルギー反応
 (アナフィラキシーショック)
・全脊髄麻酔状態
・局所麻酔薬中毒

アナフィラキシーショックについては、大阪で起こった医療事故について書いたブログ記事で検証してみました。
【無痛分娩】2017年1月に大阪の産婦人科で起こった事故 31歳の母親が死亡 ※追記 2017年8月 担当した院長が書類送検へ

全脊髄麻酔状態については、2016年5月に京都の同じ病院で起こった医療事故について書いたブログ記事で検証してみました。
【無痛分娩】2016年5月に京都の産婦人科で起こった事故 母子ともに脳障害で提訴 ―全脊髄麻酔に陥ったか―

局所麻酔薬中毒についても、2012年11月の京都の事故を通じて検証しました。
【無痛分娩】2012年11月に京都の産婦人科で起こった事故 母子ともに脳障害で提訴 ―局所麻酔薬中毒か―

そして、今回の記事では、もうひとつのリスク要因として、「陣痛促進剤」について触れられています。

陣痛促進剤は当然のように使われる

今回の記事で注目されるのは、「陣痛促進剤が過剰投与された」という遺族の訴えです。

現代日本の産院における出産では、陣痛促進剤の使用が当たり前のようになっています。

僕の妻の2人目の出産でも、初期の妊婦健診で「この病院で出産する」と決めた段階で、出産日が「〇月〇日」と明確に設定されました。日ごろから混み合う産婦人科で、看護師からは「出産の予約が取れて、よかったですね」と言われました。つまり、出産予定日の妊婦の状態には関わりなく、その日に「産ませる」ことが決められてしまうのです。

こうした傾向は、僕の妻がかかった産院に限らず、ほとんどの病院が採用している方法だと思われます。人員を確保しやすい平日の昼間に出産が集中するようにコントロールされている、とも言われているほどです。

こうした計画的な出産を実現するために不可欠なのが「陣痛促進剤」です。「子宮収縮剤」「分娩誘発剤」などと呼ばれることもあります。

陣痛促進剤が抱える問題点

陣痛促進剤とは、出産の時に母体から分泌されるホルモンを化学的に合成したものです。投与することで、疑似的にホルモン様の働きをして、子宮を収縮させ、陣痛を促進し、分娩を誘発することができます。

本来は、以下のようなケースにおいて、出産の遅れを回避し、母子のリスクを減らす目的で使用されます。

①妊娠高血圧症候群
②糖尿病合併妊娠
③子宮内胎児発育遅延
④過期妊娠(妊娠42 週を過ぎると胎児の死亡率が上がる)
⑤前期破水しても陣痛が起きない場合

しかし現実には、上記のようなリスクがない場合でも、機械的に陣痛促進剤が使われています。妊婦の状態に応じて採用されるのではなく、病院側の都合で、計画通りの日時に分娩をこなす目的で使用されているのです。

しかも、妊婦やその家族にきちんとした説明をせずに使用されるケースが多くあります。「子宮を柔らかくする薬です」など、口を濁したような説明しかせずに使われることもあるのです。

陣痛促進剤には、重大な副作用を起こすリスクがあります。薬剤に添付された「使用上の注意」には、次のような「警告」が記されています。

「過強陣痛や強直性子宮収縮により、胎児仮死、子宮破裂、剄管裂傷、羊水塞栓等が起こることがあり、母体あるいは児が重篤な転帰に至った症例が報告されている」

こうした説明を受けることなく、だまし討ちのような形で陣痛促進剤を使われた挙句、過剰な子宮収縮によって胎児が亡くなってしまったり、子宮破裂を起こして子宮を摘出することになるなど、母子ともに命に係わる重大な事故が起こっています。

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無痛分娩と陣痛促進剤はセット

無痛分娩を行うには、麻酔科医を確保しなければなりません。そのため無痛分娩は、通常の分娩よりも、より「計画的」に行われることになります。

そのため、無痛分娩は基本的に陣痛促進剤を使用することが前提となります。分娩は以下のような手順を踏んで行われます。

①あらかじめ出産予定日を決め予約、前日に入院
②超音波、ノンストレステストなどの診断を行う
③バルーンを子宮口に入れる。
④翌日子宮口が5cmほど開いていることを確認
⑤カテーテルを設置し硬膜外麻酔の準備
⑥点滴で陣痛促進剤を注入
⑦麻酔薬を調整しながら無痛状態で分娩

麻酔の準備を行う前に、自然に陣痛が始まるケースもあります。その場合は、カテーテルの準備が間に合わず、無痛分娩ではなく自然分娩になることがあります。その場合は陣痛促進剤を使う必要もなくなります。

しかし、陣痛が来ないまま「出産予定日」を迎えた場合には、上記の手順を踏んで、麻酔と陣痛促進剤を同時にコントロールしながら出産を進める体制が作られます。

陣痛促進剤を使うにあたって非常に重要なのは、「分娩監視装置」を使って、子宮の収縮の強さや頻度、胎児の心拍などを正確にモニターすることです。

僕の妻のケースでも、上記の手順でお産が進みましたが、妻がかかった病院では分娩監視装置がきちんと取り付けられ、胎児の状態を常時モニターしていました。その点は問題なかったと思います。

しかし、今回報道されたケースでは、分娩監視装置が付けられていませんでした。

分娩監視装置を付けずに陣痛促進剤を使用

新聞記事からは、出産の経過を詳細に知ることはできませんので、ここからは僕の推測も交えて書きます。

妊婦は硬膜外麻酔によって無痛状態になっているため、陣痛促進剤の効き具合を妊婦の痛みの程度から知ることはできません。

陣痛促進剤が効き過ぎていないかどうかは、分娩監視装置を使って、子宮の収縮の強さや頻度、胎児の心拍などを正確にモニターしなければ分かりません。

そもそも、陣痛促進剤を使う場合には、無痛分娩でなくても、分娩監視装置を付けることが必須となります。にもかかわらず、今回報道された京都の病院では、より詳細なモニターが必要な無痛分娩においてさえ、分娩監視装置を付けていなかったのです。

今回報道されたケースでは、麻酔を打たれて痛みを感じられなくなっている妊婦の様子を見て、医師は「まだ陣痛の強さが足りない」と判断したのかもしれません。そんな曖昧な判断基準で、陣痛促進剤を過剰に投与したのかもしれません。

その結果、子宮が過度に収縮し、強く締め付けられた胎児に重大な障害が残ってしまったのだとしたら、あまりにも杜撰な管理と言わざるを得ません。

〔追記〕毎日放送で報道された母親の悲痛な声

2017年6月15日に毎日放送から配信されたニュースで、3歳で娘を亡くした母親の声が紹介されました。

「代われるなら代わってあげたい」無痛分娩で長女亡くした母

出産の際の医療ミスにより重い障害が残ったとして家族が産婦人科を訴えている問題。出産の後、幼い長女を亡くした母親が苦しい胸の内を明かしました。

京都府内に住むAさん(35)。2011年4月、京都府京田辺市の「ふるき産婦人科」で無痛分娩で出産することにしました。

「とにかく無痛分娩がウリのような。すごく自信のあるようなことを先生がおっしゃっていた。慣れてるから大丈夫だよぐらいの感じ」(長女を亡くしたAさん)

出産前の検診では何も異常は見当たりませんでした。しかし、訴えによりますと、院長から無痛分娩のための硬膜外麻酔を受けた後、事態は急変。Aさんは陣痛促進剤を投与されましたが、胎児の心拍数などを確認する分娩監視装置は着けられなかったといいます。もしそうなら、学会のガイドラインに反しています。

なかなか生まれなかったため帝王切開に切り替えましたが、長女は仮死状態で生まれ、低酸素脳症で脳に重い障害が残りました。自宅に帰ってから、24時間体制で介護する日々でした。

「しゃべるのはできない。声を発するくらい。意思疎通とはほど遠い」(Aさん)

懸命の介護を続けましたが、長女は3歳のとき亡くなりました。

「申し訳ない気持ちでいっぱいですね。私があの病院に行かなければ(長女は)今も元気に駆け回ってたと思う。代われるものなら代わりたかったなと今でも思う」(Aさん)

両親は「分娩監視装置を着けずに陣痛促進剤を過剰に投与するなど適切な処置を怠たり医療ミスが起こった」として、ふるき産婦人科に対し約1億円の損害賠償を求めています。一方、ふるき産婦人科は「取材は受けられない」としています。

(引用:毎日放送

無痛分娩を希望される方へ

無痛分娩は多くの女性に、より負担の少ないお産を提供するものだと思います。無痛の恩恵を受けた方も多くいることでしょう。

しかし、リスクはあるのです。そのリスクを回避するために、医師には、しつこいくらいに説明を求めてください。

・専門の麻酔科医が常に立ち会うのかどうか
・麻酔に異常が生じたときの対処方法
・陣痛促進剤の使用条件
・分娩監視装置を付け、常時モニターすること

そして、実際にお産の段取りに入ったときには、妊婦のご主人は必ず立ち会って、奥さんを守ってあげてください。

麻酔の異常と思われる症状は起こっていないか。陣痛促進剤の過剰投与によると思われる症状は起こっていないか。しっかり見てあげてください。

特に陣痛促進剤については、使用があまりにも当たり前になっているため、妊婦が異常を訴えても「大げさ」と相手にされないケースがあると聞きます。奥さんを守ってあげられるのは、ご主人しかいないと思ってください。

僕は妻を硬膜外麻酔の事故から守ってあげることができませんでした。その苦い経験があるので、訴え続けたいのです。

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