こんにちは。えいぷりおです。
2019年3月30日、梅田芸術劇場でミュージカル『ロミオ&ジュリエット』を観劇してきました。
僕の主な守備範囲はクラシックなので、ミュージカルについては完全な初心者なのですが、もうすべてがハイクオリティ過ぎて圧倒されてしまいました。
ミュージカルを詳しく語れる立場ではありませんが、僕なりの感想を書き残しておきます。
舞台の概要
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
原作 ウィリアム・シェイクスピア
作 ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出 小池修一郎
キャスト
ロミオ 大野拓朗
ジュリエット 生田絵梨花
ベンヴォ―リオ 木村達成
マーキューシオ 黒羽麻璃央
ティボルト 廣瀬友祐
死 宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー)
2019年3月30日(土)17:00~
梅田芸術劇場(大阪市)
えいぷりお感激度 ★★★★★(星5つ)
『ロミオ&ジュリエット』の物語
物語の舞台はイタリアのヴェローナ。
シェイクスピアの原作では14世紀の設定ですが、今回の演出では近未来の設定になっていて、死の影がただよう荒廃した町並みが舞台となっています。
プロローグで死のダンサーが舞う中、爆撃を思わせる映像が映し出され、物語の背景に過酷な紛争があることを示唆します。
ふたつの名家、モンタギュー家とキャピュレット家が争い合う中、モンタギュー家の一人息子ロミオと、キャピュレット家の一人娘ジュリエットが許されぬ恋に落ち、命を落としていく恋愛悲劇です。
この戯曲をもとに、数多くの映画やドラマ、芸術作品が生み出されています。クラシックの分野では、ベッリーニのオペラ(1830年)やベルリオーズの劇的交響曲(1839年)、プロコフィエフのバレエ音楽(1936年)などがあります。
ミュージカルとしては、アメリカ移民の抗争に翻案したバーンスタインの『ウエスト・サイド物語』(1957年)が有名です。
今回のミュージカルは、フランスのプレスギュルヴィックが作詞・作曲したもの(2001年)を、宝塚歌劇で実績を積んだ演出家、小池修一郎が潤色しています。
すべてが超ハイクオリティな圧巻の舞台
物語そのものの素晴らしさはもちろんですが、とにかくもう舞台のクオリティの高さに圧倒されっぱなしでした。
まず、主要キャストの歌と演技が、ひとりひとり超ハイレベルで感動的でした。
ミュージカルの役者さんって、本当にかっこいいですね!スタイル抜群で、表情にも仕草にも色気があって、存在そのものがセクシーで。
僕はオペラを見ることが多いのですが、見た目も納得のオペラ歌手って、正直それほど多くはありません。ダンスもできる人となると、ほとんどいないのではないでしょうか。
だから、今回の舞台を見て、ミュージカルのトップ俳優たちの美しい姿と総合力の高さに、心底うっとりしてしまいました。
主要キャストだけでなく、24人からなるダンサー陣もすごかった!怒りや哀しみの群舞は迫力満点で、ステージが躍動し波打っていました。闘いのシーンの複雑な絡みなど、いったいどれほどの稽古を重ねたのだろうと、目眩がするほどでした。
舞台装置、衣装、ヘアメイク、照明、プロジェクションなどの美術的な要素は、見たことのないほどの完成度の高さでした。PA(音響拡声)のバランスも完璧で、セリフや歌詞の繊細なニュアンスまでクリアに伝わってきました。
このように、各セクションの腕利きの職人たちが、超一流の仕事をしていることにも感動したのでした。
舞い降りた天使… 生田絵梨花さんのジュリエット
主要キャストの中で特に印象的だったのは、ジュリエットを演じた生田絵梨花さんでした。
生田さんのプロフィールを、公式サイトから引用します。
1997年1月22日生まれ。
ドイツ生まれ。4歳からピアノを習い、5歳から東京で育つ。2011年8月乃木坂46第一期メンバーに合格。選抜メンバー16名に選ばれる。2012年2月22日 乃木坂46の1stシングル「ぐるぐるカーテン」でCDデビュー。以降も、中心メンバーとして活躍する一方、舞台にも精力的に出演。近年の主な舞台出演作に『虹のプレリュード』、『リボンの騎士』、『レ・ミゼラブル』、『モーツァルト!』などがある。2019年1月より『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』に出演。 ジュリエット役は前回に続き、2度目となる。
生田さんは乃木坂46のトップアイドルでありながら、ここ数年はミュージカルで大活躍されています。
今回演じたジュリエットは、まだ恋を知らない16歳の少女。清純を絵に描いたような生田さんは、これ以上にないはまり役でした。
出会った瞬間に恋に落ちてすぐに結婚してしまうという、ちょっと若気の至りすぎる設定も、生田さんが演じると純粋さゆえの自然なものに思えてきます。
そして、歌の素晴らしさにも感動しました。伸びやかな高音が美しく、ひとつひとつの言葉に思いがこもっていて、心の奥に届くのです。
僕はアイドルには詳しくありませんが、正直あまり歌の上手な人はいないものだと思っていました。でも生田さんの歌を聴いて、自分の浅はかな認識を恥じました。
生田さんは、小学生のころ『アニー』を見て舞台女優を目指し、10歳で初舞台を踏んでいるそうです。「アイドルがちょっとミュージカルにも挑戦してみました」というような中途半端なものではなく、人生をかけて取り組んでいるのが伝わってきました。
幼少から稽古を積んできたピアノは、中学時代に日本クラシック音楽コンクールで入賞(2011年)するほどの腕前だったとか。クラシックで培った音楽的素養は、ミュージカルにも生きているに違いありません。
【参考動画】 生田さんがソロで歌うレアな音源。2019年1月に出演した『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』から、ナターシャのソロ「no one else」です(11分35秒から再生されます)。
【参考図書】 初版が22万部(2019年1月発行)と記録的大ヒットとなったセカンド写真集。生田絵梨花さんの天真爛漫な魅力があふれています。
なぜ『ロミオとジュリエット』は胸を打つのか
『ロミオ&ジュリエット』は、あどけなさの残る少年と少女の悲しい恋の物語です。
一目で恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚。それがもとで両家の争いが激化し、二人の若者が命を落とした挙げ句、愛を交わしたばかりのロミオとジュリエットが行き違いの末に死を選ぶという悲劇です。
シェイクスピアの戯曲が初演されたのは1595年前後と言われるので、なんと420年以上も世界中で上演され続けています。
なぜ、この物語はこんなにも僕たちの胸を打つのでしょうか。
近未来に設定を変えた今回の舞台を見て改めて思ったのは、人間同士の争いは決してなくならないということです。
今も世界中で戦争が行われ、この瞬間にも罪のない人たちが爆撃されています。日本の隣国でも、数百万人もの少数民族が人権弾圧を受け、強制収容所で毎日のように多くの命が失われていると言われています。
一見平和に見える日本でも、20年以上に及ぶデフレ経済から脱却できず、今も年間3万人近くが自殺しています。SNS上ではむき出しの言葉の暴力がエスカレートしています。
人間同士の争いは収まるどころか、激化の一途をたどっているのです。
だからこそ僕たちは、心のどこかで純粋な愛を求めているのではないでしょうか。国家も民族も人種もイデオロギーも家柄も超えて、ただ愛し合いたいという根源的な望みを、心の奥底に持ち続けているのではないでしょうか。
ロミオとジュリエットは幼くて未熟かもしれないけれど、僕たちが胸に秘めている愛を思い起こさせてくれます。
その恋は悲劇的な結末を迎えますが、ふたりの死は小さな希望を残すのです。
えいぷりお的まとめ
ミュージカルの素晴らしさを堪能させてもらいました。
カンパニーが一丸となってひとつの作品を作り上げるお仕事、心の底から憧れます。
戯曲を読み込み、舞台上の人物たちに命を吹き込んでいく作業は、最高にクリエイティブだろうな…
次に生まれ変わったら、僕は舞台に関わるお仕事がしたいです。