僕は男性です。ですので、女性が毎月向き合っているPMS(月経前症候群)と生理痛の苦しさを実感することはできません。
ですが、女性と一緒に生きていく上で、男性にとっても、PMSと生理痛のことは、知っておくべきことだと思います。
女性の大変さに少しでも共感すると同時に、効果的な治療法があることも知っておきたいところです。女性にとっての救いは、男性にとっての喜びでもあるのですから。その治療法、「低用量ピル」について、お伝えします。
PMSと生理痛について
出典:woman excite
生理の1週間ほど前から、精神的にも身体的にもつらい症状を起こすPMSについては、次の記事に詳しく書いてあります。ぜひご覧になってください。
【PMSとは】月経前症候群の緩和には男性パートナーの理解がカギ
また、生理痛についても、次の記事にまとめましたので、参考にしてみてください。
【生理痛による諸症状 】男性だからこそ知っておきたい、生理痛の原因と緩和方法
【生理痛に効くツボ】男性パートナーにもできるサポート、即効性のある緩和方法
低用量ピルとは
低用量ピルとは、生理をつかさどっている2つの女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)を主成分とするお薬です。これを規則正しく服用することによって、ホルモン分泌の指令を出す脳下垂体が、「身体の中には十分女性ホルモンがある」と勘違いし、ホルモンの分泌が抑制されます。その結果、排卵が抑えられ、受精が起こらなくなります。「ピルは避妊のためのお薬」というのが、一般的な認識ではないでしょうか。
避妊の効果に加えて、女性にとってはうれしい副次的な効果が得られます。ホルモンの量がひと月を通じてほぼ一定に保たれ、急激な変化が起こらなくなるため、PMSの症状が軽減するのです。また、子宮内膜も厚くならないので、生理痛の症状も緩和します。
低用量ピルの普及が遅れている日本
出典:jiji.com
海外では、低用量ピルが一般に普及しています。避妊の主要な手段となっているほか、PMSと生理痛の治療薬としても認知されていて、生活改善のための薬という位置づけで、抵抗なく使われているといいます。国連の調査によると、ピル先進国であるEU諸国では女性の21.4%がピルを服用していて、国別では、イギリスで28.0%、フランスで41.5%、ドイツにいたっては52.6%と、先進国で軒並み高い割合でピルが使用されていることが分かっています。
出典:QLife
日本で低用量ピルが認可されたのは1999年。この時点で、世界標準から40年遅れていたわけですが、発売開始から15年以上経つにもかかわらず、日本での普及率は低いままです。全国の20~30代女性400名を調査したデータによると、「服用中」の女性は5.5%、「服用経験あり」が11.5%、「内容は知っているが服用経験なし」が20.5%、「名前は聞いたことがある」が43.5%、「知らない」が19.0%との結果でした。外国に比べて、低容量ピルに対する認識が、非常に低い状況だということが分かります。その理由として、日本では「避妊薬=体に悪いもの」という偏見が根強く、抵抗感を持つ人が多いことが考えらえます。
実際には安全性は確立していますし服用をやめると排卵が再開して、妊娠可能な状態に戻ります。低用量ピルを服用することで、その後の妊娠・出産、胎児に与える影響は一切ありません。
PMSや生理痛のつらい症状を、「女性だから」とあきらめてしまうのではなく、生活の質を改善するための手段として、低用量ピルの使用を前向きに考えてもいいのではないでしょうか。
低用量ピルの服用方法
低用量ピルは、28錠が1シートになっていて、毎日決まった時間に規則正しく服用を続けます。
生理の3日目からスタートし、まず効成分の入ったものを21日間服用します。そのあとの7日間は、有効成分の入っていないもの(偽薬、プラセボと呼ばれる)服用します。
このように、人工的に女性ホルモンの状態をコントロールすることによって、プラセボを服用している7日間の間に、正確に生理が起こります。
排卵は起こっていないため、排卵にともなうPMSの症状は起こりにくくなります。子宮内膜も厚くはならないので、生理の経血は少なく、生理痛も軽減されます。
1シートを飲み切るころには、生理3日目くらいとなっており、次のシートを飲み始めることになります。このように正確に生理の周期をコントロールできるため、生理不順で悩んでいた女性にとっては、生理の周期が読めるようになり、生活の設計が立てやすくなるという利点もあります。
お薬の種類によっては、7錠のプラセボがない「21錠タイプ」のものもあります。薬の服用を少しでも減らしたい人は、21錠タイプを選ぶことができます。毎日飲むことで習慣化して、飲み忘れを防ぎたい人は、28錠タイプを選ぶといいでしょう。
低用量ピルの効果
低用量ピルの服用で、身体的にも精神的にも安定することが期待できます。黄体ホルモンの働きを抑えることから、吹き出物など肌トラブルも軽減することができます。
「乳がんの発症率が高まる」という説がありますが、イギリスの研究でピルと発症率の相関関係はないことが証明されています。一方で、子宮体がんや卵巣がんは、低用量ピルを服用した方が、発症リスクが低くなることが報告されています。
低用量ピルによる副作用
低用量ピルを服用することによる副作用として、次のような症状が挙げられます。
・吐き気
・頭痛、
・だるさ
・不正出血
・胸の張り
・のぼせ
・多汗
・イライラ…など
特に飲み始めの1~3カ月は、副作用が強く出ることがありますが、この期間を過ぎると軽減することが多いようです。
もし副作用がつらい場合は、別のピルを試すことで、問題が解決することがありますので、あきらめずに続ける価値はあると思います。
低用量ピルによる血栓
低用量ピルの副作用として、ごくまれに血栓(血のかたまり)ができてしまうことがあります。たいていは服用を初めて3カ月以内に生じる場合が多く、ふくらはぎや腕の腫れや痛み、視野の異常に注意が必要となります。またその血栓が他の部位に飛んだ場合には、頭や胸、腹などの激しい痛みにも注意する必要があります。
血栓のリスクを減らすために、喫煙習慣のある人は禁煙することが求められます。これを機会に、健康のために禁煙することを、強くオススメします。
低用量ピルを飲めない人
低用量ピルは高血圧や糖尿病、高脂血症などの持病を抱えていると、飲んではいけない場合があります。乳がんや子宮内膜がんの疑いがある人も飲むことができません。妊娠中や授乳中の人、35歳以上でタバコを1日15本以上吸う人も服用できません。これらの症状や習慣がある場合は、医師に必ず申し出るようにしてください。
必ず医師による処方を
低用量ピルは、ネットで購入することも可能です。その方が安価な場合もあるようです。ですが、この薬は、素人判断で服用するものではありません。必ず医師の診断を仰いでください。長期にわたる治療になるので、信頼できる、相性のいい医師を探すことも重要になります。
男性として、どう関わるか
低用量ピルの服用には、スタート時に副作用が出ることがあります。せっかく改善できると思って服用したのに、副作用に悩まされることは、女性にとってショックなことだと思います。もしあなたが男性で、彼女や奥さんが低用量ピルの服用を始めて、副作用に苦しむようなことがあったら、精神的にサポートしてあげてください。1~3か月で副作用が軽減する可能性があること、今の薬が合わなくても、他の薬が合う可能性があることを、伝えてあげてください。
僕たち男性には、女性のつらさを代わってあげることはできません。せめて、そっとサポートしてあげられるようになりたいものです。きっと希望があると信じて、支えてあげられるといいですね。