2017年4月から6月にかけて、大阪、神戸、京都の産婦人科で起こった無痛分娩にからむ医療事故が次々に報道されました。それを受け、日本産婦人科医会が実態調査に乗り出しました。今後の安全性向上のために、何が必要なのでしょうか。
2017年6月17日の時事通信のニュース
2017年6月17日に時事通信から次のようなニュースが配信されました。
無痛分娩、全国調査を開始=死亡例判明で―産婦人科医会
日本産婦人科医会は17日までに、出産の痛みを麻酔を使って和らげる無痛分娩(ぶんべん)について、全国約2400の産科医療機関を対象に実態調査を始めた。
一部の医療機関で妊産婦が死亡した例が判明しており、現状を把握して安全対策につなげる方針だ。
医会は今月、分娩を扱う全国の病院と診療所にアンケートを送付。無痛分娩の件数、麻酔を誰が管理しているか、重大事故になりかねなかった例のほか、帝王切開での麻酔の体制などについても尋ねている。7月をめどに調査結果をまとめ、近く発足する予定の厚生労働省研究班に提供して、安全対策の提言などにつなげる。
医会によると、大阪府和泉市、京都府京田辺市、神戸市中央区などで、無痛分娩や帝王切開で麻酔を受けた妊産婦の死亡や重症化が相次いで判明した。医会には死亡事故などの報告を受ける制度があるが、いずれも報告されていなかった。
医会は産婦人科の開業医などで構成する団体。
(引用:時事通信社)
日本産婦人科医会とは
新聞記事にも書かれているように、日本産婦人科医会とは産婦人科の開業医などで構成する団体です。2017年6月現在、会長を務めるのは東京都世田谷区の成城木下病院の木下勝之院長です。
参考 会長挨拶日本産婦人科医会役員一覧を見ると、開業医だけでなく、総合病院や大学病院、国立成育医療センターの先生なども理事に名を連ねています。
会員名簿を見ると、数えきれないほどの医師の名前が並びます。おそらく全国の産婦人科医のほとんどが加入しているのではないでしょうか。
「日本産科婦人科学会」とは異なる組織で、会員同士の連携と情報の共有を目的としているようです。
未来につながる実態調査を
全国約2400の産科医療機関を対象に送付されたアンケートでは、主に硬膜外麻酔の現状について聞いているようです。無痛分娩の最大のリスクが硬膜外麻酔にあることが、アンケートの傾向からも読み取れます。
この調査を通じて、産婦人科における麻酔科医の状況が、明らかになることを強く望みます。
できることなら日本産婦人科医会の指導によって、産婦人科における麻酔科医の体制について厳しい基準を設けてほしいと思います。基準に満たない場合は、無痛分娩を行わないようにさせるなど、具体的な対策につなげてほしいと思います。調査しただけで終わってしまっては、事故は今後もなくならないでしょう。
そして、調査結果はきちんと公表してもらいたいです。安全に無痛分娩を行える麻酔科医の体制とは、どのようなものなのか、その基準を明確に示してほしいです。そして、安全な体制が整っている病院はどのくらいの割合だったのかを(可能なら病院名も)、公表してもらいたいです。逆に、麻酔科医が足りていないのに無痛分娩を行っていた病院はどのくらいの割合なのかも公表してほしいです。
今回行われる実態調査は、病院関係者への情報としてだけではなく、これからお産に臨むお母さんとその家族にも公開されるよう、強く希望します。そうした情報は、無痛分娩を選択するかどうかの、貴重な判断材料となるでしょう。
妊娠・出産・無痛分娩に関する記事について
下のボタン ↓ から妊娠・出産・無痛分娩に関する記事を分かりやすくまとめたページに移動できます。
特に妻が医療事故にあって苦しんだ無痛分娩については多くの記事を書いています。
妻がつらい思いをしているときに上手に助けてあげられなかったダメ夫の反省を交えて書いたものです。参考にしていただけますと幸いです。