こんにちは。えいぷりおです。
1970年に公開され、恋愛映画の金字塔として今も愛され続ける映画「ひまわり」を観ました。
見渡す限りに広がる一面のひまわり畑。この印象的なシーンは、いま戦場となっているウクライナで撮影されました。
描かれているのは、戦争によって引き裂かれる大切な人との絆ー
そうしたテーマ性もあって、公開から50年以上経った今、改めてこの作品が人々の心を捉えています。
ただ僕は、ソフィア・ローレン演じる主人公のジョヴァンナに、まったく共感できませんでした…
映画「ひまわり」とは
映画「ひまわり」
〔キャスト〕
- ジョヴァンナ:ソフィア・ローレン
- アントニオ:マルチェロ・マストロヤンニ
〔監督〕
ヴィットリオ・デ・シーカ
〔音楽〕
ヘンリー・マンシーニ
〔公開〕
1970年
▼映画「ひまわり」予告編
映画「ひまわり」のあらすじ(ネタバレあり)
物語は第二次世界大戦中のイタリアで始まります。
ソフィア・ローレン演じるジョヴァンナは、明るく奔放なナポリ出身の娘。
マルチェロ・マストロヤンニ演じるアントニオは、アフリカ戦線へ送られる予定の兵士。
二人は浜辺で出会ってすぐに恋に落ちます。出征を遅らせようと結婚式を挙げますが、12日間の結婚休暇はあっという間に終わってしまいます。
精神病を偽ってまで戦場に行くのを避けようとしますが、それがバレて逆に「地獄」と恐れられていたソ連戦線に送られることに。
終戦後、アントニオは帰国しません。ジョヴァンナは諦めずに夫の消息を調べ続け、スターリンが死去した1953年、ソ連にまで探しに出かけます。
イタリア軍が戦ったとされるウクライナの町を尋ねると、そこは地平線まで広がる一面のひまわり畑。
地元の人は「このひまわり畑の下には、イタリア兵とロシア人捕虜が埋められている」と言います。
それでも夫は生きていると信じるジョヴァンナは、ついに消息を突き止めます。
しかし夫は違う人生を送っていました。若いロシア人女性と結婚し、子供にも恵まれていたアントニオ。
彼は戦争中、極寒の雪原で力尽き死にかけ、記憶も失いました。それを懸命に助けたのがロシア人の妻マーシャだったのです。
ジョヴァンナは何も言わず彼の前から去ります。裏切られたと思ったのでしょうか。汽車の中で人目も憚らず号泣し、帰国後の生活は荒れていきます。
アントニオもまた、突然訪ねてきたジョヴァンナに、激しく葛藤します。再会できるとは思っていなかったのでしょう。
マーシャは、心ここにあらずの夫に「もう私を愛していないの?」と涙を流します。それでも気丈に、かつての妻に会いに行きたいという夫を送り出します。
イタリアに戻ったアントニオは、ジョヴァンナもまた別の男の子供を生んで(おそらく行きずりの男との子供)、違う人生を歩き始めていたことを知るのです。
二人は永遠に別れることを決意します。ソ連の妻子のもとに帰るアントニオ。それを見送るジョヴァンナ。別れの場所は、かつて戦地に送り出したのと同じミラノ中央駅でしたー
ウクライナ南部 ヘルソン州で撮影された一面のひまわり畑
映画のタイトルにもなり、この作品で最も印象的な場面のひとつとなったのが、地平線まで広がる一面のひまわり畑です。
夏を象徴するひまわり畑と、
雪に閉ざされた極寒の真冬の光景ー
戦死した兵士が埋められた広大な土地と、
その上で生を謳歌するかのように咲き誇るひまわりー
この残酷なまでのコントラストが、観る者の心を引き裂きます。
このシーンの撮影地は、ウクライナ南部のヘルソン州だと言われています(ウィキペディアによるとウクライナ中部のポルタヴァ州との説も)。
▼ヘルソン州は黒海に面した町で、オデーサの東、マリウポリの西、クリミア半島の付け根に位置します。今まさにロシアによる軍事侵攻で戦場となっている場所です。
撮影された1960年代は、まだソ連は鉄のカーテンに閉ざされていました。「ひまわり」は、西側が初めてソ連での撮影を許可された映画だと言われています。
妻ジョヴァンナに僕は共感できなかった…
戦争によって引き裂かれた愛の物語…
だけど正直に言うと、ソフィア・ローレン演じる主人公ジョヴァンナに、僕は共感できませんでした。
なぜなら、ジョヴァンナとアントニオが深い愛情で結びついているという納得感がなかったからです。彼らの関係は、もっと軽薄なものに思えました。
浜辺で出会って、そのままノリでセックス。出征を遅らせるために結婚し、さらには共謀して精神病を偽る始末。
二人の間に、お互いへの尊敬が育まれていたとは思えません。だから、終戦後8年間も帰らぬ夫を探し続けた妻の行動が、どうにも腑に落ちないのです。
それに、ジョヴァンナの身勝手とも思える言動にも疑問を抱きました。
彼女は、夫が戦争で死にかけ記憶を失ったたことを知っても、その夫をロシア人女性が懸命に助けてくれたことを知っても、ただ自分の不幸を嘆くだけでした。
そしてイタリアに帰国すると、夫の写真を床に叩きつけるのでした。
彼女は本当に彼を愛していたと言えるのだろうか…?
そんなわけで、残念ながらソフィア・ローレン演じるジョヴァンナに、僕は最後まで共感することができませんでした。
アントニオとマーシャ
夫アントニオの心理の方が、僕には共感できるものがありました。
8年間も自分の帰りを待ち続けてくれた妻ジョヴァンナへの贖罪の気持ちと、自分を救ってくれたロシア人の妻マーシャへの感謝の気持ち。
両立できないふたつの気持ちの間で葛藤するアントニオのつらさは、いかばかりだったでしょうか…
リュドミラ・サベリーエワ演じるロシア人妻マーシャの健気な思いにも胸を締め付けられました。
愛する夫が、かつての妻と再会したときの不安。もう自分を愛してくれないのではないかという悲しみ。
それでも、夫の気持ちを慮ってイタリアに送り出すのです。彼女はどれほど傷ついていたでしょうか…
あとがき
これを書いているのは5月10日。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった2月24日から2ヶ月半が経ちました。
各国の思惑が複雑に絡み合って、戦争は終結する目処がまったく立っていません。今この瞬間にも、何の罪もない民間人が死の恐怖におびえています。
映画「ひまわり」のひまわり畑の光景は、今まさにウクライナで起きている悲劇を際立たせるかのように、夏の日差しに輝いていました。
どうか一刻も早く、戦争が終わりますようにー
▶1930年代のウクライナの悲劇を描いた映画「赤い闇」の感想はこちら
(了)