子供がよくかかる病気の代表格のひとつ、水疱瘡(みずぼうそう)。全身の発疹は水ぶくれになり、かゆみを伴います。熱も出ます。ポイントは初期症状に気付いて早期治療。重症化する危険もあるので注意が必要です。
水疱瘡とは
小さな子供に流行しやすい感染症のひとつで、かゆいブツブツが全身に広がります。原因となるのは、水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルスです。
(子供のかかる病気は、こちらにまとめています)
水痘・帯状疱疹ウイルス
水痘・帯状疱疹ウイルスは、非常に伝染力の強いウイルスです。一度感染すると免疫ができて、同じ症状が再び起こることはありません。ですが、その名にあるように、帯状疱疹という別の形で後年になってから再発することがあります。
潜伏期間
水痘・帯状疱疹ウイルスの潜伏期間は約2週間。ウイルスに感染してから症状が出るまで2週間程度かかります。
潜伏期間には目立った症状は出ませんが、後になってから「そういえば食欲が落ちていた」「だるかった」などの前駆症状に気付く場合もあります。
また、潜伏期間中にも人にうつしてしまう可能性があります。特に発症する1~2日前から感染力が強くなります。
そのため、幼稚園や保育園で水疱瘡が流行りはじめた頃には、すでに自分の子供にも感染している可能性が高いと認識した方がいいでしょう。
感染経路
感染経路としては、飛沫感染、接触感染、そして空気感染が挙げられます。順に見ていきましょう。
飛沫感染
くしゃみや咳によって病原体が飛散し、周囲の人の粘膜に付着する感染経路です。風邪、インフルエンザなど有名なウイルス性疾患と同じく、咳エチケット(マスクの着用など)の徹底が、予防のためには重要となります。
接触感染
皮膚、粘膜などの物理的な接触によって感染するものです。誰かがウイルスのついた手で触れた手すりを触り、その手で目などの粘膜をこするといった間接的な接触でも感染します。
空気感染
感染経路でもっとも注意しなければならないのは「空気感染」です。一般的な感染症で空気感染するのは、麻疹、水疱瘡、そして結核の3つしかないと言われています。この空気感染は飛沫感染とどう違うのでしょうか。
飛沫感染は上にも述べた通り、くしゃみや咳などで水分を含む重く大きな粒子が飛ぶため、2m以内でほとんどの粒子が床に落ちてしまいます。したがって、距離が離れていれば直接の感染はありません。インフルエンザなどの一般的な呼吸器感染症のほとんどは、この飛沫感染によって感染します。
しかし空気感染では、小さく軽い粒子が空中を長く浮遊することで、距離が離れている相手にも感染し、状況によっては爆発的に感染が拡大する危険性をはらんでいるのです。
水疱瘡にかかりやすい年齢
水疱瘡は子供に多い病気です。保育園や幼稚園などの集団生活がスタートする1歳から5歳くらいの子供が主です。
お兄ちゃんやお姉ちゃんからの感染で0歳の赤ちゃんが感染してしまうこともあります。そうした乳幼児期の感染を防ぐのが難しいため、90%の人は10歳までに感染を経験するといわれています。
残りの10%の人は、11歳以上になってから感染するわけですが、年齢が高くなるほど重症化のリスクが高くなるとされています。
水疱瘡が流行しやすい季節
水疱瘡は春先に流行しやすいと言われています。それは、新入園、新入学などで集団生活がスタートする季節だからです。
しかし水痘・帯状疱疹ウイルスは、季節性のあるウイルスではありませんので、一年を通じて流行する可能性があります。
水疱瘡の症状
水疱瘡で重要なのは、初期症状を見逃さず、早めに受診することです。どのような初期症状が現れるのか、順を追って見ていきます。
37度~38度くらいの発熱
高熱が出ることは少なく、38度前後の微熱というケースが多いようです。熱は3日から5日ほど続くのが一般的です。ただし重症になると高熱が出るので注意が必要です。
全身の発疹
発熱とほぼ同時に、全身に発疹が出始めます。一度に出るのではなく、最初はプツプツからスタートして次第に増えていきます。虫刺されに似ていて、その形から丘疹(きゅうしん)と呼ばれます。
発疹は実に様々な箇所に出ます。手足だけでなく、顔、頭皮、まぶた、まぶたの裏側、口の中、手足、胸、背中、お腹、肛門、陰部といった場所にまで及びます。まぶたの裏など、ちょっとびっくりしてしまいますが、慌てず医師に診てもらうようにしましょう。
かゆい水ぶくれ
発疹は1日くらいでどんどん水ぶくれに変化していきます。この時期が非常にかゆく、小さな子どもはかきこわしてしまうこともあります。
かさぶた
水ぶくれの時期が最もつらいのですが、水ぶくれは3~4日かけてかさぶたに変わっていきます。
その後の症状の進行
最初の発疹が出てから4~5日目には、発疹・水ぶくれ・かさぶたが入り混じります。すべての水ぶくれがかさぶたになれば、病気は終わりを迎えます。かさぶたは待てば自然に剥がれ落ちます。すべてのかさぶたが消えるまで、3週間と言われています。
水疱瘡の治療
初期症状を見つけたらすぐに小児科を受診します。発症後48時間以内であれば、投薬治療が効果を発揮します。まずは受診時のポイントから見ていきましょう。
小児科に「水疱瘡かもしれない」と伝える
保育園や幼稚園での流行が分かっていて、自分の子供も水疱瘡の可能性がある場合には、受診する小児科に、あらかじめ「水疱瘡の可能性があります」と伝えておきましょう。病院によっては、水疱瘡のような感染症の患者を隔離する待合室があります。院内での二次感染を防ぐために、病院の指示をあおぐようにしてください
小児科で伝えること
受診の際には、以下のようなポイントを簡潔に伝えられるよう、発症の経緯などをまとめておくと役立ちます。
- 発疹や熱が出た(気付いた)日時
- それ以外の症状
- 幼稚園や兄弟など、周囲の流行の状況
特に周囲での流行が分かっている場合は、忘れずに伝えましょう。小児科には、そうした地域の流行の情報が集まるので、健診の時などに「流行している感染症はありませんか」と聞く習慣をつけておくと、あらかじめ予防の対策をとりやすくなります。
水疱瘡の診断
水疱瘡かどうかは検査ではなく、症状と流行の状況などから診断が下されます。水疱瘡と診断された場合は薬による治療がスタートします。
抗ウイルス薬
発症から48時間以内であれば、アシクロビルという抗ウイルス薬がウイルスの増殖や重症化を抑える効果があります。乳児や成人の患者は重症化する恐れがあるため、アシクロビルを服用して軽症化を図ります。
かゆみどめ
発疹が水ぶくれになると、猛烈なかゆさに襲われます。子供はかき壊してしまうケースもあるので、かゆみを抑えてあげることが重要です。
フェノール亜鉛華軟膏(カチリ)という白い塗り薬が、よく処方されます。最近はより優れた抗ヒスタミン薬が使われることも多いようです。皮膚を保護するために軟膏(なんこう)が処方されることもあります。必要に応じて出してもらえるよう、医師に相談してみてください。
薬は水ぶくれをつぶさないようにそっと塗りましょう。小さな子どもは塗った薬をなめてしまうこともあるので、なめないように言い聞かせてあげましょう。
水ぶくれに触れた手で薬の容器に触れると雑菌が入ってしまうので、綿棒を使うなどして雑菌を広めないように慎重に扱ってください。
子供の爪を切ってあげる
水疱瘡の感染が分かったら、かゆい水ぶくれができる前に、爪は短く切ってあげるといいでしょう。無意識にかきむしって、傷口から雑菌に感染してしまうのを防ぐことができます。手は清潔にしておきましょう。
風呂ではなくシャワーで清潔に
風呂は発熱があるうちは避けます。熱が下がったら、すべての水ぶくれがかさぶたに変わるまでは、シャワーで体を清潔に保ちましょう。熱いお湯はかゆみを強めてしまうので、ぬるめのシャワーがオススメです。
口内に発疹ができたときの食事
口の中にまで発疹ができてしまうと、口内炎のように痛み、ガクッと食欲が落ちてしまいます。その場合は、無理に食べさせず水分補給で様子を見ましょう。
冷たい、熱い、辛い、大きいといった食べ物は避けて、人肌に冷ましたスープや、とろみのあるシチュー、スムージー、おかゆ、うどん、プリンやゼリーなど、のどごしが良く、硬さのない物を少しずつ食べさせるようにして下さい。
また、発熱をしていると水分が普段以上に失われていくので、食欲がなくてもイオン飲料などで水分だけはきちんと摂るようにしましょう。
もし、どうしても水分が取れないときは早めに病院にかかってください。脱水症状があれば点滴してもらいましょう。
解熱剤アスピリンは危険!
水疱瘡やインフルエンザに感染したとき、アスピリンなどを含む市販の解熱剤を子どもに与えると、「ライ症候群」という非常に怖い病気が起きることがまれにあります。
ライ症候群が起きると急性脳症や肝臓障害などが起き、命にかかわることもあります。熱が出たからといって、安易に市販の薬に頼ることは絶対にしないでください。
解熱薬を使用したいときは、成分名がアセトアミノフェン、イブプロフェンであるものに限り使用できます。必ず医師の処方を受けて使うようにしてください。
ワクチンの接種を
水疱瘡には予防のためのワクチンがあります。2014年10月からは定期接種されることになりました。接種期間は1歳のお誕生日から3歳のお誕生日の前日までで、計2回の接種となります。無料で受けることができるので、必ず受けさせるようにしてください。
また、ワクチン接種していない人が水疱瘡患者と接触した場合、接触してから72時間以内であれば、緊急接種することも可能です。
水疱瘡ワクチンを接種していると水疱瘡にかかりにくくなるだけでなく、万一かかってしまったときも軽く済むという利点があります。
2014年10月より前は任意接種だったため、受けていない子供も多くいます。7歳以上で罹患すると重症化する可能性があるので、有料ですが、早めにワクチンを打っておくことが重要です。
大人でまだ水疱瘡に感染していない人も、任意接種になりますが、早めにワクチンを打っておくことをオススメします。大人も重症化のリスクがあります。
特に、今後妊娠の予定がある女性は特に早めに接種した方がいいでしょう。妊娠中の女性はワクチンを接種することができません。妊娠初期に感染すると胎児に重い障害が起きる場合があります。
出産直前に感染すると、新生児にも感染する可能性があります。その場合、30%という高い確率で新生児が重症に陥って亡くなるという報告もあります。
こういった事態を防ぐために、女性は必ず水疱瘡のワクチンを受けておきたいものです。
登園、登校はできない
水疱瘡は流行性が高いとされる第2類学校感染症ですので、感染がわかったら、感染拡大を防ぐために幼稚園や保育園、学校は欠席しなければなりません。
許可が下りるのは「すべての水ぶくれがかさぶたになった」状態です。だいたい発症から1週間ほどで登園可能になります。医師の指示に必ず従うようにしてください。
重症化の危険性
水疱瘡は重症化することがあり、命にかかわる場合もありますので、注意が必要です。
7~10歳くらいから重症化しやすくなり、年齢が上がるにしたがって重症化のリスクが高くなります。
また、免疫力が低い0~1歳の乳児も注意が必要です。母親からもらった免疫が切れてくる生後半年前後くらいから水疱瘡にかかりやすくなり、罹患すると重症化することがあります。
水疱瘡がもたらす重い合併症として、次のような病気が挙げられます。
- ウイルス性髄膜炎
- 脳炎
- 肺炎
- 皮膚の重症細菌感染症
(アトピー性皮膚炎などを持っている場合)
ウイルス性髄膜炎はまれですが、ヘルペス系のウイルスの合併症として知られています。脳炎や肺炎は死に至ることもありますので、異変を感じたら、早めに救急を受診するようにしてください。
水疱瘡のウイルスは「帯状疱疹」を引き起こす
先にも述べたように、水疱瘡の原因ウイルスは水痘・帯状疱疹ウイルスと呼ばれ、後年に帯状疱疹を引き起こします。
一度水疱瘡に感染した人の体内には、完治した後も、神経節などにウイルスが潜んでいます。そのウイルスが時を経て、疲れなどで免疫力が低下したり、加齢によって体力が落ちてきたときに、再活性化して帯状疱疹を起こすのです。
帯状疱疹になると、お腹や背中などに帯状のブツブツが出ます。かゆみや強い痛みを伴います。中学生や高校生が部活や勉強のストレスで発症することもありますし、大人になってから現れることもあります。
帯状疱疹が出たら、皮膚科にかかります。抗ヘルペスウイルス薬が処方されます。水疱瘡と同様、早めに治療することで重症になることなく、早く治ります。
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