2014年6月に中1男子が校舎の4階から飛び降りて死亡。その原因は「インフルエンザ脳症による異常行動」とされました。
インフルエンザ脳症による異常行動、そして後遺症はどのようなものなのか。具体的な実例を9つの体験談を通じて紹介します。
インフルエンザ関連の記事は次のような構成になっています。
2014年 中1男子はなぜ転落死したのか
当時の新聞記事から引用します。
兵庫県三木市の市立緑が丘中学校で今年1月、1年生の男子生徒=当時(12)=が校舎4階から転落し、死亡した。
当初、いじめを苦にした自殺の可能性も考えられたが、市教委が設置した第三者による事故調査委員会は6月、転落の原因を「インフルエンザなどウイルス性疾患の脳症による異常行動が原因」と結論づけた。
40度以上の高熱で脳が炎症を起こし、突発的に4階教室の窓から飛び降りたとみられる、ということだ。
抗インフルエンザ薬による子供の異常行動はこれまでも指摘されてきたが、今回の場合、インフルエンザは男子生徒の体にどのような変化をもたらしたのか。
事故は今年1月9日午前10時50分ごろに起きた。
男子生徒が校庭にうつぶせで倒れているのを、男性教諭が発見。男子生徒はすぐに病院に搬送されたが、全身を強く打っており、約1時間後に死亡した。
市教委などによると、男子生徒は2時間目の体育の授業で行われた約3キロの長距離走で最後に帰ってきた。ふらついた様子が見られ、体調がよくないと感じた体育担当の男性教諭は男子生徒に保健室で休むよう促した。
だが、男子生徒は保健室には行かず、4階にある自分の教室に戻った。3時間目は音楽の授業だったため、クラスメートは音楽室に向かい、男子生徒は1人で教室に残った。そして、窓に設置された高さ約50センチの転落防止用柵を乗り越え、教室の窓から転落した。
(中略)
男子生徒は、体育の授業の後、保健室に行くよう促されたが、保健室とは違う方向にある体育館の裏をわざわざ通って教室に戻った。
いつの間にか体操服は泥だらけで、教室に向かう途中、すれ違った上級生にそれを指摘されると、「気がついたらこうなっていた」と話していた。
また、教室に戻った際、上履きを履かず、靴下のままの姿で小刻みに震えていたという。
意味不明な言動や体の震え-。転落直前の男子生徒の様子について、調査委のメンバーで小児科医の山辺ゆかりさんは「インフルエンザ脳症の症状に酷似している」と指摘する。
インフルエンザに罹患(りかん)し、ウイルスによって脳症になると、うわごとを言ったり、突然走り出すなど異常な行動をとるケースがあるという。
厚生労働省の統計によると、インフルエンザによるとみられる異常行動は平成18~24年度、858件確認された。このうち飛び降りたり、突然走り出すなど重大な事案が発生しかねない異常行動は441件報告されている。
こうした異常行動は、9歳ごろをピークに3~15歳で発生する傾向にあるが、成人の異常行動が確認された例もある。
(中略)
今回の男子生徒を司法解剖したところ、約5時間後も39度以上の高熱があり、血中の白血球が約1.5倍、リンパ球が約2倍にそれぞれ増加していた。
また、脳が大きく腫れていた。この結果、調査委は事故直前の異常行動と合わせて男子生徒がインフルエンザ脳症にかかっていた可能性が高いと判断した。
国内のインフルエンザ感染者数は年間1千万人にのぼるとされる。このうち、異常行動が確認されるのはごくわずかだ。
ただ、異常行動の約8割は発熱後2日以内に起きており、厚労省は「インフルエンザと診断された場合、未成年者に対しては少なくとも2日間、1人にならないよう配慮することが重要」と注意を呼びかけている。
調査委から調査結果の報告を受けた男子生徒の母親は「自殺ではないことが分かってよかったが、体調の悪い生徒への対処方法など学校側の安全管理には疑問が残る。このような事故が2度と起きないよう、インフルエンザの恐ろしさを訴えていきたい」と話している。
(産経新聞2014年6月25日から引用)
この男子生徒は、170センチ100キロと中学1年生としては大柄で、同級生から体形を冷やかされていたことがあったことから、当初いじめを苦にした自殺の可能性があるとされ、調査員会も設置されました。
しかし、飛び降り直前に男子生徒に見られた異常行動と、死後の司法解剖の結果から、転落死の原因はインフルエンザ脳症と結論付けられたのです。
インフルエンザ脳症の実例・体験談
インフルエンザ自体は、毎年数百万人の患者を出す感染症ですので、インフルエンザ脳症にかかる確率は1万分の1よりも低いかもしれません。しかし、リスクはゼロではないのです。
なかなか実感がわかないかもしれませんが、いくつかの体験談を読んでいただけると、その過酷さが少し想像できるかもしれません。子供がインフルエンザにかかったとき、少しの変化も見逃さないよう、こうした体験談から学ぶことが必要だと思います。
〔体験談1〕診察してもらえず1歳女児が亡くなった事例
私は3ヶ月前に1歳3ヶ月の娘をインフルエンザ脳症で亡くしました。
(中略)
娘は発熱後、一度は下がりましたがまた熱が上がり、坐薬も痙攣止めも効かず、救急外来に行きましたが、人が多くてなかなか見てもらえず、41度まで熱が上がり痙攣を起こし待合中に私のうでの中で意識がなくなりました。
それから、すぐ脳死状態になり、二度と目をあけてはくれませんでした。
入院中は、娘の体を拭き、話しかけ、おむつをかえ、いろいろ娘とかかわれた事で自分なりに、できる事をできた。そう言う気持ちでいっぱいでした。
でも娘の形が亡くなり、いろんな人と出会い、その方たちの体験を聞いたり、私の体験を聞かれたりするたびに本当にこれで良かったのか。と考えています。
インフルエンザ脳症には有効な治療法がないのが現実です。
ですが、救急外来で駆け込んだにもかかわらず診察してもらえず、放置されたまま親の腕の中で亡くなってしまったこの事例は、やるせないものがあります。
少しでも早く診察と対症療法が行われたならば、一命を取り留めた可能性もあったのではないかと思うと、ご両親の胸中は察するに余りあります。
〔体験談2〕脳に障害が残った小3男子の事例
私の小学校3年になる息子も今年1月31日に痙攣を起こし、1ヶ月間入院し後遺症を残し現在に至ってます。体自体は元気になり歩くことも走ることも出来るようになりましたが、脳に障害が残り、話すことや言葉の意味を理解することが出来ず、週に1回程度、言語訓練に通っています。IQテストをした結果2才半くらいの知能だそうです。
小学校には、女房が毎日ついて行って側に付き添ってます。授業中うろうろしてどこかいなくなるためです。今このままこの学校にいるべきか、養護学校へ入れるべきか考えています。校長先生は養護学校へ入れることを、強く勧めます。
いずれにしても子供にとってどっちが良いか、良く考えて決めていきたいと思います。
誰もがかかる可能性のあるインフルエンザによって、一生の障害を負ってしまう。一命は取り留めたものの、ご両親の悲しみは消えないのではないでしょうか。
でも、痙攣を起こしたとき、いったい何ができたのでしょうか。だからこそ、シーズン初めにワクチンを打ち、少しでもリスクを減らしておく努力を怠ってはいけないのだと思います。
〔体験談3〕2歳女児が意識不明になった事例
私の家族は、妻と2人の娘がいます。
実は、今年の3月に長女(2歳)がインフルエンザ脳症にかかり、一命は取り留めたものの意識が回復せず現在も入院しております。
〔体験談4〕生後10か月の男児が一命を取り留めた事例
私の次男も今年の1月(生後10ヶ月時)に急性脳症になり、一時は命も危ぶまれましたが、どうにか助かり現在はリハビリに頑張っております。
うちの次男の場合には、それこそ突然に急性脳症になったために、発症当初からつい先日まで、原因を探っていましたが、結局「インフルエンザ脳症」という病名に落ち着きました。
〔体験談5〕3歳で知的障害に。リハビリを続けている事例
うちの息子も3歳1ヶ月の時(平成1年)に急性脳炎で 緊急入院しましたが、最近の病院の診断でインフルエンザ脳症であっただろうと診断されました。現在後遺症として知的障害が残りました。
(中略)
3歳で発病してからド-マン法のリハビリを5歳~7歳まで近所のひとの力を借りてやりました。今は中学1年生で普通学級に通ってます。
〔体験談6〕4歳女児が身体障害になった事例
娘も年少の4才の時(平成10年2月)にインフルエンザ脳症になってしまい、後遺症(重度障害)を残してしまいました。
発病から1日で意識不明になり、約3ケ月意識障害の為、反応がまったくありませんでした。その後、少しずつ反応がでてきました。
約8ケ月間、大学病院に入院後、療育センターに3ケ月母子入所をし平成11年自宅に戻ってきました。
身体障害も1級であり、歩く事もできませんが、日に日に進歩はしているので、もう一度赤ちゃんからやり直しているんだと思って、リハビリを続けている毎日です。
知能障害は体が動かしづらい事もあり、どの位あるのかわかりませんが最近言葉もではじめています。
今は来年小学校に入学の為、学校選びで迷っています。
〔体験談7〕3歳男児が寝たきりになった事例
我が家の長男も平成10年2月7日にインフルエンザによる急性脳症を起こし 一命は取り留めましたが重度の後遺症を残しました。現在何とかちょっとでも良くなる様にリハビリなど毎日頑張っています。
(中略)
長男は今3歳4ヶ月です。 3歳なのに体重は18Kgもあり、どう見ても5歳ぐらいにしか見られません。病気をする前は電車と飛行機をこよなく愛する元気な元気な笑顔の男の子でした。
今は、揺らされる事が一番好きみたいです。PTのボールや通園のトランポリンは 声を出して笑うようになってきました。
たった1度の風邪でこんなひどい事になるなんて夢にも思いませんでしたが、 たった1日で今まで私にしがみついていた息子が寝たきりになってしまう、いや、ひょっとすると この手から消えてしまうかもしれない。
あまりにも突然の残酷な出来事でした。
あれから1年と8ヶ月がたち まだまだ首もすわらないし、目も追うこともないけれど、 少しずつ筋緊張もとれて、揺らしたり声をかけると(自分のことと解っているかは解りませんが) 笑顔が出るようになってきました。
これからどのように変わって行くのか全く見当もつきませんが、 絶対諦めずこれからもがんばります。
〔体験談8〕7歳女児がリハビリで回復しつつある事例
私の7歳になる娘も平成9年1月にインフルエンザ脳症に罹り、一時は心肺停止状態になり、医師の方々の懸命の治療のおかげで一命をとりとめました。
その後2ヶ月間の入院生活を送り、現在はリハビリのために専門機関に入所し、そこから養護学校に通学しています。
退院時には、もう歩くことは無理かもしれないと主治医から言われたのですが、今では、よたよたしていますが頑張って自分の足で歩いています(時々さぼって車椅子で楽をしていますが・・・)
ただ、人の話は理解できるのですが、自分では声がでず、ほとんど話すことができなくてちょっと不自由をしています。
本当は自宅で生活をさせたいのですが、事情が有って父子家庭の為、自宅では介護ができず、専門機関に入所して、週末に自宅に帰る生活が続いています。
〔体験談9〕運転中の60代男性が交通事故を起こした事例
今年4月20日、愛知県一宮市の名神高速道路で、60代の男性運転手が運転する観光バスが突然中央分離帯を破って反対車線を逆走し、反対車線の8台と衝突し13人にけがを負わせた。
運転手は「事故当時、インフルエンザにかかっていた」と供述したという。
(引用:産経新聞)
この事例は、インフルエンザ脳症が子供だけでなく成人にも起こることを示しています。
成人も責任を持ってシーズン始めにワクチンを打ち、インフルエンザの症状が出たらすぐに診察を受け、適切な処置を受けることが求められます。
インフルエンザ脳症の後遺症
インフルエンザ脳症にかかってしまうと、30%が死に至り、25%には後遺症が残ると言われています。
後遺症としては、次のような症状が挙げられます。
【インフルエンザ脳症の後遺症】
- 身体の麻痺
- 知的障害
- てんかん
- 高次機能障害
いずれも長期にわたるリハビリが必要な重い後遺症です。医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、ソーシャルワーカーと連携し、あきらめずにリハビリを続けていかなければなりません。
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