女性の4~5人に1人が潜在的に抱えていると言われる「貧血」。生活の質を落としてしまう、様々なつらい症状のもとになっています。
一口に「貧血」と言っても、いくつかの種類があり、また一般的に誤解されていることもあります。この記事では、「貧血」の基本的な知識をまとめ、具体的な治療に結び付けるための道筋を皆さんにお伝えできればと思います。
貧血の様々な症状
貧血は、赤血球の不足が引き起こす病気です。酸素の運び手である赤血球が減ってしまうと、血液中の酸素供給が低下してしまい、体全体に酸素が行き渡らず、さまざまな不調が現れます。
貧血の主な症状は「息切れ」です。体が酸素不足になると、それを解消するためにもっと呼吸をして酸素を取り込もうとする反応が起こり、息切れしやすくなります。
息切れ以外の症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 皮膚の色が青白くなる
- 口の中や下まぶたの裏側の粘膜が白っぽくなる
- 体がいつもだるい
- ちよっと歩いただけでもすぐに疲れてしまう
- 寒さを感じやすい
- 根気がつづかなくない
- 頭痛
- めまい
- 動悸
- 耳鳴り
- 下肢のむくみ
- 食欲低下
- 爪が平らになったり、スプーンのように反り返る
こういった症状が気になったら、貧血を疑ってみてください。
上記の症状の中の「めまい」については、次の記事も参考になさってください。
【女性のめまい】4つの主要な原因と対処法貧血の種類
貧血にはいくつか種類があります。順にご説明します。
その前に、大きな分類をしておきましょう。貧血には、大きく分けて3つのタイプがあります。
- 小球性貧血
- 正球性貧血
- 大球性貧血
「小」「正」「大」というのは、赤血球の大きさを表します。
この分類を踏まえて、貧血の5つの種類を見てみましょう。
鉄欠乏性貧血
もっともよく見られるのが、「鉄欠乏性貧血」です。これは赤血球を作るのに必要な鉄分が不足することで起こる貧血です。偏った食事やダイエットによって鉄の摂取が不足したり、出血で体内の鉄が減ることで起こります。男性よりも女性に多く見られるのは、月経(生理)による出血で毎月多くの鉄が失われるためです。
先ほど示した大きな分類の中で、「鉄欠乏性貧血」は「小球性貧血」にあたります。つまり、赤血球のサイズが小さくなる貧血ということになります。血液中の鉄分が減ることで、赤血球のサイズが小さくなり、酸素を運ぶ能力が低下してしまうのです。
出典:かがやきクリニック川口
正球性貧血
これは、赤血球の大きさは正常のまま貧血が起こるケースで、赤血球の数そのものが減ってしまっている状態です。原因としては、消化管からの出血などが考えられます。
溶血性貧血
これは、「正球性貧血」のひとつで、赤血球の破壊が速いスピードで起こってしまう病気です。赤血球にも寿命がって、通常100〜120日間と言われています。寿命を過ぎると、赤血球は肝臓や脾臓で破壊され、骨髄で新たな赤血球が作られます。しかし、破壊される速度が速くなり、赤血球の生産が追い付かなくなると、「溶血性貧血」となります。
再生不良貧血
骨髄で赤血球をつくる機能が正常に働かなくなって起こる貧血です。この場合、赤血球だけでなく、白血球や血小板も減少します。造血幹細胞に異常が生じており、治療困難であるため厚生労働省から特定疾患の指定を受けている難病です。
巨赤芽球性貧血
出典:大阪市立大学
これは、「大球性貧血」に分類される貧血です。赤血球を作るために欠かせない「ビタミンB12」や「葉酸」が不足していることが原因で、赤血球になる前の赤芽球と呼ばれる細胞が巨大化した「巨赤芽球」が現われた状態をいいます。特に妊娠中は葉酸が欠乏しやすいので、葉酸を多く含む緑黄色野菜を食べるなど、補給する必要があります。
「立ちくらみ」と「貧血」は別物
出典:こそだてハック
朝礼のときに、ふらっとして倒れる。急に立ち上がったときに目の前が真っ暗になり、立っていられなくなる。こんな症状を、「貧血」と言ったりしますよね。ですが、実はこれは間違いです。
こうした「立ちくらみ」は、この記事で述べている「貧血」ではなく、「脳貧血」というまったく別の症状です。「脳貧血」は、脳の血流量を保つための調節機能が不調になり、血圧が低下して、脳が瞬間的に酸欠状態になって起こる一時的なものです。同じ酸欠でも、「貧血」はヘモグロビンの量が少ないために酸素量が慢性的に不足するものですので、メカニズムがまったく違うのです。
男性の貧血は要注意
4~5人に1人が貧血になる女性と違い、男性が貧血になる確率は数%とかなり低いです。これは、男性には月経(生理)や出産などによる出血がないことが大きな要因です。ですので、男性の多くは(僕も含めて)、「たかが貧血」と考えがちです。
ですが、だからこそ、男性に貧血の症状が現れたときは要注意です。ただの鉄欠乏性貧血ではなく、重大な病気が潜んでいることが十分に考えられるからです。
男性が貧血になる場合、胃・十二指腸潰瘍、胃がん、大腸ポリープ、大腸がんなどの可能性が高いと言われています。これらの病気によって、体内で出血が起こり、貧血の症状が引き起こされます。
事実、大腸がん患者を数多く手術してきた大腸がんの専門医は、「貧血症状のある患者さんから大腸がんを発見することはかなりあります」と指摘しています。
男性で、貧血の症状が現れたら、「たかが貧血」とは決して思わず、必ず精密検査を受けてください。貧血は重要なサインなのです。
貧血の治療は「血液内科」に
ここまで書いてきたように、一口に貧血と言っても、様々な種類があり、中には重大な病気の現れである可能性もあります。こうした判断は、素人である僕たちにはくだすことはできません。
そこで強い味方になるのが、「血液内科」という専門医です。ちょっとなじみがないですよね。ですが、実は多くの総合病院に、こうした血液の専門医がいます。googleで「血液内科 東京」などと、ご自分のお住まいの地域と合わせて検索してみてください。しっかりした検査を行って、正しい診断をしてくれる専門医を見つけてくださいね。
鉄分を貯蔵する「フェリチン」について
もっとも一般的で、多くの女性がつらい思いをしている「鉄欠乏性貧血」については、鉄分を貯蔵する重要な分子である「フェリチン」についてまとめた、次の記事に詳しく書いてあります。ぜひ、参考にしてみてください。
【フェリチン不足による諸症状】潜在的な鉄分不足の原因と改善法【フェリチンの血液検査】鉄分を補給する食事とサプリおだいじになさってください
女性に特徴的な諸症状の原因となっている「鉄欠乏性貧血」。正しく自分の状態を把握するためにも、貧血の種類や、正しく診断してくれる専門医の存在についても、ぜひ知っていただければと思います。
僕もそうですが、男性の皆さんは、女性のことを正しく知るためにも、貧血について知っておきたいものです。そして、男性自身も貧血の怖さを知ることで、大きな病気を早い段階で発見することにつながります。