【インフルエンザ脳症】突然のけいれん、意識障害、異常行動・・・その前駆症状と後遺症

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インフルエンザによる発熱にともなって、けいれん、意識障害、異常行動などの神経症状がみられる場合、インフルエンザ脳症が疑われます。死亡率は約30%、約25%に後遺症が残ると言われる重い合併症です。

インフルエンザ脳症とは

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インフルエンザ発症後、急激に脳症へ

インフルエンザ脳症の発症は急激です。インフルエンザによる発熱後、数時間から1日以内に発症。朝に発熱したと思ったら、夜には人工呼吸器を装着しているというような、急激な展開を見せます。有効な治療法はなく、対症療法のみの処置となります。

近年の発症状況

インフルエンザ脳症は、かつて年間に100~300件以上の報告がありましたが、近年はどのような状況なのか。下の図をご覧ください。

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(引用:国立感染症研究所

このグラフは、国立感染症研究所のホームページに掲載されている「シーズンごとのインフルエンザ脳症報告数の年齢郡別割合(2009/10~2014/15シーズン)」という報告です。

左から順に2009/10年のシーズンから2014/15年のシーズンまでのインフルエンザ脳症の発況がグラフ化されています。

それぞれの棒グラフの下に記されている「n=」という数字が、その年の発生件数を示しています。つまり、以下のようになります。

2009/10年 319件
2010/11年 80件
2011/12年 88件
2012/13年 64件
2013/14年 96件
2014/15年 101件

2009/10年はA型インフルエンザの大流行があった年だったため、インフルエンザ脳症の発生件数も多くなっていますが、その後は年間60~100件ほどのペースで推移しています。

インフルエンザ脳症を発症する年齢は、多くのサイトでは「主に5歳以下」と記されていますが、実際にはもう少し上の年齢でも発症する可能性が十分にあることが分かります。

グラフでは、水色が0~4歳、オレンジが5~9歳というように、発症年齢の割合が色分けされています。これを見ると、水色とオレンジの合計、つまり9歳以下の発症割合が、およそ50~70%を占めています。一方で10歳以上の年齢層も、30%以上を占めていることは見逃せない点です。

インフルエンザ脳症は日本人特有の症状

不思議なことに、欧米ではインフルエンザ脳症はほとんど報告されていないと言います。毎年100件近くも発症しているのは世界でも日本くらいだそうで、もしかしたら脳症の発生には人種的な差があるのかもしれないと推測している医師もいるようです。

インフルエンザ脳症はなぜ起こるのか

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インフルエンザ脳症がどのようなメカニズムで発症するのかは、解明されていません。

仮説として、以下のように考えられています。

インフルエンザウイルスは最初、鼻粘膜に感染して増殖し、全身に広がります。鼻粘膜から近い脳内にもウイルスが侵入している可能性が高いはずなのですが、脳症にかかった患者の脳内からはウイルスが検出されません。つまり、インフルエンザ脳症はウイルスが直接脳内に侵入することなく発症していると考えられます。

なぜこのようなことが起こり得るのか。

インフルエンザの病原性(毒性)はきわめて強く、身体を外敵から守っている免疫系が強烈なダメージを受けます。免疫を調節し、体内に侵入した病原体を排除する物質を「サイトカイン」と言います。サイトカインには多くの種類があり、相互に連携を取り合って働いています。これを「サイトカインネットワーク」と呼んでいます。インフルエンザは、この「サイトカインネットワーク」を破壊します。その結果、過剰な免疫反応が起きて、「高サイトカイン血症」という状態になります。

その結果、脳内でも免疫が正常に機能しなくなり、インフルエンザ脳症の諸症状であるけいれん、意識障害、異常行動などが現れると考えられます。

さらに多くの細胞が障害を受け、全身状態が悪化するため、呼吸が止まったり、血管が詰まるなどして、多臓器不全へ進行。命に関わる重症となる・・・という仮説です。

鼻粘膜に一番近い脳の部位は、側頭葉です。側頭葉は、感覚や感情を調整する働きを持っています。ですから、側頭葉が障害を受けると、幻覚や幻聴といった異常行動が現れるのではないかと考えられているのです。

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インフルエンザ脳症の症状

インフルエンザ脳症の代表的な症状は、次の3つです。

けいれん

インフルエンザ脳症を発症する人の60~80%に見られる最も代表的な症状です。全身がガタガタ震えるような硬直性を示します。持続時間は様々で、短い場合は1分足らずです。短時間でおさまるような場合は、「熱性けいれん」の可能性も考えられるので、医師による見極めが重要になります。

けいれんが10~15分以上続く場合や、短時間のけいれんを何回も繰り返す場合、また左右対称的ではない現れ方をする場合には、脳症によるけいれんの可能性が高いと考えられます。白目を向いて意識がなくなり呼吸が荒くなる、というような症状の現れ方をすることもあります。すぐに医療機関に連絡をするようにしてください。

意識障害

起きているのか寝ているのか判然としないような状態です。呼んでも返事をしなかったり、刺激を与えても痛がるなどの反応を示さないような状態は、要注意です。すぐに医療機関に連絡をして下さい。

異常行動

インフルエンザ脳症の前駆症状(まえぶれ)としての、次のような異常な行動や言動が報告されています。

・両親が分からない。いない人がいるという(人を正しく認識できない)
・自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものを区別できない
・アニメのキャラクターや動物が見えるなど幻覚を訴える
・意味不明な言葉を発する
・ろれつがまわらない
・おびえ、恐怖を訴える
・急に怒り出す、泣き出す、大声で歌い出す

このような症状は、持続時間が短ければ「熱性せんもう」という別の症状の可能性がありますが、インフルエンザ脳症の場合は持続時間が長いのが特徴です。この様な症状がみられたら、すぐに医療機関に連絡して下さい。

いずれの症状も、具体的に細かく観察し記録しておくと、医師に説明する際に役立ちます。

※このような異常行動が、タミフルやリレンザといったインフルエンザ治療薬によって起こるという事例が報告されています。2017年2月15日には、リレンザを服用した男子中学生が転落死する事故が起こっています。こくした実例については、こちら↓の記事をご覧ください。

【リレンザ転落死】インフルエンザ治療薬が招く異常行動、その事例と対応策

ワクチンでインフルエンザ脳症を予防できるか

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インフルエンザワクチンによって、直接的には脳症は予防できないと考えられいます。ただ、ワクチンを打つことでインフルエンザそのものにかかりにくくなり、罹患しても軽症ですむという効果があるので、脳症への発展を妨げるのには一定の役割を果たすことになるでしょう。

少しでもインフルエンザ脳症にかかるリスクを減らすために、ワクチンは必ず接種しておくべきだと思います。

インフルエンザ脳症の治療

上記のような症状が現れたら、まずはすぐに医療機関にかかってください。躊躇せずに救急車を呼んでください。有効な治療法はなく、対症療法のみの処置となりますが、設備のしっかりした病院ほど、手厚い看護体制を得られると思われます。

インフルエンザ脳症の後遺症

インフルエンザの脳症にかかってしまうと、30%が死に至り、25%には後遺症が残ると言われています。後遺症としては、次のような症状が挙げられます。

・身体の麻痺
・知的障害
・てんかん
・高次機能障害

いずれも長期にわたるリハビリが必要な重い後遺症です。医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、ソーシャルワーカーと連携し、あきらめずにリハビリを続けていかなければなりません。

インフルエンザ脳症による死亡事例・体験談を、こちら↓にまとめました。

【インフルエンザ脳症】中1飛び降りの衝撃 ーウイルス性脳症の実例と体験談―

具体的でリアルな記述なので、状況がよく理解できます。ぜひご覧ください。

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