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【演奏会の感想】アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタル(2020年3月 いずみホール)

アンドラーシュ・シフ いずみホール チラシ(全体)

こんにちは。そなてぃねです。

2020年3月に大阪のいずみホールで行われた、アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタルを聴きに行きました。

新型コロナウイルスの影響で、政府からのイベント自粛要請が出されている中、主催者の判断で、万全の感染防止対策のもと行われました。

シフさんの演奏の素晴らしかったこと…! びっくりするようなアンコールも飛び出し、忘れられない演奏会となりました。

演奏会の概要

アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタル

  1. メンデルスゾーン作曲
    幻想曲 嬰ヘ短調 作品28「スコットランド・ソナタ」
  2. ベートーヴェン作曲
    ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 作品78「テレーゼ」
  3. ブラームス作曲
    8つのピアノ小品 作品76
  4. ブラームス作曲
    7つの幻想曲集 作曲116
  5. バッハ作曲
    イギリス組曲 第6番 ニ短調 BWV811

〈アンコール〉

  • バッハ作曲
    パルティータ第4番 ニ長調 BWV828からサラバンド
  • ブラームス作曲
    アルバムの小品
  • メンデルスゾーン作曲
    無言歌第1集 作品19bから「甘い思い出」
    無言歌第6集 作品67から「紡ぎ歌」
  • ベートーヴェン作曲
    ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53「ワルトシュタイン」
  • バッハ作曲
    平均律クラヴィーア曲集 第1巻から ハ長調 BWV 846

ピアノ アンドラーシュ・シフ

 

2020年3月17日(火)19:00~

いずみホール(大阪市)

 

そなてぃね感激度 ★★★★★

思いがけず手に入った当日券

アンドラーシュ・シフ写真

©Joanna Bergin

1953年、ハンガリーのブダペスト生まれ。5歳からエリザベス・ヴァダスの下でピアノを始め、その後フランツ・リスト音楽院でパール・カドシャ、ジェルジ・クルターク、フェレンツ・ラードシュらに学び、さらにロンドンでジョージ・マルコムに師事した。

シフの活動の大半はJ. S. バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、シューマン、バルトークなどの主要な鍵盤作品によるリサイタルや全曲演奏会である。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲によるリサイタルは2004年から行っており、今では20都市にのぼる。チューリヒ・トーンハレで行われた同プログラムはライヴ・レコーディングされている。

最新盤は、ECMレーベルから2015年4月にリリースされたシューベルトの後期ピアノ作品集。このディスクは、シフが所蔵する1820年ウィーン製のフランツ・ブロードマンのフォルテピアノを弾いて録音したもので、ICMA賞(国際クラシック音楽賞)の独奏器楽部門においてレコーディング・オブ・ザ・イヤーを受賞した。シフが同賞を授与されたのは、2012年リリースのアルバム『シューマン:精霊の主題による変奏曲』(ECM)以来、二度目となる。

世界の一流オーケストラや指揮者の大多数と共演してきたが、近年はピアノを弾きながら自らオーケストラを指揮する弾き振りの活動に力点を置いている。1999年には自身の室内楽オーケストラ、カペラ・アンドレア・バルカを創設、メンバーには国際的なソリストや室内楽奏者、友人たちが加わっている。このほかに毎年ヨーロッパ室内管弦楽団も弾き振りしている。

幼少の頃から室内楽に親しみ、1989年から1998年まで、ザルツブルク近郊の、国際的にも評価の高いモントゼー音楽週間の芸術監督を務めた。また1995年にハインツ・ホリガーとともに、スイスのカルタウス・イッティンゲンでイッティンガー聖霊降臨祭音楽祭を創設。1998年にも「パラディオへのオマージュ」と名づけた同様のシリーズをヴィチェンツァのテアトロ・オリンピコでスタートさせた。

受賞歴も数多い。2006年、ベートーヴェン作品の演奏における業績を称えられ、ボンのベートーヴェン・ハウスの名誉会員に選ばれた。2008年にはウィグモア・ホールでの30年にわたる音楽活動が評価され、ウィグモア・ホール・メダルを贈られた。2009年、オックスフォード大学のベリオール・カレッジの特別研究員に選出されている。2011年、ツヴィッカウ市よりシューマン賞を受賞。2012年、国際モーツァルテウム財団よりゴールデン・モーツァルト・メダルを授与され、プール・ル・メリット勲章ならびにドイツ連邦共和国功労勲章大功労十字星章を受章。同年、ウィーン・コンツェルトハウスの名誉会員にも選ばれた。2013年12月、ロイヤル・ フィルハーモニック協会よりゴールド・メダルを贈られた。2014年7月にはリーズ大学より名誉音楽博士号を授与されている。

2011年の春、シフは近年のハンガリー政府のメディア法に反対を表明して注目を集め、ハンガリーのナショナリストたちから相次いで攻撃を受けたことから、今後、祖国では演奏を行わないと表明している。

2014年6月、エリザベス女王の公式誕生日を記念する叙勲名簿の発表に際し、英国よりナイト爵位を授与された。

(KAJIMOTO公式サイトから転載)

今回は、僕にとって初めて聴くシフさんの生演奏でした。

実は、チケットは早々に売り切れてしまい、僕は手に入れることができませんでした。

ところが、イベント自粛要請中の開催ということで、チケットの払い戻しが行われ、当日券が出ることになったのです。

僕にとっては思いがけず、手に入ったチケットでした。

▼当日券を求めて、大阪城公園から会場に向かう道すがら。

大阪城公園からいずみホールへ

優しく凛としたシフの音楽

3時間近くに及んだ演奏会。一生忘れられない、素晴らしい時間になりました。

シフさんの音の、なんと美しかったことか…! 言葉が出てきません。

湧き出す泉のように、こんこんと溢れる響き。

ひとつひとつ、柔らかい布で磨き上げられたような、優しく丸みを帯びた音。

霞(かすみ)のように淡く溶け合う和声。

光があたってプリズムが色彩を反射するように、隠れていた大切な音が宝石のように輝きを放ちます。

メンデルスゾーン、ベートーヴェン、ブラームス… 聴いたことのある曲からも、知らなかった旋律が浮かび上がり、香り立つようなロマンティシズムが聴こえてきました。

一方、バッハでは、凛と引き締まった音色に変わり、同じ楽器とは信じられないくらい。

左手と右手が自立した生命体のように律動し、絡み合いながら、大きな弧を描いて終曲「ジグ」に向かう流れは、圧巻でした。

楽器はベーゼンドルファー290インペリアル。低音の鍵盤を9つ拡張しているモデルで、最低音まで深くクリアに響きます。

シフさんの魔法の手によって、この楽器から極上の音が紡ぎ出されていきました。

アンコールでなんと…!

満場の拍手に応えて演奏されたアンコールが、ちょっと考えられないくらいに豪華でびっくり!

バッハの夢のように美しいサラバンドが奏でられ…

その後、「ブラームスを弾きます」と言って(日本語!)演奏したのが「アルバムの小品」という哀愁に満ちた作品。

これは、ブラームスが20歳のころに書いた楽譜を、指揮者のクリストファー・ホグウッドが再発見し、2012年にシフさんが「初演」したものです。

若書きながら、ブラームスらしい仄暗さを湛えた小品。実演を聴けて幸運でした。

さらに、「メンデルスゾーンを弾きます」と言って2曲の無言歌を演奏。これも可憐な演奏で、素敵でした。

そしてそして… なんとベートーヴェンの「ワルトシュタイン」全楽章!

あのハ長調の和音の連打が聴こえたとき、「まさか…!?」と思わず会場がどよめきました。

これがまた極上の演奏で…

アンコールというより「第3部」と言った方がいい豪華さに、会場はスタンディングオベーション! 僕も立ち上がって拍手しました。

もうさすがに終演だろうと思っていたら、最後の1曲が。

バッハの平均律クラヴィーア曲集から第1巻のハ長調。しかも、前奏曲だけでなくフーガも!(前奏曲の終わりで思わず拍手が起こったのはご愛嬌ですね)

▼鳴り止まない拍手の様子がこちら。

湧き出す泉のように

つくづく、シフさんは「与える人」だなぁ… と思いました。

こんこんと湧き出す泉のように、美しい音楽を、惜しみなく僕たちに与えてくれる。

演奏する姿も、おじぎする姿も、慈しみに満ちていて、神々しいほどでした。

そのたたずまいに接して、「あぁ、存在そのものの次元が違うのだ」と思いました。

幼いころからどれほどの鍛錬を重ねてきたのか、想像もつきません。

母国ハンガリーには、政治的な理由で10年以上も帰ることができていないと言います。

そんな苦難を微塵も見せず、包み込むような優しさで、天上の美を与えてくれる人。

世界中が閉塞感に苛まれている今だからこそ、シフさんの演奏を聴けて本当によかったです。

新型コロナ、イベント自粛の中で

この公演が行われた、2020年3月17日現在の状況について、書いておきます。

中国武漢で発生した新型コロナウイルスは世界中に広がり、WHOがパンデミックを宣言するに至りました。

日本も、先の見えない不安の中にあります。2月26日に政府から「2週間のイベント自粛要請」が、3月10日には「さらに10日間の継続要請」が出されました。

クラシック音楽業界も、数百のコンサートが中止を余儀なくされています。

そんな状況の中、今回の「アンドラーシュ・シフ ピアノ・リサイタル」は開催されました。

主催のKAJIMOTOといずみホールは、相当な覚悟を持って開催に踏み切ったはずです。

もしクラスター感染が起きてしまったら、世間から大変な非難を受けることになるからです。

会場に着くと、徹底した感染防止対策で臨んでいることが分かりました。具体的には、次のようなことです。

  • チケットは半券を切らず目視で確認
  • アルコール消毒液の完備
  • バーコーナー営業の中止
  • プログラム・CDの販売中止
  • チラシ配布の中止
  • サイン会を実施しない
  • クロークサービスの中止
  • 手すり、肘掛けなどの事前消毒
  • 会場内の十分な換気

▼こんなかわいい動画で注意喚起も。

会場内は、いい意味で緊張感があり、すべての人がお互いに気を配り合っているのが伝わってきました。

「ここで感染することはないだろう」

という安心感がありました(もちろん、そんなこと断言はできないのですが…)。

クラシック音楽のコンサートは、大声を出すこともないですし、客席で体が触れ合うこともありません。

今回のような万全の対策ができるのであれば、状況を見ながら開催してもいいのではないかと、個人的には思いました。

何より、シフさんの極上の音楽を聴くことで、会場の800人近い聴衆は、間違いなく力をもらったはずですから。

追体験のための動画集

感動を思い出せるよう、シフさんの関連動画を置いておきます。

▼ブラームスの作品118の2。今回の曲目ではありませんが、KAJIMOTOが3月14日にライブ配信した「ホンマこんなときやけど やっぱ(音楽)好きやねんTV」第2弾のワンシーンです。
(この曲が始まる49分16秒から再生されます)

▼ベートーヴェンのソナタ。今回の「テレーゼ」ではありませんが、札幌と埼玉で演奏される予定だった「告別」(開催中止)が、前述のライブ配信で演奏されました。
(この曲が始まる1時間9分から再生されます)

▼イギリス組曲のライブ映像(詳細は不明)。これも圧巻の名演です。
(第6番が始まる1時間36分から再生されます)

▼「ブラームスを弾きます」と言って演奏したアンコール曲「アルバムの小品」。2012年にBBCで「初演」されたときの番組。楽譜を再発見したホグウッドも出演しています。
(演奏が始まる2分39秒から再生されます)

▼アンコールの最後に演奏した、バッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻からハ長調。こちらも前日のライブ配信から。
(この曲が始まる20分53秒から再生されます)

あとがき

イベントの自粛要請から3週間。閉塞感がつのり、音楽関係者たちが疲弊する中で行われた今回のコンサート。

否定的な意見もあるかもしれませんが、僕は、開催してくれた主催者と、演奏してくれたシフさんに、心から感謝したいです。

こういう時だからこそ、みんなが音楽を求めているのです。

万全の対策さえすれば、安全に開催できるということも、示されたのではないかと思います。

まだ先は見えませんが、1日も早く事態が収束し、思う存分コンサートを楽しめる日々が戻ることを願ってやみません。

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