こんにちは。そなてぃねです。
2020年2月22日に、大阪市のいずみホールで行われた「小糸恵 バッハ・オルガン作品演奏会」が、その翌月にNHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」で放送されました。
素敵なお人柄が伝わってくるインタビューや、客席からは見ることのできなかった小糸さんの表情や指の動きも見ることができ、感動を深めることができました。
放送の概要
クラシック倶楽部
小糸恵 バッハ・オルガン作品演奏会
〔放送された曲目〕
- プレリュードとフーガ ハ長調 BWV545
- 「心よりわれこがれ望む」BWV727
- プレリュードとフーガ ト短調 BWV535
- 「おお人よ、何字の大いなる罪を嘆け」BWV622
- プレリュード ハ短調 BWV546/1
- オブリガート・チェンバロとヴァイオリンのための6つのソナタ 第3番 BWV1016から第1楽章 アダージョ
(小糸恵編曲) - 「バビロンの流れのほとりに」BWV653
- トッカータとフーガ ニ短調 BWV538「ドリア調」
- 「神の時こそいと良き時」(哀悼行事)BWV106 から第1曲
2020年3月13日(金)5:00~
NHK-BSプレミアム
そなてぃね感激度 ★★★★★
▼演奏会を聴きに行った感想はこちら。
【演奏会の感想】小糸恵 バッハ・オルガン作品演奏会(2020年2月 いずみホール)▼この放送は、NHKオンデマンドで見ることができます(単品220円)。
参考 小糸恵 バッハ・オルガン作品演奏会NHKオンデマンド放送での選曲について
(放送画面を撮影、以下同じ)
「クラシック倶楽部」は、月曜日から金曜日まで毎朝5:00~5:55に、NHK-BSプレミアムで放送されている番組です。主に室内楽の演奏会を扱っています。
番組が55分なので、演奏会のすべてを放送することはできず、抜粋されることになります。
今回の公演では、どのような選曲になるだろうと思っていましたが、前半を抜粋にして、後半からアンコールまではすべて放送するという形になっていました。
これは、正しい決断だったように思います。
なぜなら、この日の小糸さんの演奏は、最後の「ドリア調」に向けて尻上がりに調子を上げていったからです。
序盤は慣れないオルガンに苦労しておられましたから、何曲か省略しなければならないなら、やはり前半からだったでしょう。
最初の「前奏曲とフーガ ハ長調」は、コンサートの幕開きですから、はずすことはできなかったと思います。
この曲では、特に足鍵盤に苦労しておられるようでした。足鍵盤は、楽器によって幅も深さも驚くほど違うので、低音の旋律で始まるこの曲は、かなり大変だったはずです。
指の動きも序盤はもつれる場面が見受けられましたが、これはもしかしたら、この日の朝から降り始めた雨の影響で、鍵盤が重くなっていたのかもしれません。
そういう状態から始まって、曲が進むごとに楽器と一体になっていく様子が、放送からも伝わってきました。
音楽の密度がどんどん濃くなっていく後半の流れは、やはり圧巻でした。この素晴らしい公演が、テレビ番組として記録されたことに感謝したいです。
そして、アンコールのカンタータを、ちゃんと放送に残してくれたことも、うれしかったです。この日が3年目の命日だった故・礒山雅さんへの追悼が込められた選曲でしたから。
ナレーションの書き起こし
番組の冒頭と中盤に、小糸恵さんの紹介がされていました。
プログラムには書かれていませんでしたが、生まれは1950年とのこと。演奏会のとき、69歳か70歳だったということですね。
ナレーションの内容も、参考に書き起こしておきます。
〔冒頭の解説〕
小糸恵さんは、東京藝術大学を卒業後、1974年にヨーロッパに渡り、以来スイスを拠点に活動してきました。
1992年にローザンヌ高等音楽院の教授に就任。その後、ローザンヌ・バッハ・フェスティバルの芸術監督を務めるなど、バッハの第一人者として世界的に高く評価されてきました。
プログラムは、オルガンのために編曲されたコラールをはじめ、小品から大作まで、変化に富んだ構成となっています。
晴れやかな前奏曲とフーガ ハ長調で始まり、最後は技巧を凝らしたトッカータとフーガ ニ短調で締めくくられます。
前半の3曲が流れた後、小糸さんの若き日の写真が映し出されました。
かっこいい写真ですね! この頃から、ちょっと日本人離れした雰囲気が感じられます。
〔中盤の解説〕
小糸恵さんは、ヨーロッパに渡った当初は、ロマン派や現代の作品も演奏していましたが、1985年ごろからバッハの奥深い世界に魅了され、のめり込んでいきました。
資料を集め、作曲当時の演奏スタイルを深く研究するとともに、独創的なイマジネーションを織り込んで、生命力に溢れたバッハ像を築き上げてきました。
小糸恵さんのインタビュー書き起こし
中盤の解説の後には、小糸さんのインタビューがありました。
自然体で素敵なお人柄がにじみ出ていました。目がキラキラしていて、笑顔がチャーミングで。
24歳で日本を離れて45年も経つからか、日本語の発音がフランス語のように聞こえるのも興味深かったです。
7年ぶりの帰国ということですから、久しぶりに口にする日本語だったのかもしれません(7年前は10年ぶりの帰国だったとか)。
インタビューを書き起こしました。バッハへの真摯な思いに、頭が下がります。
〔質問〕
ヨーロッパに渡ったのは、何歳の時、何年前ですか?
〔小糸恵〕
えー…(考え込む)長すぎて忘れましたけど(笑)。25歳くらいの頃でしたね。
それで、最初にコンセルヴァトワールで勉強して、それから日本に帰ろうと思ったのですが、色々オルガンを調べているうちに、残ってもっと探さなければだめだと思いまして。
歴史的なオルガンをやる場合は、イタリアに行ったり、フランスとか、スペインとか、オランダとか、それから特に北ドイツも南ドイツも、バッハの音楽には完全に必要だし。
そのために色々あちこち旅行して、その場の方に教えていただいて、オルガン製作者の人と一緒に旅行したり、研究したりいたしました。
でも、オルガン音楽をやる場合は、オルガンだけやっていたらだめだと思うんですよね。
バッハの例えば、その時、どういう他の音楽を作っていたか、ということですね。特にオーケストラとか合唱とか色んなものを、そういう作品も勉強しなきゃいけないし。
それで、今はバッハの他の楽器の勉強もしはじめて、私はピアノとかチェロとかも昔から弾いていたんですけど、今はオーボエ・ダモーレと、ヴィオラ・ダ・ガンバの勉強をしておりまして。
彼(バッハ)がどのような作り方をしたか、それを今、学んでいるところで、多分それがオルガンの色んな演奏法に影響できるようになればと思っております。
映像で楽しむオルガン
テレビで見ると、改めて、いずみホールのオルガンは本当に美しいなぁと思います。
NHKの撮影は、このオルガンの美しさを、存分に見せてくれるものでした。
客席からは見えない演奏者の表情や、手元のアップも見ることができました(足鍵盤もアップで見たかったです)。
たまに、クレーンやレールを使ったと思われる移動ショットもあって、どうやって撮影したのか興味深かったです。
アンコールの後、満場の拍手を受けた小糸さんが、アシスタントをねぎらい、そしてオルガンに手を掲げて、楽器への感謝を表した姿は、心を打つものがありました。
あとがき
この記事を書いている2020年3月14日現在、世界中が新型コロナウイルスのパンデミックで未曾有の困難に直面しています。
イベントの自粛要請が延期され、音楽業界も先が見えない状況が続いています。
そんな中、こうした質の高い音楽番組を放送し続けてくれるNHKの存在は、とても貴重だと思います。
心の潤いを失わないようにしながら、1日も早くコンサート会場がにぎわう日が戻ってくることを願ってやみません。
▼小糸恵さんの演奏会の感想はこちら。
【演奏会の感想】小糸恵 バッハ・オルガン作品演奏会(2020年2月 いずみホール)▼この放送は、NHKオンデマンドで見ることができます(単品220円)。
参考 小糸恵 バッハ・オルガン作品演奏会NHKオンデマンド