こんにちは。そなてぃねです。
大阪に転勤してきて、ひとつの大きな喜びは、関西のオーケストラを聴きに行けることです。
関西には5つのプロ・オーケストラがあります。
【関西の6つのプロ・オーケストラ】
- 大阪フィルハーモニー交響楽団
- 大阪交響楽団
- 京都市交響楽団
- 日本センチュリー交響楽団
- 関西フィルハーモニー管弦楽団
- 兵庫芸術文化センター管弦楽団
今回は日本センチュリー交響楽団の演奏会に行ってきました! 大阪を拠点に活動するオーケストラです。
初めて聴くオーケストラでしたが、とても素晴らしかったので、感想を書くことにしました。
演奏会の概要
【日本センチュリー交響楽団 第227回定期演奏会】
- チャイコフスキー作曲
幻想的序曲「ロメオとジュリエット」 - ショスタコーヴィチ作曲
チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 作品107 - シューマン作曲
交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」
指揮:クリストフ・ケーニッヒ
チェロ:ジャン・ワン
2018年7月5日(木)
ザ・シンフォニーホール
そなてぃね感激度 ★★★☆☆
日本センチュリー交響楽団とは
日本センチュリー交響楽団とはどんなオーケストラなのか、簡単にご紹介しましょう。
1989年に大阪府の運営するオーケストラとして発足しました。間もなく30周年。比較的新しい楽団ですね。
発足当時の名称は「大阪センチュリー交響楽団」でしたが、2011年に大坂府から独立して「日本センチュリー交響楽団」と改称しました。
2011年と言えば、橋下徹さんが大阪府知事だったころです。大坂府の財政が火の車ということで、文化関連事業への補助金が大幅に削減されました。
おそらくこのオーケストラも補助金を打ち切られ、かなり苦しい経験をしたのではないでしょうか。
その後、公益財団法人となり、地元に根ざした地道な活動を展開してきました。年間200回を超える公演を行っているそうです。
▼日本センチュリー交響楽団の引き締まった緻密なアンサンブルが聴けるCDです。
指揮者は日本初登場の若手クリストフ・ケーニッヒ
指揮者はドイツ・ドレスデン生まれの若手、クリストフ・ケーニッヒという人でした。日本初登場とのこと。
新しい指揮者との出会いは、いつもワクワクします。どんな才能と出会えるのだろう…! と、期待に胸が高まります。
ケーニッヒさんの紡ぎ出す音楽は、実に自然体で飾り気のないものでした。オーケストラの団員たちがみんな、のびのびと演奏しているのが伝わってきました。
この自然な感じが、シューマンの「ライン」にすごく合っていました。
最初に指揮棒を振り下ろした瞬間から、明るく広々としたライン川の光景が浮かぶようでした。こうした雰囲気は、指揮のテクニックで作り出されるものではなく、人間性そのものからにじみ出るものなのだと思います。
「ライン」の演奏後、大拍手の中、彼は英語でこんなことを話しました(声が小さくて聞き取れず、正確ではないかもしれませんが…)。
「日本語が話せないので、英語でごめんなさい。今回は私にとって日本で指揮する初めての機会でした。ですが子供のころ少年合唱団の一員として日本で歌ったことがあるのです。皆さんもよく知っている日本の歌も歌いましたよ」
と言って一節歌ってくれました(残念ながら何の曲か聞き取れませんでした…)。「これが小さなアンコールです」とも言っていました。
こんなところにも、彼の人柄が感じられ好感を抱きました。多くの聴衆が彼のファンになったのではないでしょうか。
チェロの名手ジャン・ワンは本当にすごかった
2曲目のショスタコーヴィチでソロを務めたのは、1968年中国生まれのジャン・ワンです。もう50歳になるんですね…
僕がジャン・ワンを知ったのは、子供のころに見たドキュメンタリーでした。何の番組だったか記憶が定かではありませんが、彼がまだ10歳のころの映像が流れたのです。
西安に生まれたジャン・ワンは4歳で母親と離れて、チェリストの父と2人で上海に移りました。貧しいながらも上海音楽学院に9歳で首席入学。10歳のころ、世界的バイオリニスト、アイザック・スターンに見出され渡米します。
ご紹介した映像は、その時に記録されたドキュメンタリー映画「中国のアイザック・スターン/毛沢東か らモーツァルトへ」の一部です。
この映像は少年時代の僕の心に深く刻まれました。音楽に対する真摯な姿に感じるものがあったのでしょう。
今回、初めて生でジャン・ワンの演奏に触れることができました。
そして、50歳になった今も音楽に対するひたむきな姿勢に変わりがないことに、深く感銘を受けました。
演奏は非の打ち所がないほどに素晴らしものでした。
ですが、それ以上に、彼のたたずまいに触れているだけで胸を打たれるものがあるのでした。
聴衆におじぎをするときの彼は、本当に優しい顔をします。鳴り止まない拍手に応えて彼がアンコールに演奏したのは、故郷中国の旋律でした。無伴奏で奏でられる調べは郷愁に満ちていて、僕たち日本人の心にも響くものがありました。
ジャン・ワンのCDもオススメです。
▼バッハの無伴奏チェロ組曲。ジャン・ワンの明るく美しい音で、大らかに奏でられています。
▼ピレシュ(ピアノ)、デュメイ(バイオリン)と共演したブラームスのピアノ三重奏曲。名手ふたりを相手に、ジャン・ワンの堂々とした低音が存在感を放っています。
あとがき
初めて聴いた日本センチュリー交響楽団は、素晴らしいオーケストラでした。音楽に対する誠実さが伝わってくる楽団だと思いました。
若い指揮者との出会い、そして名手ジャン・ワンを聴けたこと。とても贅沢な一夜でした。
やっぱり、オーケストラを生で聴く喜びは格別ですね。
僕は、会場に満ちる「波動」に、ただ身を委ねていると、ステージの上にいる70人以上の演奏家たちが紡ぎ出す音が共振し、光や影、喜びや悲しみが、言葉を超えた波動となって空間を満たしていくのを、全身で感じることができます。