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【演奏会の感想】反田恭平 ✕ ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別公演(2021年5月 奈良県大和郡山市)

反田恭平

こんにちは。そなてぃねです。

2021年5月28日、奈良県大和郡山市で行われた反田恭平プロデュース ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別公演を聴きに行きました。

若きカリスマ反田恭平(そりた・きょうへい)さんが同世代の凄腕プレイヤーたちとともに立ち上げた、まったく新しいコンセプトのオーケストラ。

5月20日にはオーケストラとしては異例の「株式会社」を設立、25日に行われたオンライン記者発表は大きな注目を集めました。

今後の拠点となる奈良での特別公演は、彼らの前途を照らし出すような、鮮やかな感動をもたらしてくれました。

演奏会の概要

【反田恭平プロデュース ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別公演】

  • ショパン作曲
    ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
  • チャイコフスキー作曲
    弦楽のためのセレナーデ 作品48

〈アンコール〉

  • ヨハン・シュトラウス二世、ヨーゼフ・シュトラウス作曲
    ピチカート・ポルカ

指揮・ピアノ 反田恭平

演奏 ジャパン・ナショナル・オーケストラ

 

2021年5月28日(金)18:30~
DMG MORI やまと郡山城ホール 大ホール

 

そなてぃね感激度 ★★★★☆

反田恭平さんとジャパン・ナショナル・オーケストラ

ジャパン・ナショナル・オーケストラ

反田恭平さんは1994年生まれの26歳。2016年にサントリーホールでデビュー・リサイタルを行って以来、最もチケットが取れないピアニストと呼ばれるほどの人気を獲得してきたピアニストです。

1994年生まれ。

2012年高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を含む4つの特別賞を受賞。

2014年チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学、ミハイル.ヴォスクレセンスキーに師事。

2015年イタリアで行われている「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。年末にはサンクト=ペテルブルクで行われている「ロシア国際音楽祭」に招待され、マリインスキー劇場管弦楽団とのコンチェルト及び、リサイタルを行いロシアデビューを飾る。

2016年のサントリーホール大ホールでのデビュー・リサイタルは完売、2000人の聴衆を魅了した。また、モスクワにて開催された「モーツァルト生誕260周年記念コンサート」には日本人代表として選抜され、モスクワ音楽院大ホールにてコンチェルトを演奏し、この模様はロシア国営放送で大きく取り上げられた。

デビューから半年後には3夜連続コンサートをすべて違うプログラムで行い、各日のコンサートの前半部分をライヴ録音し、その日のうちに持ち帰るというCD付プログラムも話題になる。RAI国立交響楽団とのアルバムをリリース。

2017年、佐渡裕指揮、東京シティフィル特別演奏会の全国12公、及び「全国ソロリサイタル・ツアー2017」13公演がすべて完売となる。また「Music Tomorrow 2017」にてNHK交響楽団との現代曲への挑戦し、M.ターネイジ作曲「ピアノ協奏曲」のアジア初演を果たす。

2018年には自身がプロデュースしたMLM(音楽を愛する青年たち)ダブルカルテットを創設。様々な室内楽の魅力を展開する。ミハイル・プレトニョフ指揮/ロシア・ナショナル管弦楽団との全国ツアーのソリストを務めた。2018/2019シーズンは夏、冬計25公演「全国ソロリサイタル」を開催し約30000人を動員。

ロシア・ナショナル管とのセッション録音を現地、ロシアで行い5枚目となるアルバムをリリース。5月務川慧悟との2台ピアノデュオ・リサイタルを初開催。

7月、MLMナショナル管弦楽団創設。室内楽をテーマとしたプログラムで全国ツアーを開催。9月、中国(重慶)デビュー。同月、自身初の合唱曲「遠ゆく青のうた」の作・編曲をし国内最大の野外フェスティバル「スタンドアップ!クラシック・フェスティバル2019(横浜)」にて世界初演。また、7月には新レーベル「NOVA Record」を共同事業で株式会社イープラスと設立。画期的なアイディアで聴衆にインパクトを与えた。

2019/2020シーズンにはワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団との日本ツアーから始まるが2020年に入りコンサートが延期は中止が続くコロナ禍の中、いち早く有料の配信を始めたり、自身でラジオを始めたりと率先してクラシック界のために動きはじめる。10月にはウィーン楽友協会でデビューを果たす。

現在、ソロだけの活動に留まらず、2台ピアノの共演、JNOの新たな体制づくりなど、新たなクラシックの可能性にも挑戦している。

F.ショパン国立音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)研究科修了。現在、同大学研究科(3期目)にてピオトル・パレチニに師事。第27回出光音楽賞受賞。第9回CDショップ大賞 クラシック賞受賞。

主な共演オーケストラ
ベルリン・ドイツ交響楽団、RAI国立交響楽団、マリインスキー劇場管弦楽団、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、ロシア・ナショナル管弦楽団等世界、NHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団といった国内の主要なオーケストラとも共演。デビューから僅か3年間強で共演した回数は100回以上となる。

主な出演メディア
「ららら♪クラシック」「クラシック音楽館」「クラシック倶楽部」NHK(E-テレ,BSプレミアム)、「題名のない音楽会」テレビ朝日(BS朝日) などで放送される音楽番組や、「news zero」「チカラウタ」日本テレビ、「情熱大陸」TBS(MBS)などにも出演。
また、2018年春からNHK総合にて放送されたTVアニメ「ピアノの森」では主人公の師、阿字野壮介役の吹き替え演奏を担当した。
公式サイトから引用)

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反田さんは、2018年にMLMダブルカルテット(弦楽器奏者8名との室内楽団)を結成、その後MLMナショナル管弦楽団に発展させ、それがジャパン・ナショナル・オーケストラの創設に繋がりました。

この楽団の大きな特徴は株式会社であること。通常「財団法人」という形態をとるオーケストラが多い中、「株式会社」の楽団組織は世界的にも珍しく、反田さんを含む18名の若き音楽家が「社員」として給与を得ながら、永続的に音楽活動に携われる形を目指しているようです。

5月25日に行われた記者発表の詳細を伝える記事によると、パートーナーとして資本協力するのは、奈良市を拠点とする世界的な工作機械メーカー、DMG森精機株式会社です。

今後、練習の本拠地を奈良市に構え、公演の拠点には大和郡山市のDMG MORI やまと郡山城ホール(同社がネーミングライツを持つ)が使われます。

メンバーの顔ぶれを見ると、全員がソリストとして通用する凄腕のプレイヤーであることに驚きます。年齢層は20~30歳くらい。国際的なコンクールで入賞した実力者が多数含まれています。

ジャパン・ナショナル・オーケストラ メンバー

多彩なニュアンス 語りかけるようなショパン

プログラムの前半は、ショパンのピアノ協奏曲 第1番。反田さんが指揮をしながらピアノのソロを演奏しました。

反田さんの演奏は、緩急がしなやかで、即興性が豊かなのが大きな特徴だと思います。歌い方のニュアンスが多彩で、まるで語りかけてくるようです。

正確にきちんと弾くというより、感性の赴くままに自由に揺れる演奏は、好き嫌いが分かれるかもしれません。正直に言うと、僕は反田さんのショパンがあまり好みではありません。

けれど、随所に反田さんにしか表現できない特別な瞬間があって、ハッとさせられました。

例えば、第2楽章のラスト2分くらいの場面。オーケストラの音が消えて、ピアノの高い音がはらはらと降りてくるところなど、繊細なガラス細工がスローモーションで砕け散っていくような、聴いたことのない美しさでした。

ピアノを彩る弦楽オーケストラの妙

ショパンのピアノ協奏曲 第1番のオーケストラ部分は、もともと木管や金管を含むフル編成のために書かれていますが、今回は弦楽合奏伴奏版で演奏されました。

この日のジャパン・ナショナル・オーケストラの編成は、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがそれぞれ6名ずつ、ヴィオラが5名、チェロが3名、コントラバスが2名。

反田さんが自由にテンポを揺らしながら即興的な独奏を繰り広げる中、メンバーはその呼吸を完璧にとらえて、素晴らしい伴奏をつけていました。

指揮者なしで、これだけ精密なアンサンブルができるのは、メンバー全員が反田さんのやりたいことを十分に理解し、尊重しているからでしょう。

反田さんが投げかける細やかなニュアンスを大切に拾い上げ、敏感に反応して、彫りの深い表現で応えていく楽団員たちの姿に、胸が熱くなりました。

感動的だったチャイコフスキー

反田恭平?ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別公演@やまと郡山城ホール

プログラムの後半は、チャイコフスキーの傑作、弦楽セレナーデです。

ここで注目すべきは、指揮者としての反田さんです。実に堂々たる指揮ぶりで、感動的な演奏を引き出していました。

どの楽章も秀逸でしたが、僕は中でも第3楽章の「エレジー」に深い感銘を受けました。

ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラと移っていく旋律の美しいこと…!深い呼吸で歌われる旋律は、長い弧を描いて繋がり合っていきます。

そして最弱音で奏でられた再現部は、会場全体が息をするのも忘れてしまうほどの、繊細な響きでした。

指揮者としての反田恭平

当然のことながら、反田さんは本職の指揮者ではありません。少しは勉強しているのかもしれませんが、本格的に指揮科で学んだわけではないでしょうし、経験もほとんどないはずです。

にもかかわらず、あの堂々たる指揮姿…! ふてぶてしいほどの立ち居振る舞いに、感心してしまいました。

反田さんの指揮のポイントも「緩急」だったように思います。「力の抜きどころ」を捉えるセンスに長けているのでしょう。脱力が上手いので、「ここぞ!」という部分がより際立って聴こえてきます。その落差が、起伏に飛んだ音楽を生み出していくようでした。

弱冠26歳の反田さんが、これだけのびのびと指揮台に立てるのは、オーケストラのメンバーが同年代の仲間だから、というのが大きいのだと思います。

カリスマ性のある反田さんは、メンバーたちの中心に置かれた「磁石」のような存在。支配するのではなく、メンバーを全面的に信頼して「着地点」だけを示しているように見えました。

そんな彼らの関係性が、他の伝統的なオーケストラとは一味違う、瑞々しい演奏を生み出しているように感じました。

メンバーひとりひとりが、反田さんから発せられる「磁力」を感じ取りながら、自由に羽ばたき、思う存分に歌う。それが呼応しあって、ステージ全体が解き放たれたように躍動するのです。

独自の道を歩んでほしい若き楽団

従来のオーケストラのあり方としては、実績のある指揮者が常任のポジションに就いて、オーケストラを鍛え上げ、方向性を決めていくのが王道だと思います。

しかしジャパン・ナショナル・オーケストラの場合、そういった従来のやり方に縛られず、自由な関係性を大切に、独自の道を歩んでいってほしいです。

彼らほどの実力者であれば、自由な関係性に甘んじて、練習がおろそかになったり、アンサンブルの精度が落ちるような心配はなさそうです。

誰かが管理しなくても、互いに刺激を与えあう信頼感、ライバル同士の緊張感が、自然に彼らの音楽を高めていくでしょう。

奈良の街の景色を変えていく

奈良の町並み

ジャパン・ナショナル・オーケストラのメンバーは、今後国際的に活躍していくであろう日本のクラシック音楽界のホープたちです。彼らのような人材は東京に集中し、その多くは海外に出ていきます。

そんな若き才能たちが、本拠地に奈良を選んでくれたことが、僕はとてもうれしい。

記者発表で、ある記者が「奈良を本拠地とするのは、東京をベースとするアーティストたちが多い中で不便ではないか」と質問したそうです。

それに対して、反田さんはこう答えたといいます。

本拠地を持てるだけで本当に幸せだと思う。まったく苦にならない。そして、奈良市内に楽器を持った若者たちが増え、街の景色が変わってゆくことを夢見ている

反田恭平さんは、あの若さで、自分自身のキャリアよりも、音楽文化の向上に目を向けている。仲間が安心して音楽に取り組める環境を作り、教育や地域文化にまで貢献しようとしている。

これはすごいことです。彼は「ピアニスト」という器に収まるタイプではなく、もっと大きなビジョンを持った「プロデューサー」なのだと思います。

彼と彼の仲間たちが、奈良の街をどのように変えていってくれるのか。今からとても楽しみです。

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