インフルエンザは、高熱、寒気、頭痛・関節痛・筋肉痛など全身症状が現れる感染症です。
この記事では、インフルエンザの症状・治療法・予防法などの基本的な知識をお伝えします。
インフルエンザ関連の記事は次のような構成になっています。
インフルエンザとは
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによる感染症です。インフルエンザウイルスには、以下のようにいくつかの「型」があります。
インフルエンザA型
「季節性インフルエンザ」とも呼ばれます。38度以上の高熱が出やすいタイプです。人によっては40度前後まで上がる方もいますので注意が必要です。
香港型やソ連型などの種類があり、日本で流行しやすいのは主に香港型です。
感染するにしたがって変異していく性質があります。そのため、既存のワクチンが効かなくなって、パンデミック(爆発的流行)を引き起こすことがあります。近年では2009年に世界的なパンデミックが起こりました。
インフルエンザB型
熱は38℃程度と、あまり高くなりません。熱が上がりにくいため、ただの風邪だろうと勘違いして外に出て活動してしまい、知らないうちに感染を広めてしまうのが難点です。
高熱が出ない代わりに、腹痛、嘔吐、下痢など消化器系の症状が出ることが多く、しかも長引きます。
感染力は強いものの、変異しにくいためA型ほどの流行は起こらないとされています。
インフルエンザC型
鼻水など風邪と似た症状を起こします。幼児期にかかりやすく、一度かかって免疫ができると、その後は一生かからないとされています。そのため、流行することはまずありません。
鳥インフルエンザ
A型の一種に分類されますが、上記のA型とは性質がまったく異なります。
水鳥の腸管に存在しているインフルエンザウイルスが、野鳥を経由して、飼育されている鶏やアヒル、ウズラや七面鳥などの家畜に感染したものです。
一般的にはヒトへの感染はしないと考えられていましたが、2012年のWHOの発表によると、アジア地域でヒトへの感染が報告されています。これは、感染した鳥を家の中で飼育していたり、大量に死んだ鳥に触れるなどの、濃厚な接触が原因とされています。
1年に2回以上かかることがある
インフルエンザに一度かかって完治した後に、再びかかることがあります。例えば、A型に感染した後に、B型に感染するということが起きます。また、まれにA型とB型に同時にかかることもあります。
潜伏期間
潜伏期間は2日前後、新型では1~7日と言われます。体内に侵入したウイルスは、気道や肺に付着して20分ほどで細胞内に到達。その後、ウイルスの増殖はかなり速く、侵入した1つのウイルスが8時間後には100個、16時間後には1万個、24時間後には100万個にまで増えていきます。このウイルス増殖の速さがインフルエンザの流行を生むといわれ、近隣にあっという間に感染が拡大し、1ヶ月ほどで収束します。
インフルエンザウイルスの感染経路
感染経路としては、主に次のふたつが挙げられます。
飛沫感染
くしゃみや咳によって病原体が飛散し、周囲の人の粘膜に付着する感染経路です。咳エチケット(マスクの着用など)の徹底が、予防のためには重要となります。
接触感染
皮膚、粘膜などの物理的な接触によって感染するものです。誰かがウイルスのついた手で触れた手すりを触り、その手で目などの粘膜をこするといった間接的な接触でも感染します。
家庭や会社において1人が感染してしまうと、室内に閉じ込められたウイルスを次々に他の人たちが吸い込んでしまい、あっという間に感染が拡大してしまいます。
感染させる期間
感染力は発熱してから3日目にピークを迎えます。その後およそ1週間は感染力が持続します。完全に咳が止まるまではマスクを着用するようにしましょう。
実は発症する前、潜伏期間中も感染させる危険があります。潜伏期間中の感染力は、発症後に比べると高くはありませんが、自覚症状がないため感染に気付かず、人と接触してしまうことは避けられないのが現状です。
インフルエンザの流行時期
インフルエンザは毎年11月~3月にかけて流行します。この期間の中でも、1月下旬から2月上旬にかけてが最もインフルエンザを発症する患者が多く、流行のピークとなります。
この時期は、1年を通じて最も気温が低く、湿度も低いため、鼻やのどの粘膜に侵入しやすくなり、流行すると考えられています。
インフルエンザ脳症のリスク
インフルエンザにかかった患者の中に、合併症としてインフルエンザ脳症を発症する人が毎年100人ほどいます。インフルエンザ脳症にかかると、その30%は命を落とし、25%には重い後遺症が残ります。詳しくは、こちら↓をご覧ください。
インフルエンザ脳症とは? 原因・症状・治療法は?インフルエンザ脳症による異常行動・後遺症の実例(9つの体験談)インフルエンザの症状
インフルエンザに感染すると、さまざまな症状があらわれます。個人の体質や免疫力によって、どういった症状が出るかは人それぞれですが、ここでは一般的にみられる症状を挙げます。
【インフルエンザの症状】
- 38~40度前後の高熱
- 急に体内に寒さを感じる寒気や悪寒
- 高熱に伴ったガンガンと響く頭痛
- だらだらと出る鼻水
- だるさを感じる倦怠感
- 消化器系の胃痛や腹痛、下痢や吐き気・嘔吐
- 筋肉痛
- 関節痛
- 腰痛
- のどの痛みと咳、気管支炎、肺炎
- 脳炎、脳症の合併症
インフルエンザの治療法
インフルエンザには特効薬がある
インフルエンザが疑われる症状が現れたら、早急に病院で医師の診断を受けて、インフルエンザの特効薬を処方してもらうのが効果的です。
一般的にウイルスによる感染症には特効薬がないケースが多いのですが、インフルエンザには特効薬があります。その点、一般的な風邪よりもむしろ、スパッと短期間で完治します。
インフルエンザの特効薬として知られているのが、以下のような薬です。
【インフルエンザの特効薬】
- リレンザ(A型とB型に効く吸入薬)
- タミフル(主にA型に効く)
- イナビル(A型とB型に効く吸入薬)
- ラピアクタ(A型とB型に効く点滴薬)
これらの薬を服用しながら、しっかりと身体を休めます。
【関連記事】 インフルエンザ治療薬によって転落や飛び降りといった異常行動が起こるという事例が報告されています。
インフルエンザ治療薬(リレンザ・タミフル)による異常行動のリスク(実例と対処法)解熱剤はできるだけ使わない
できるだけ解熱剤は使わない方がいいと言われています。高温時の方が免疫機能が高まり、身体が自らの力でウイルスを撃退することで、しっかりと免疫力が獲得されるからです。
ですが、40℃を超える高熱で朦朧とするような場合には解熱剤を使用します。
解熱剤を使用する際に注意しなければならないのは、アスピリン系の解熱剤は使ってはならないということです。
特に子供は、アスピリン系の解熱剤によって、まれに「ライ症候群」という原因不明の急性脳症を起こすケースが報告されているためです。
アスピリン系の解熱剤としては、「バファリン」「ケロリン」などの商品があげられます。「バファリン」は種類によって主成分が異なりますので、使えるものもあります。薬剤師に相談するなど、慎重に選ぶようにしてください。
使用可能なのは、アセトアミノフェンを主成分とする解熱剤です。「カロナール」「タイレノール」などが、これに相当します。
また、イブプロフェンを主成分とする解熱剤も使用可能です。「イブ」シリーズなどが、これに相当します。
こまめな水分補給を
高熱にともない、大量の汗をかくことになります。衣類を頻繁に交換するとともに、脱水症状にならないように、こまめな水分補給も忘れてはなりません。経口補水液OS1が、余計な糖分などが含まれておらず、身体への吸収が早いのでオススメです。
治療中の食べ物
インフルエンザにかかると食欲が落ちてしまいます。喉の痛みにも優しく、胃腸に負担のかからない食べ物で、しっかり栄養補給するようにしたいものです。
10月になったらワクチンの接種を
インフルエンザの予防は、第一にワクチンの接種です。10月以降、医療機関で任意のワクチン接種が始まります。
年によっては、ワクチンが不足して、流行時期までに接種できない、ということも起こり得ますので、早めの接種を心がけてください。
インフルエンザワクチンは、年齢によって接種の量と回数が異なります。
【インフルエンザ・ワクチンの摂取回数】
- 生後6カ月~3歳未満・・・0.25mL×2回接種
- 3歳~13歳未満・・・0.5mL×2回接種
- 13歳以上・・・0.5mL×1回接種
1回目の接種時に12歳で2回目の接種時に13歳になる場合、「13歳未満」と考えて2回目の接種を行うことが可能です。
インフルエンザワクチンは任意接種なので、料金は全額自己負担です。価格は医療機関によって異なりますが、相場は以下のような価格設定が多いようです。
・子供(2回接種) 計6000~7000円程度(2回目が安くなる病院が多い)
・大人(1回接種) 3500円程度
・高齢者(1回接種) 無料~2000円程度(自治体からの助成があるため)
インフルエンザの予防法
ワクチンを打った上で、インフルエンザにかからないために、以下のような予防法を徹底しておくことが大切です。
【インフルエンザの予防法】
- 手洗い、うがいをまめにおこなう
- マスクを着用する
- 湿度を50~60%に高める
- 食事や睡眠をしっかりとって免疫力を高める
また、リレンザやタミフルなど、インフルエンザの特効薬を「予防薬」として服用するケースもあります。これについては、医師に相談するようにしてください。
喘息の持病がある人などは、インフルエンザにかかってしまうと、重大な発作を起こす危険があるので、予防的措置として服用が認められる場合があります。
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