こんにちは。そなてぃねです。
2020年2月に大阪のザ・フェニックスホールで行われた、若手ヴァイオリニスト前田妃奈(ひな)さんのリサイタルを聴きに行きました。
去年の日本音楽コンクールで第2位に入賞した高校2年生。
失敗を恐れず踏み込んで表現する姿勢に、将来の可能性を感じました。
演奏会の概要
前田妃奈ヴァイオリン・リサイタル
(第79回 朝の光のクラシック)
- サン・サーンス作曲/イザイ編曲
ワルツ形式の練習曲によるカプリス 作品52-6 - パガニーニ作曲
24のカプリス 作品1 第11番 ハ長調 - イザイ作曲
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品27-3「バラード」 - ショパン作曲
スケルツォ 第4番 ホ長調 作品54
(ピアノ独奏) - ブラームス作曲
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100
〈アンコール〉
- クライスラー作曲
中国の太鼓 - アイルランド民謡/クライスラー編曲
ロンドンデリーの歌
ヴァイオリン 前田妃奈
ピアノ 太田糸音
2020年2月9日(日)10:30~
ザ・フェニックスホール(大阪市)
そなてぃね感激度 ★★★☆☆
恐れず踏み込んで表現する勇気
前田さんの演奏を聴いて感心したのは、失敗を恐れず踏み込んで表現しようとする勇気です。
思い切りのよさ、というか。決して小さくまとまらず、大きな何かを届けようとする姿勢を感じました。
最初の曲では、細かいキズもありましたが、そこで安全運転にならず、大きな表現を貫いたのは立派でした。
高校生にしてこの度胸は天性のものだと思います。
自然なグルーヴを持っていて、サン・サーンスの洒脱な歌いまわしにもセンスを感じました。
イザイの名曲も、楽器のよく鳴った、聴き応えのあるいい演奏でした。
メインのブラームスでは、潤いのある音色で落ち着いた表現。こういう大人の曲も演奏できるんだ… と、おじさんは感心しました。
アンコール1曲目の「中国の太鼓」の鮮やかなテクニック、最後の「ロンドンデリーの歌」で聴かせた哀愁。
様々な引き出しを存分に聴かせてくれた、楽しいリサイタルでした。
ピアノの太田糸音さん
ピアノの太田糸音(しおん)さんは、今年20歳になる東京音楽大学の3年生。
十代の早い時期から様々なコンクールで受賞していて、僕も名前は知っていました。
今回は、後輩の前田さんを支える「お姉さん」の役割に徹していたのか、あまり主張しない感じでした。
僕には、それがちょっと物足りなかったです。
「伴奏」ではなく「デュオ」の関係性で、後輩をもっと触発するようなシーンがあってもよかったと思います。
世界に飛び出していってほしい
前田さんの魅力が伝わってくる動画を発見しました。
中学3年生のころに出演したテレビ番組「ゆめキラ☆豊中っ子」(地元のケーブルテレビ)。
所属していたスーパーキッズ・オーケストラ(芸術監督 佐渡裕)のことや、将来の夢を語る姿が収められています。
印象的だったのは、小学校5年生のころのインタビューで、将来の夢を語るシーン。
「バイオリンも弾けて、他の楽器もちょっとくらい弾けて、勉強もできて、歌も歌えたり、絵が描けたり、色んな国の言葉がしゃべれるみたいな、ミッキーマウスのようなエンターテイナーになりたいです」
なんて素敵な夢!!やりたいことが溢れている。すごく健康的。のびのびしていて、屈託がなくて。
両親の育て方、教師たちの指導、スーパーキッズ・オーケストラでの仲間との関係などが、彼女のよさをいい形で開花させたのでしょうね。
中学3年生のインタビューでは、こんなふうに答えています。
「将来の夢は、お客さんに心から伝えられる演奏ができるバイオリニスト。ソリストにもなりたいし、大きな楽団のコンサートマスターもいいなぁと思いながら、でも室内楽も楽しいなぁと思って… そういうオールマイティーに活躍できる演奏家になりたいです」
これから成長していく過程で、夢は具体的な目標となり、より現実的な方向に絞られていくことでしょう。
ですが、「ミッキーマウスのようになりたい」と楽しそうに夢見ていた小学生のころの感性を、心のどこかに置いておいてもらいたいなぁと思います。
今回ステージで見た前田さんは、高校2年生。アンコールの前に聴衆に向かって少しスピーチした姿はまだあどけなく、天然のユーモアがあって、とても微笑ましいものでした。
あの笑顔を見たら、一発でファンになっちゃいますね。
近い将来、彼女は世界に飛び出していくことでしょう。あの明るいオーラがあれば、どこにいっても愛されること間違いなし。
小さくまとまらず、より大きく羽ばたいてほしいです。
あとがき
とても清々しいリサイタルでした。
高校2年生の今しかできない演奏に立ち会うことができました。
これから前田妃奈さんが、どんなふうに成長していくのか、楽しみに見守りたいと思います。