こんにちは。そなてぃねです。
2020年9月12日、兵庫県立芸術文化センターで行われた佐渡裕指揮、兵庫芸術文化センター管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲を聴きに行きました。
国内外の若い演奏家たちで構成され、アカデミーとしての役割も果たしてきたこの楽団。新型コロナウイルスの影響で、他のオーケストラとは違う苦労があったと思います。
そんな中で行われた特別プログラム「PAC with ベートーヴェン!」シリーズの第1弾。若き日に書かれたふたつの交響曲を楽しみました。
演奏会の概要
【PAC with ベートーヴェン!第1回】
- ベートーヴェン作曲
交響曲 第1番 ハ長調 作品21 - ベートーヴェン作曲
交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
指揮 佐渡裕
管弦楽 兵庫芸術文化センター管弦楽団
2020年9月12日(土)14:00~
兵庫県立芸術文化センター 大ホール
そなてぃね感激度 ★★★☆☆
若々しく瑞々しい演奏
兵庫芸術文化センター管弦楽団は、20~30代の演奏家で構成された若いオーケストラです。
肌のピチピチしたメンバーの顔を見ながら聴いているからかもしれませんが、演奏がとにかく若々しく瑞々しい。
一人ひとりから音楽できる喜びや「表現したい!」という意気込みが溢れてくる。
熟練のオーケストラだと大人の余裕のようなもので包まれているエネルギーが、若い彼らからはストレートに伝わってくるのです。
佐渡裕さんの懐の深さ
そんな若者たちを懐の深い指揮で導くのが佐渡裕さん。
僕は佐渡さんの音楽が特別に好きなわけではありませんが、若者たちを自由に羽ばたかせながらも大きな流れを作り出す手腕はさすがだと思いました。
いい感じで力が抜けていて、おおらかでありながら、要所に揺るぎない重心がある。
音楽の捉え方が大きく、聴いていると呼吸が深くなって視界が広がる感じがしました。
ベートーヴェンはやっぱりすごい!
それにしても、やっぱりベートーヴェンはすごいなぁ…
交響曲 第1番は30歳の作品。生まれ故郷のボンからウィーンに移り住んで8年目。満を持して世に問うた最初の交響曲です。
キラキラ光る水面から活きのいい魚たちがピチピチと飛び跳ねてくるような瑞々しい音楽。
交響曲 第3番「英雄」は34歳の作品。随所で鳴り響く不協和音は、200年以上経った現代の僕たちにも衝撃的に突き刺さります。
兵庫県立芸術文化センターのドライな響き
兵庫県立芸術文化センター大ホールの響きは、比較的ドライに感じられました。残響が短めで、各パートの音が明瞭に聴こえてきます。
このオーケストラの音は、まだ熟していない果実のような、開く前の蕾(つぼみ)のような、やや硬い響きがするので、ドライな音響とよく合っていました。
年末には「第9」にトライするのか
プログラム・ノートの最後のページには今後の演奏会の予定が書かれていて、その中に次のような記述がありました。
- 12月11日(金)
開館15周年記念演奏会
ベートーヴェン:交響曲 第9番より第4楽章ほか - 12月12日(土)13日(日)
PAC with ベートーヴェン第2回
ベートーヴェン:交響曲 第9番
新型コロナによって大きな打撃を受けたオーケストラと合唱の世界。彼らにとって2020年の年末に「第9」を演奏できるかどうかは、大きな課題となっています。
国内外でクラスター感染を引き起こしてしまった合唱には、今も科学的根拠に基づいた安全基準がなく、活動再開は遅れています。
そんな逆境の中、兵庫芸術文化センター管弦楽団は、年末の「第9」にトライしようとしているのです。
新型コロナでズタズタになってしまった音楽文化を立て直す。苦難を乗り越え「歓喜」を奏でる…
彼らの思いが、どうか実現しますように。
あとがき
6月20日に日本センチュリー交響楽団が全国に先駆けてフルオーケストラでの客入れ公演を再開してから約3ヶ月。
科学的根拠に基づくオーケストラ演奏の新たなガイドラインが発表され、ステージ上の演奏者の数は徐々に増えてきました。
観客が声を出さないイベントでは、集客の制限も撤廃されることが決まりました。
大編成の楽曲を、満席の客席で楽しめる日が、遠くない将来に戻ってくることを祈ります。
▼ベートーヴェンの「英雄」と言えば、先日聴きに行った日本テレマン協会の演奏が抜群に面白かったです。
2020年8月24日 日本テレマン協会 第268回定期 コロナの制限を逆手にとり「音の虹」を架けた名演奏