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ジュネーブ国際音楽コンクールで優勝!作曲家・高木日向子さんのプロフィール(経歴)と作品の魅力

作曲家・高木日向子 ジュネーブ国際音楽コンクール

こんにちは。そなてぃねです。

2019年11月8日に行われたジュネーブ国際音楽コンクールの作曲部門で、高木日向子(たかぎ・ひなこ)さんが見事優勝しました。

歴史あるコンクールでの素晴らしい受賞、本当におめでとうございます!

この記事では、高木日向子さんのプロフィールと作品の魅力をお伝えします。

高木日向子作曲「L’instant(ランスタン)」の魅力

▼まずは何も言わずに、本選で演奏された高木日向子さんの作品「L’instant(ランスタン)」を聴いてみてください。

現代音楽は「難解でとっつきにくい」と思われがちかもしれませんが、この作品はとてもナチュラルで、心にすっと入ってきます。

コンクールの作曲部門に出される作品には、特殊奏法や実験的な試みばかりが耳について、うんざりするものも多いのですが、彼女の作品からは純度の高い「音楽」が聴こえてきます。

素晴らしいクオリティの演奏者たち

演奏者は以下の通り。

オーボエ:アーネスト・ロンバウト

指揮:ピエール・ブルーズ

管弦楽:ルーマニック・モデルン・アンサンブル

ソロを吹いたロンバウト(1959~)はオランダ出身。美しい音と繊細な歌心の持ち主で、高木さんの作品にぴったりのオーボエ奏者だと思いました。

指揮のブルーズ(1977~)とルーマニック・モデルン・アンサンブルの団員たちも素晴らしいクオリティで、心から作品に共感して演奏しているのが、画面からも伝わってきます。

演奏後にステージに上がった高木さんの表情からは、演奏者たちへの感謝があふれていて、感動的でした。

高島野十郎「蝋燭」からのインスピレーション

タイトルの「L’instant(ランスタン)」は、フランス語で「瞬間」を意味する言葉。

新聞記事によると「音が減衰と上昇を繰り返す、その境目の瞬間を切り取りたい」という意図で作曲されたそうです。

そう言われて聴いてみると、音の減衰と上昇が「呼吸」のように感じられてきます。

深い呼吸、浅い呼吸、長い呼吸、短い呼吸…… 作品全体が息をしているよう。

高木さんの作品の魅力は、この「自然さ」なのだと思います。

画家・高島野十郎(1890~1975)の『蝋燭(ろうそく)』という作品からインスピレーションを受けたというのも納得できます。

目を閉じて聴いてみると、蝋燭の炎のゆらめきが、まぶたの裏に浮かんでくるようです。

高島野十郎「蝋燭」

高島野十郎作『蝋燭(ろうそく)』

高木日向子さんのプロフィール

作曲家の高木日向子さんは、兵庫県尼崎市の出身。2019年11月の新聞記事に「30歳」と書かれているので、おそらく1989年生まれだと思われます。

兵庫県立西宮高校を卒業

出身高校は、兵庫県立西宮高校。「県西(けんにし)」と呼ばれ、地元ではよく知られています。

この高校には、普通科の他に「音楽科」が1クラスあります。生徒の半数ほどはピアノ、残りの半数は他の楽器や声楽を専攻します。

音楽史や音楽理論などの授業が充実しているのに加え、楽器ごとに優秀な先生がそろっていて、個人レッスンを受けることができ、卒業生には多くの優秀な音楽家がいます。

大阪音楽大学を卒業

高校を卒業後は、大阪音楽大学に進学。

大阪音楽大学は、東京芸術大学や桐朋学園大学、東京音楽大学などに比べると、全国的な知名度は低いかもしれませんが、関西では京都市立芸術大学と並んで有名です。

学内に「ザ・カレッジ・オペラハウス」という劇場を備えていることからも分かるように、学生に実践の場を与えることを重視しています。

作曲家・久保洋子さんに師事

高木日向子さんが大阪音楽大学で師事したのは、久保洋子教授です。

久保さんはパリで作曲を学び、世界各国の現代音楽祭や音楽コンクールの審査員に招かれるなど、国際的に活躍されている方です。

高木日向子さんの作品に、フランス音楽のような繊細さが感じられるのは、恩師の影響があるのかもしれませんね。

▼参考に久保洋子さんの作品の動画を。日本的な要素が織り込まれた幽玄な調べ。歌っているのは久保さんご本人です。

2017年の日本音楽コンクールで第3位

高木日向子さんにとって最初の大きな受賞は、第86回 日本音楽コンクール(2017)での第3位入賞です。

このコンクールは、国内で最も権威のあるものとされ、数々の作曲家がここでの受賞をきっかけに第一線で活躍するようになりました。

作曲部門は、オーケストラ作品と室内楽作品が、毎年交互に課題になりますが、高木さんの年は室内楽でした。

どんな作品だったのか、気になりますね。

現在は大阪音楽大学の助手

現在は、母校・大阪音楽大学作曲科の助手を務めています。

助手の仕事については詳しく知りませんが、学生たちが授業についていけるようサポートする役割だと思われます。

ジュネーブ国際音楽コンクールの価値

ジュネーブ国際音楽コンクールは1939年にスタート。世界で最も歴史あるコンクールのひとつです。

かつては5~8部門で行われていましたが、2000年代に入ってからは1~2部門に絞られ、毎年異なる部門が組まれます。2019年は、作曲部門と打楽器部門が行われました。

過去の受賞者は錚々たる顔ぶれ

過去の受賞者には錚々たる顔ぶれが並びます。著名な人をリストアップしてみます。
(年号のみは1位)

〔ピアノ部門〕

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(1939)

ゲオルク・ショルティ(1942)

マルタ・アルゲリッチ(1957)

マウリツィオ・ポリーニ(1957と1958、どちらも2位)

宮沢明子(1963、2位)

萩原麻未(2010)

 

〔ヴァイオリン部門〕

ジャン・ジャック・カントロフ(1965、2位)

 

(ヴィオラ部門〕

今井信子(1968、2位)

店村眞積(1977、2位)

タベア・ツィンマーマン(1982)

川本嘉子(1992、2位)

清水直子(1996、2位)

 

〔フルート部門〕

オーレル・ニコレ(1942)

エマニュエル・パユ(1992)

 

〔オーボエ部門〕

ハインツ・ホリガー(1959)

 

〔ホルン部門〕

ラデク・バボラーク(1993、2位)

 

〔声楽部門〕

松本美和子(1967、2位)

 

〔打楽器部門〕

吉原すみれ(1972)

 

〔指揮部門〕

アラン・ギルバート(1994)

 

〔作曲部門〕

薮田翔一(2015)

 

すごい顔ぶれですよね。

このコンクールの特徴は、「1位なしの2位」という審査結果が多いこと。

あのポリーニが、2年連続で2位(1957年はアルゲリッチに破れ、1958年は1位なしの2位)という結果が、審査の厳しさを物語っています。

日本人の受賞者も多く、特にヴィオラ部門にはずらりと名手が並んでいます。

作曲部門は歴史が浅く、2013年、2015年、2017年と行われ、2019年は4回目の開催でした。2015年には、薮田翔一さんが優勝。彼はその後、目覚ましい活躍を続けています。

高木日向子さんの他の作品

高木日向子さんのyoutubeチャンネルに、3作品がアップされています。僕の寸評とともにご紹介していきます。

Revue!

マリンバとピアノのための作品。

高木日向子作曲「Revue!」

 

マリンバ:大森香奈

ピアノ:白石麻奈美

 

2019年5月25日 トントレフ・ヒコ(大阪)

「現代音楽作品の夕べ」にて

Revue(レヴュー)とは、宝塚歌劇などでおなじみの、曲想が目まぐるしく変化する大衆娯楽演劇の形式。

その意味の通り、様々な要素が現れるエンターテインメント性の高い作品になっています。

マリンバの大森香奈さんが暗譜で演奏しているのが驚き!しっかり体に入っているから、複雑なリズムも自然にあふれ出るように奏でられていて爽快です。

Mermaid for Piano solo

ピアノ・ソロのための「マーメイド(人魚)」という作品。

高木日向子作曲「Mermaid for Piano solo」

 

ピアノ:白石麻奈美

 

2019年1月27日 大阪

「リベラルアーツへの挑戦」にて

この作品は、「千住博 & チームラボ コラボレーション展「水」」という展覧会にインスピレーションを受けて書かれたそうです。

僕もこの展覧会に行きましたが、暗く冷たい海の底から青い光が発光しているような印象的な世界でした。

高木さんはその展示から、アンデルセン童話の「マーメイド」をイメージして、人魚が水の中で泡となって消えていく様を描きました。

海の底から聴こえてくるような神秘的な響き。

僕には、ラヴェル作曲「オンディーヌ」の延長線上にある作品のように聴こえました。

Station rhapsody in Kansai

関西主要鉄道の発着メロディーをモチーフに作曲されたラプソディ。

高木日向子作曲「Station rhapsody in Kansai」

 

フルート:藤田沙織

ピアノ:高木日向子

関西の人にはおなじみの旋律が散りばめられた楽しい作品です。

ピアノを弾いているのは高木さんご本人です。

あとがき

30歳という年齢は、現代作曲家としては、まだ若手。今回のジュネーブ国際音楽コンクールでの優勝は、スタート地点に過ぎません。

これから前途洋々かと言えば、そんな甘い世界ではないと思います。

でも、僕は高木日向子さんが、これからも彼女らしい純粋な音楽を作曲し続けてくれると信じます。

高木さん、自分の信じる道を、自分のペースで歩んでいってください!

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