こんにちは。そなてぃねです。
僕の独断と偏見で、おすすめのクラシック音楽をご紹介するシリーズ。
今日は、悲しいときに聴いてほしい「切なく悲しみに溢れたクラシックの名曲」をご紹介します。
ラフマニノフ作曲 ヴォカリーズ
最初にご紹介するのは、ロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)の名曲です。
ラフマニノフと言えば、思わず涙腺が決壊してしまう感動的なメロディ。
今回ご紹介する「ヴォカリーズ」も、胸に迫る切ない旋律が魅力です。もともとは歌詞のない声楽曲として書かれましたが、様々な形にアレンジされて親しまれています。
▼最初にご紹介するのは、フランスの歌姫、ナタリー・デセイ(1965~)による声楽版。デセイの歌声は繊細で、天空を舞う絹糸のよう。悲しみの旋律が途切れることなく、深い陰影をまといながら奏でられていきます。
▼もうひとつの動画はチェロの演奏。「2CELLOS」というユニットの1人、ルカ・スーリッチ。マイケル・ジャクソンのカバーなどで有名な2人組ですが、「ヴォカリーズ」では、とても繊細な演奏をしています。
▼僕が高校時代に繰り返し聴いたミッシャ・マイスキー(1948~)のCD。旧ソビエト当局に逮捕され強制収容所に送られるという過酷な経験をしている人です。そのためか、彼の音には言葉では言い表せない深みが感じられます。
バーバー作曲 弦楽のためのアダージョ
ベトナム戦争の悲劇を描いたオリバー・ストーン監督の映画『プラトーン』(1986年)に使われたことでも知られる作品です。
この映画では、凄惨な戦闘シーンの背景でこの痛切な音楽が流れ、見る者に忘れがたい印象を残しました。
曲のラストで鳴り響く不協和音の、この世のものとは思えない美しさ。永遠に続くかと思われたその音が途切れた瞬間、あなたの胸に何が去来するでしょうか。
アメリカの作曲家、サミュエル・バーバー(1910~1981)の作品。もともとは、弦楽四重奏曲の第2楽章として書かれたものが、「弦楽のためのアダージョ」として単独で演奏されるようになりました。
▼サイモン・ラトル(1955~)指揮、ベルリン・フィルによる演奏です。
▼レナード・バーンスタイン(1918~1990)指揮、ロサンゼルス・フィルのCD。魂の叫びが聴こえてきます。
シベリウス作曲 トゥオネラの白鳥
北欧フィンランドの作曲家、ジャン・シベリウス(1865~1957)の音楽には、凍てつく大地から響いてくるような、孤高のたたずまいが感じられます。
交響詩「4つの伝説」は、フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」を題材にした、4曲からなる組曲。
「トゥオネラの白鳥」は、その第2曲です。黄泉の国へと続くトゥオネラ川、その水面を泳ぐ白鳥の姿を描いています。
ぜひご覧いただきたい動画があります。2014年2月にNHKホールで行われたN響定期公演。尾高忠明の指揮で、オール・シベリウス・プログラムが組まれました。
僕はこの日、幸運にも会場でこの演奏に触れることができたのですが、この日は全国的に記録的な大雪に見舞われ、多くの人が会場に来ることができませんでした。客席に空席が目立つのは、そのためです。
そんな状況の中、N響は渾身の名演奏を繰り広げました。中でも「トゥオネラの白鳥」は、イングリッシュ・ホルンの池田昭子さんが感動的なソロを吹き、聴衆の心に深く刻まれました。
▼NHKの映像は、この奇跡的な時間を完璧に記録しています。一種のドキュメンタリーと言ってもいいでしょう。
▼シベリウス本人から信頼を寄せられいてた指揮者、ユージン・オーマンディ(1899~1985)による貴重な録音。
チャイコフスキー作曲 交響曲 第6番「悲愴」から第4楽章
ロシアの大作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~1893)が、死の直前に書き上げた「悲愴」。
その最終楽章は、引き裂かれるような悲痛な叫びに聴こえます。その根底には、苦しみへの深い許しと慰めが感じられます。
▼帝王ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)指揮、ベルリン・フィルによる映像作品。カメラアングルひとつひとつにも、カラヤンの徹底した美意識が反映された、まるで映画のような仕上がりです。
(第4楽章が始まる34:53から再生されます)
▼現代の帝王とも言われるワレリー・ゲルギエフ(1953~)のCD。ロシアの広大な大地を思わせるマリインスキー劇場管弦楽団の重厚な響きは、この曲の魅力を余すところなく引き出しています。
マイケル・ナイマン作曲 映画『ピアノ・レッスン』から「楽しみを希う心」
1993年に公開されたジェーン・カンピオン監督(1954~)の映画『ピアノ・レッスン』。
19世紀のニュージーランドを舞台に、ピアノの音色を言葉代わりにする女性と、原住民マオリ族に同化した一人の男性との激しい愛を描いた恋愛物語です。
第46回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドール、第66回アカデミー賞では脚本賞、主演女優賞、助演女優賞の3部門で受賞し、全世界で大ヒットしました。
この映画の音楽を担当したのが、イギリスの作曲家マイケル・ナイマン(1944~)です。
ミニマル系の作曲家で、ピーター・グリーナウェイ監督の映画などに長く携わっていましたが、『ピアノ・レッスン』で世界的に知られるようになりました。
サウンドトラックの中でも、ピアノ・ソロの「The Heart Asks Pleasure First 楽しみを希う心」は、悲しみに満ちた美しい旋律が愛され続けています。
あとがき
音楽とはすごいものだと、いつも思います。日常では味わうことのない領域にまで、僕たちの心を連れて行ってくれるのですから。
胸が締め付けられて苦しくなるような思いは、できたら普段の生活ではしたくないものですが、音楽を通じてこうした思いを味わうのは、むしろ心を豊かにしてくれます。
皆さん、ぜひクラシック音楽の力を借りて、様々な感情を感じてくださいね。