こんにちは。そなてぃねです。
僕の独断と偏見で、おすすめのクラシック音楽をご紹介するシリーズ。
今日は、心が傷ついて苦しいときに聴いてほしい「癒されるクラシックの名曲」をご紹介します。
バッハ作曲 無伴奏チェロ組曲 第1番 から プレリュード
チェロの音は人の声と近いと言われています。
僕は高校時代と大学時代、オーケストラに所属してチェロを弾いていました。とても下手くそでイヤになっちゃうくらいでしたが、腹の底に響く振動は、心を癒やしてくれました。
そんなチェロの響きを堪能できるのが、バロック最大の巨匠、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685~1750)の無伴奏チェロ組曲です。
組曲は6つあり、それぞれが6曲の舞曲などで構成されています。中でも最もよく知られているのが第1番のプレリュード。どなたも一度は耳にしたことがあるでしょう。
織りなされる音型と変わりゆく和声は、揺るぎない規則性に基づいていて、聴く者に絶対的な安心感を与えてくれます。
▼パブロ・カザルス(1876~1973)の演奏。バッハの「無伴奏チェロ組曲」に価値を再発見した20世紀最大のチェリスト。古い録音ですが、今も新鮮さを失わない生き生きとした音楽が聴こえてきます。
ショパン作曲 ノクターン 第8番 変ニ長調 作品27-2
ピアノの詩人フレデリック・ショパン(1810~1849)は、ロマン派を代表するポーランド出身の作曲家。彼の作品は、まさに珠玉の名作ぞろいです。
僕は少年時代ピアノに熱中していましたが、やはり一番の憧れはショパンでした。ロマンティシズム溢れる調べは、多感な僕の心をとらえて離しませんでした。
あまりに心に訴えかける力が強いため、「癒しの音楽」というより「胸が苦しくなるような切ない音楽」という感じもします。
そんなショパンの作品の中から、癒しの1曲を選ぶとしたら、ノクターン 第8番だと僕は思います。
ノクターンとは、日本語で書くと「夜想曲(やそうきょく)」。夜を想う曲、なんともロマンチックですよね。ショパンのノクターンは遺作も含めると21曲知られていて、どれも個性的な素晴らしい作品です。
第8番 変ニ長調は、どこまでも広がる静かな湖面を思わせるような作品です。穏やかさの中に、さざ波が立ち、水面に反射する空の色が刻々と移ろっていきます。まるで人生のすべてを映し出しているかのように。
▼ロシアの名ピアニスト、ウラディーミル・アシュケナージ(1937~)の演奏。オーソドックスな名演です。僕は子供時代に彼の来日演奏を聴きに行かせてもらいましたが、あまりに美しい音色は今も心に焼き付いています。
(34:16から再生されます)
ポンセ作曲「エストレリータ(小さな星)」
メキシコの作曲家マヌエル・ポノセ(1882~1948)の歌曲を、名バイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツが編曲したものです。
まさに胸キュンの甘美なメロディは、心の傷を優しく癒してくれるでしょう。
僕にとっては個人的に思い出の深い作品でもあります。高校2年生のとき、夜も眠れないくらいに片思いしていた1学年上の女性から、卒業のお別れにもらったCDに入っていた曲なのです。
その女性はバイオリンを弾く人でした。初めて彼女が演奏する姿を見て、雷に撃たれたように一目惚れしてしまった僕は、卒業式の日に小さな花束を手渡し思いを告白しました。
その恋が成就することはありませんでしたが、彼女から後日送られてきたCDは、僕の一生の宝となりました。
そのCDは、アルテュール・グリュミオー(1921~1986)というベルギーのバイオリニストのアルバムでした。気品のある音色で小品の数々が奏でられていました。
▼香り立つような高貴さをたたえたグリュミオーの演奏です。
(20:33から再生されます)
ラヴェル作曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」
もう1曲、ピアノの作品を。この旋律、どこかで聴いたことがあるのではないでしょうか。色彩の魔術師と呼ばれたフランスの作曲家モーリス・ラヴェル(1875~1937)が残した小品です。
作曲家自身がオーケストラ版にもアレンジしていて、こちらもとても素敵なのですが、僕はピアノ版のシンプルな響きの方が好きです。
繊細に変化していく和声が、心の傷にそっと寄り添ってくれます。
▼フランスの天才ピアニスト、サンソン・フランソワ(1924~1970)の演奏。とつとつと語りかけるような飾り気のない響きが、乾いた心に染み入ります。
モーツァルト作曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618」
最後に究極の癒しを与えてくれる合唱の名曲を。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)が、最晩年に作曲しました。
カトリックの「聖体賛美歌」と呼ばれるもので、イエス・キリストの身体を讃える合唱曲です。
宗教音楽ではありますが、信仰に関係なく万人の心を癒してくれます。
たった4分ほどの中に全宇宙が感じられるようで、自分の悩みなど小さな滴のようなものだと気付かされます。
▼レナード・バーンスタイン(1918~1990)最晩年の感動的な記録。バイエルン放送交響楽団と合唱団による演奏です。
あとがき
音楽を聴いたところで、悩みも苦しみも消えはしないと考える人もいるかもしれません。ですが、その響きに心を傾ける束の間に、いったん苦しみを心から手放すことはできます。
クラシック音楽の偉大な作曲家たちというのは、一種のチャネラーです。大いなるものとつながり、そのメッセージを楽譜に書き起こすことを宿命づけられた存在でした。
僕たちは、音楽を聴くことによって、普段気付くことのない「何か」とつながることができるのだと思います。ぜひその力に心を委ねてみてください。