こんにちは。そなてぃねです。
2020年12月19日、ザ・シンフォニーホール(大阪市)で行われた「砂川涼子 ソプラノ・リサイタル」を聴きに行きました。
「世界を繋ぐアヴェ・マリア」と題したクリスマス・コンサート。本当に素敵で… 幸せなひとときでした。
演奏会の概要
【砂川涼子 ソプラノ・リサイタル「世界を繋ぐアヴェ・マリア」】
- ヴァヴィロフ作曲
カッチーニのアヴェ・マリア - モーツァルト作曲
アヴェ・マリア - モーツァルト作曲
主をほめたたえよ
(「証聖者の荘厳な晩課」より) - モーツァルト作曲
アヴェ・ヴェルム・コルプス - トスティ作曲
アヴェ・マリア - バッハ/グノー作曲
アヴェ・マリア - フォーレ作曲
アヴェ・マリア - フォーレ作曲
ピエ・イエス
(「レクイエム」より) - プライズマン作曲
アヴェ・マリア - ビゼー作曲
アヴェ・マリア - サン・サーンス作曲
アヴェ・マリア - アルカデルト作曲
アヴェ・マリア
~ 休憩 ~
- フランク作曲
天使のパン - ヘンデル作曲
オンブラ・マイ・フ
(歌劇「セルセ」より) - ヘンデル作曲
シオンの娘よ、大いに喜べ
(オラトリオ「メサイヤ」より) - アダン作曲
さやかに星はきらめき - バーリン作曲
ホワイト・クリスマス - プッチーニ作曲
私の名はミミ
(歌劇「ラ・ボエーム」より) - ヴェルディ作曲
アヴェ・マリア
(歌劇「オテロ」より) - ハーライン作曲
星に願いを
(映画「ピノキオ」より) - チャーチル作曲
いつか王子様が
(映画「白雪姫」より)
〈アンコール〉
- チレア作曲
私は神のいやしいしもべです
(歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」より) - グルーバー作曲
きよしこの夜
ソプラノ 砂川涼子
ピアノ 河原忠之
2020年12月19日(土)19:00~
ザ・シンフォニーホール
そなてぃね感激度 ★★★★★
磨き上げられた可憐な歌声
僕が初めて砂川涼子さんの歌声に接したのは、2007年にオーチャードホールで行われた藤原歌劇団の公演でした。
演目はプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」。砂川さんはミミを演じました。その可憐な歌声と美しい立ち姿は僕の脳裏に焼き付いて、今も忘れることができません。
あれから13年。砂川さんの出演するオペラやリサイタルは、できるだけ聴きに行くようにしてきました。僕が世界で一番好きな歌手、それが砂川涼子さんなのです。
天から授けられた可憐な歌声を、砂川さんは丁寧に磨き上げてこられました。慎重にご自分の声質と向き合いながら、少しずつレパートリーを広げてこられたように思います。
今夜ステージに現れた砂川さんは、少女のような美しさはそのままに、音楽はまさに円熟の境地に達していました。
▼僕が砂川涼子さんに一目惚れした2007年の「ラ・ボエーム」。NHKが素晴らしい記録を残してくれています。
祈りのアヴェ・マリアからクリスマス・ソングまで
今回のコンサートのテーマは「世界を繋ぐアヴェ・マリア」。
有名なバッハ/グノーの「アヴェ・マリア」や、1995年に大ヒットした「カッチーニのアヴェ・マリア」をはじめ、フォーレやビゼー、サン・サーンスなどのあまり知られていないものも含め、なんと10曲の「アヴェ・マリア」が並びました。
聖母マリアへの祈りを歌った「アヴェ・マリア」は、どの作品も神々しい調べで心を打つものばかりでした。
ピアニストの河原忠之さんは、休憩後のトークで、たくさんの「アヴェ・マリア」を演奏することについて、「四国八十八ヶ所を巡礼しているみたい」と語っておられました。
そんな敬虔な調べと打って変わって、「ホワイト・クリスマス」「星に願いを」「いつか王子様が」といった作品では、胸がキュンとなるようなジャズ・アレンジで楽しませてくれました。
河原さんのピアノの見事なこと…!宝石箱をひっくり返したようなキラキラした響きに、うっとりしました。
その調べに乗って語りかけるように歌う砂川さんは、時おり小悪魔のような表情を見せて男心をくすぐるのでした。
おそらく今回のプログラムの大半が、砂川さんにとって初めて取り組む作品だったでしょう。大変な努力を重ねてこられたことと思います。
最後の曲が終わると、砂川さんの目に光るものが… 涙を客席に見られまいと少し後ろを向いてから、優しく振り返った晴れやかな笑顔に、目頭が熱くなりました。
音楽に人生を捧げてこられた謙虚さが、ひとつひとつの仕草や表情からにじみ出ていて、ますます砂川涼子さんのファンになってしまいました。
参考動画 多彩な「アヴェ・マリア」
10曲もの「アヴェ・マリア」を集めた今回のプログラムは、とても面白い企画でした。参考に音源動画を並べておきます。
▼ヴァヴィロフ(1925~1973)による「カッチーニのアヴェ・マリア」。ベラルーシ出身のカウンターテナー、スラヴァによる神々しい歌声で、空前の大ヒットとなった曲です。
▼モーツァルト(1761~1791)の「アヴェ・マリア」。ア・カペラで歌われます。
▼イタリアの歌曲王トスティ(1846~1916)の「アヴェ・マリア」。ドラマティックな調べが胸に迫ります。
▼最も有名な「アヴェ・マリア」。バッハ(1685~1750)の平均律クラヴィーア曲集、ハ長調のプレリュードに、グノー(1818~1893)が旋律をつけたものです。
▼フォーレ(1845~1924)の「アヴェ・マリア」。安らかな響きに癒やされます。
▼現代イギリスの作曲家、プライズマン(1952~)の「アヴェ・マリア」。彼自身がプロデュースしたボーイ・ソプラノのユニット「リベラ」による演奏です。
▼ビゼー(1838~1875)の「アヴェ・マリア」。武市敦子さんというヴォーカリストによる素敵なアレンジの動画です。
▼サン・サーンス(1835~1921)の「アヴェ・マリア」。慈愛に満ちた優しいメロディが感動的です。
▼ルネサンス時代の作曲家、アルカデルト(1504~1568)の「アヴェ・マリア」。やはり古い時代の宗教曲は趣深いです。
▼ヴェルディ(1813~1901)の歌劇「オテロ」の終盤で、デズデモーナが死の直前に祈りを捧げて歌う「アヴェ・マリア」。
あとがき
個人的なことですが、僕は数年前から妻との関係がダメになってしまい、今年のクリスマスも家族と一緒に過ごすことはできません。
ひとりぼっちのクリスマス。
ですが、砂川涼子さんと河原忠之さんからいただいた夢のようなひとときは、そんな僕に最高のプレゼントとなりました。
ありがとうございました!