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『蜜蜂と遠雷』演奏曲目リスト④マサル・カルロス 予選から本選までの全12曲の楽曲解説とおすすめの動画まとめ

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

こんにちは。えいぷりおです。

2016年に出版されベストセラーとなった恩田陸の『蜂蜜と遠雷』。2019年には映画化もされて話題になりました。

国際ピアノコンクールを舞台に、4人のピアニストがそれぞれの境遇と向き合い、葛藤を乗り越えていく長編小説です。

クラシックの名曲がたくさん登場するので、実際に音楽を聴きながら読むと、より深く楽しめます。

というわけで、4人のピアニストが演奏する全曲目をリストアップし、曲ごとに簡単な解説とおすすめ動画をご紹介します。

この記事では、ペルーの日系三世を母親に持つマサル・カルロスの演奏曲目をまとめます。

▼小説『蜜蜂と遠雷』の書評はこちら。

恩田陸著『蜜蜂と遠雷』【書評・本の感想】恩田陸著『蜜蜂と遠雷』クラシック音楽を文章で描ききれるのか?

▼映画『蜜蜂と遠雷』の感想はこちら。

映画『蜜蜂と遠雷』【映画の感想】松岡茉優主演『蜜蜂と遠雷』演奏シーンは迫真の出来栄えだったが…(ネタバレあり)

▼他の3人の演奏曲目リストはこちら。

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マサル・カルロスの人物像

マサル・カルロス 演奏シーン

(公式トレイラーから引用)

最初に、マサル・カルロスの人物像に触れておきます。

フルネームは、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。年齢は19歳。名門ジュリアード音楽院のホープで、審査員たちからは優勝候補の筆頭と目されています。

母親が日系三世のペルー人。幼いころ一時期日本にもいたことがあり、そこである少女と出会いピアノを始めました。コンクールの会場で、その少女と十数年ぶりに再会して…

映画では森崎ウィンさんが演じ、ピアノ演奏は日本人とハンガリー人のハーフで、マサルと境遇が似ている金子三勇士(かねこ・みゆじ)さんが担当しました。

▼企画CDには、マサル・カルロスがコンクールで演奏した曲の一部が収録されています。

マサル・カルロスの第1次予選

第1次予選では、バッハ、古典のソナタ、ロマン派を組み合わせて、20分以内のプログラムを組みます。

【マサル・カルロスの第1次予選】

  1. バッハ作曲
    平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第6番 ニ短調
  2. モーツァルト作曲
    ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333から第1楽章
  3. リスト作曲
    メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋の踊り」

バッハ作曲 平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第6番 ニ短調

平均律クラヴィーア曲集は、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750年)が鍵盤楽器のために作曲し、1742年に完成した不滅の業績。

24の調性ので書かれた「前奏曲」と「フーガ」で構成されていて、マサル・カルロスは第1巻に収められたニ短調を演奏しています。

▼カナダ出身の鬼才グレン・グールド(1932~1982年)の演奏。1956年にリリースした「ゴルトベルク変奏曲」でセンセーショナルなデビューを飾ったグールドが、1962年から約10年をかけて全曲録音した平均律。ペダルをほとんど使わない乾いた音で、バッハの本質に迫ります。(第6番が始まる19:49から再生されます)

モーツァルト作曲 ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333から第1楽章

アマデウス・モーツァルト(1756~1791年)が27歳のころ、オーストリア第3の都市リンツに滞在中に書いた作品です。

幸福感に満ちた美しい調べに癒やされます。

▼オーストリア出身で、稀代のモーツァルト弾きとして知られたイングリット・ヘブラー(1929年~)の演奏。気品ある優しい音色に涙が出そうになります。

リスト作曲 メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋の踊り」

フランツ・リスト(1811~1886年)はハンガリー出身の作曲家。超絶技巧を持つピアニストとして一世を風靡し、ヨーロッパ各地で大活躍しました。

メフィスト・ワルツ第1番は、ファウスト伝説を描いた同郷の詩人ニコラウス・レーナウによる長大な詩から霊感を得て作曲されました。次のような場面が題材となっています。

ファウストとメフィストフェレスは、農民たちが踊り集う居酒屋に現れる。楽士からヴァイオリンを取り上げたメフィストは、憑かれたかのように弾き始め、農民たちを陶酔のなかに引き込む。ファウストは黒髪の踊り子を抱いて星の夜へと連れ出し、森の中に入ってゆく。開いた戸から、夜鳴き鶯の鳴き声が聞こえてくる。(Wikipediaから引用)

▼旧ソ連出身のエフゲニー・キーシン(1971年~)の2011年の録音。表現の彫りが深く、スケールの大きな演奏です。40歳(当時)にして巨匠の風格を感じさせます。

マサル・カルロスの第2次予選

第2次予選(24人出場)では、より幅広い作曲家から計40分以内のプログラムを組みます。菱沼忠明という架空の作曲家による「春と修羅」という新曲を入れることが条件になっています。

【マサル・カルロスの第2次予選】

  1. 菱沼忠明作曲
    「春と修羅」
  2. ラフマニノフ作曲
    絵画的練習曲「音の絵」作品39-6 アレグロ イ短調
  3. ドビュッシー作曲
    12の練習曲 第1巻 第5番「オクターブのための」
  4. ブラームス作曲
    パガニーニの主題による変奏曲 作品35

菱沼忠明作曲 「春と修羅」

架空の作曲家、菱沼忠明による課題曲「春と修羅」。宮沢賢治の同名の詩集をもとに作曲された設定になっています。

映画のための楽曲は、ロンドン在住の現代作曲家、藤倉大さんが、小説のディテールを読み込んで作曲。繊細で美しい作品に仕上がっています。

この作品の特徴は、楽曲の終盤に「自由に、宇宙を感じて」とだけ指示されたカデンツァが置かれていること。カデンツァとは、演奏者が即興で演奏することが許された白紙の部分です。

4人の登場人物によるカデンツァも藤倉さんが書き分けていて、それぞれの個性が際立っています。ぜひ映画を観てみてください。

▼金子三勇士さん(1989年~)による企画CDの演奏。マサル・カルロス版のカデンツァは、3:54から始まります。

ラフマニノフ作曲 絵画的練習曲「音の絵」作品39-6 アレグロ イ短調

セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943年)は、ロシア出身の作曲家で、名ピアニストとしても歴史に名を刻んでいます。

重厚な和音はロシアの大聖堂の鐘のよう。濃密なロマンティシズムを湛えた作風が特徴です。

ラフマニノフは、1917年のロシア革命を機にアメリカに亡命。「音の絵」作品39は、ロシアで書き上げた最後の曲集となりました。9曲からなり、マサル・カルロスが演奏したのは第6曲です。

▼ロシア出身のズラータ・チョチエヴァ(1985年~)の演奏。ラフマニノフを得意としていて、この全曲録音も非常に聴き応えがあります。(第6曲が始まる45:23から再生されます)

ドビュッシー作曲 12の練習曲 第1巻 第5番「オクターブのための」

クロード・ドビュッシー(1862~1918年)は、フランスを代表する作曲家で、「印象派」に分類されます。

12の練習曲は、最晩年に作曲されたピアノ曲。マサル・カルロスが選曲した第1巻の第5番では、印象的な明るい和音が弾けるように鳴ります。

▼フランスの名手ミシェル・ベロフ(1950年~)の演奏。30代半ばから右手の故障で第一線から退いた時期もありましたが、この録音は、国際的な活躍が始まった21歳のころのものです。(第5番が始まる14:17から再生されます)

ブラームス作曲 パガニーニの主題による変奏曲 作品35

ヨハネス・ブラームス(1833~1897年)は、ドイツの作曲家。バッハ、ベートーベンとともに「三大B」とも称されます。

「パガニーニの主題による変奏曲」は、29~30歳のころに作曲されました。

バイオリンの鬼才、ニコロ・パガニーニ(1782~1840年)の「24の奇想曲」の第24番を主題として、それぞれ14の変奏曲からなる第1巻と第2巻で構成されています。

合計28もの変奏曲は、非常に技巧的でありながら、芸術的な深みも兼ね備えています。

▼ウクライナ出身のアレクサンダー・ガヴリリュク(1984年~)の演奏。強靭な技術を持った演奏家として国際的に高く評価されています。16歳で浜松国際ピアノコンクールで優勝したこともあり、日本でも人気です。

マサル・カルロスの第3次予選

第3次予選(12人出場)では、60分以内のリサイタル・プログラムを自由に組みます。

【マサル・カルロスの第3次予選】

  1. バルトーク作曲
    ピアノ・ソナタ Sz.80
  2. シベリウス作曲
    5つのロマンティックな小品
  3. リスト作曲
    ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
  4. ショパン作曲
    ワルツ 第14番 ホ短調

バルトーク作曲 ピアノ・ソナタ Sz.80

ベーラ・バルトーク(1881~1945年)は、ハンガリーの作曲家。母国の民族音楽を採集して、自らの作品に取り入れました。

ピアノ・ソナタは、45歳のころの作品。半音階的な独特な響き、ピアノを打楽器のように扱う奏法など、バルトークの特色が強く打ち出されています。

▼ハンガリー出身のゾルターン・コチシュ(1952~2016年)の演奏。デジュー・ラーンキ、アンドラーシュ・シフとともに「ハンガリーの三羽烏」と呼ばれ活躍しましたが、残念ながら64歳の若さで亡くなりました。

シベリウス作曲 5つのロマンティックな小品

ジャン・シベリウス(1865~1957年)は、フィンランドの国民的な作曲家。有名な「フィンランディア」は、第2の国家とも言われています。

「5つのロマンティックな小品」は、58~59歳のころの作品。5曲それぞれに美しい旋律があり、北欧の白夜を思わせる幻想的な雰囲気も感じられます。

▼この作品は演奏される機会が少なく、5曲まとまった動画は見つけられませんでした。ジョゼフ・トングというイギリスのピアニストの演奏が、5曲別々にアップされていました。まず、第1曲「ロマンス」。

▼第2曲「夜の歌」

▼第3曲「叙情的な情景」

▼第4曲「ユモレスク」

▼第5曲「ロマンティックな情景」

リスト作曲 ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

リスト(1811~1886年)最大の傑作とも言われる「ロ短調ソナタ」は、41~42歳のころに作曲されました。

当時、賛否両論の大論争となるほど、革新的な構成を持つピアノ・ソナタでした。全体が切れ目のない単一の楽章になっていて、主題が様々な形に変容しながら全体を支配しています。

▼オーストリアのピアニスト、アルフレート・ブレンデル(1931年~)の演奏。深い洞察と知的な解釈で、そびえ立つような巨大な音楽を築き上げています。まさに芸術の極みです。

ショパン作曲 ワルツ 第14番 ホ短調

フレデリック・ショパン(1810~1849年)は、ポーランド出身。「ピアノの詩人」と呼ばれました。

ワルツ 第14番は、20歳のころの作品。マサル・カルロスは大曲「ロ短調ソナタ」の後のアンコールのような位置づけで、この作品を最後に持ってきたのでしょう。

▼旧ソ連出身の大ピアニスト、ウラディミール・アシュケナージ(1937年~)の演奏。真珠のような美しい音と絶妙な歌いまわし。彼のショパンは人類の宝です。

マサル・カルロスの本選

本選(6人出場)では、オーケストラとの共演で、ピアノ協奏曲を1曲選びます。

【マサル・カルロスの本選】

  1. プロコフィエフ作曲
    ピアノ協奏曲 第3番

プロコフィエフ作曲 ピアノ協奏曲 第3番

セルゲイ・プロコフィエフ(1891~1953年)は帝政ロシアに生まれ、27歳のとき日本を経由してアメリカに亡命。45歳で再び故郷(旧ソ連)に戻り、62歳で亡くなりました。

ピアノ協奏曲 第3番は、30歳のころの作品。シニカルさを秘めた独特の叙情性と、リミッターが外れた機関車のようなスピード感。そして、熱狂的なクライマックスへ…

(『蜜蜂と遠雷』の映画では、マサル・カルロスは第2番を弾くことになっています)

▼中国出身のユジャ・ワン(1987年~)の演奏。クラウディオ・アバド指揮、ルツェルン祝祭管弦楽団との2009年のライブ。もの凄い演奏です…!

えいぷりお的まとめ

マサル・カルロスは、名門ジュリアード音楽院のホープ。すらっとした長身でスター性も兼ね備えた逸材として描かれています。

でも彼は、王道を歩むのではなく、作曲もできる「コンポーザー・ピアニスト」という独自の道を切り開いていく夢を持っています。

彼の選曲には、「ただの優等生ではないぞ!」という強い意思と個性が感じられます。

小説『蜜蜂と遠雷』で、彼にはどのような結末が待っているのか。ぜひ音源を聴きながら読んでみてください。

▼アイキャッチのイラストを自分で書いてみました。マサル・カルロスのイメージは高貴さを表す紫。まっすぐな瞳で前を見つめています。

マサル・カルロス・レヴィ・アナトール

▼このイラストについてはこちら。

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▼小説『蜜蜂と遠雷』の書評はこちら。

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▼映画『蜜蜂と遠雷』の感想はこちら。

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