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【演奏会の感想】バイオリン石上真由子&チェロ諸岡拓見デュオ・コンサート(2019年2月 京都)

こんにちは。えいぷりおです。

バイオリンとチェロという、珍しいデュオ・コンサートに行きました。

バイオリンは京都の才媛、石上真由子(いしがみ・まゆこ)、チェロは大阪フィルの若き首席奏者、諸岡拓見(もろおか・たくみ)です。

なかなか聴くことのできない作品を生で聴ける貴重な機会となりました。

演奏会の概要

【石上真由子 & 諸岡拓見 デュオ・コンサート】

  1. グリエール作曲
    8つの小品 作品39
  2. プロコフィエフ作曲
    無伴奏バイオリン・ソナタ 作品115
  3. カサド作曲
    無伴奏チェロ組曲
  4. ラヴェル作曲
    バイオリンとチェロのためのソナタ

バイオリン:石上真由子
チェロ:諸岡拓見
2019年2月27日(水)19:00~
洛陽教会(京都)

バイオリニスト 石上真由子

石上真由子さんは高校2年のとき、第77回日本音楽コンクールで第2位に入賞。テレビで放送された本選での彼女のパフォーマンスは、スケールの大きさでは第1位の奏者を圧倒していました。

バイオリニストとしては、かなり特異な経歴の持ち主で、音楽大学ではなく京都府立医科大学に進学。なんと医師免許を持っています。

彼女の大空を羽ばたくような音楽は、演奏家の常識にとらわれない自由な歩みからきているような気がします。

今も生まれ育った京都を拠点に、国内外で活躍しています。

【関連記事】 2018年7月のゴルトベルク変奏曲(弦楽トリオ版)も素晴らしい演奏でした。

【演奏会の感想】バイオリニスト石上真由子さんの魅力 ー 京都で「ゴルトベルク変奏曲」を聴く

チェリスト 諸岡拓見

諸岡拓見さんは三重県出身。

5歳からチェロを始め、2005年(おそらく中学時代)には、ドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭でソリストを務めるなど、早くから才能を示していたようです。

音楽大学ではなく同志社大学に進学し、京都大学の学生オーケストラに入団。アマチュアオケ(とは言っても京大オケは非常にハイレベル)で音楽に取り組みました。

第69回全日本学生音楽コンクール(大学の部)では、東京藝大などのライバルたちを相手に、第2位に入賞しています。

今は関西の名門、大阪フィルハーモニー交響楽団の首席奏者を務めています。

めったに聴けないバイオリンとチェロの二重奏曲

バイオリンとチェロの二重奏曲は、なかなかのレア物です。

有名なのは、この日演奏されたラヴェルの作品と、コダーイの作品くらいでしょうか。

グリエール作曲 8つの小品

最初に演奏されたレインゴリト・グリエール(1875~1956)の二重奏曲「8つの小品」を、僕は初めて聴きました。

諸岡さんによるプログラム・ノートには、こんな素敵な解説が。

「ロシアの民謡がふんだんに盛り込まれており、詩情に溢れたこの作品はどこかストーリーテラーが順繰りに昔話を語っていくような趣があります」

この言葉の通り、暖炉のそばで、おじいちゃんに絵本を読んでもらっているような気分になりました。

教会というシュチュエーションも、そんなイメージに合っていたのかもしれません。暖色系の明かりがふたりの照らし出す光景は陰影が深く、非日常の空間を作り出していました。

石上さんのバイオリンは、何役も演じ分ける役者のように、音色を多彩に変えながら、聴衆を物語の世界にいざないます。

顔の表情も豊かで、思わず笑みがこぼれたり、獲物を狙う猛禽類のような鋭い目つきになったりと、目まぐるしく変化します。

その表情が実に音楽的で、あぁこの人は本当に魂から音楽を生み出しているんだなぁと感銘を受けるのです。

諸岡さんのチェロは、張りのある折り目正しい音で、自由に羽ばたく石上さんのバイオリンをしっかり支えているように感じました。

【参考動画】 ロロンス・カヤレイ(バイオリン)と、エリザベス・ドリン(チェロ)による正統派の演奏。

【参考動画】 1曲目のプレリュードだけですが、ぜひ聴いていただきたいのが、往年の大巨匠、ハイフェッツとピアティゴルスキーによる演奏。言葉にできない深い味わいが醸し出されています。

ラヴェル作曲 バイオリンとチェロのためのソナタ

演奏会のメインを飾ったのは、モーリス・ラヴェル(1875~1937)の二重奏曲です。

ラヴェルは、先ほどのグリエールと同年の生まれ。ロシア帝国(ソ連)のグリエールと、フランスのラヴェル。同時代の二人の作品を並べて聴ける、とても興味深い選曲でした。

ラヴェルのこの作品、かなりの難曲だと思います。音数も多く、対話もすごく複雑。

石上さんは、バイオリンとチェロの二重奏の難しさについて、こんな話をしていました。

「アンサンブルの王道は弦楽四重奏。それに対して、バイオリンとチェロだけということは、第2バイオリンとビオラのパートを、ふたりで分担して引き受けなければなりません。だから、一人ひとりの負担はすごく重くなる」

この過酷な仕事に、ふたりは果敢な攻めの姿勢で挑んでいました。安全運転なし!

それを、息遣いが聴こえるくらいの近距離で体感する。これぞライブの喜びです。

【参考動画】 ジャン・ジャック・カントロフ(バイオリン)とフィリップ・ミュラー(チェロ)による演奏。

ふたりの無伴奏ソロも堪能

それぞれの無伴奏ソロも演奏されました。

プロコフィエフ作曲 無伴奏バイオリン・ソナタ 作品115

セルゲイ・プロコフィエフ(1891~1953)は、先ほどのグリエールの弟子。プロコフィエルが11歳のとき、27歳だったグリエールが作曲の手ほどきをしたそうです。

このような作曲家どうしの繋がりを意識した選曲、僕はすごく好きです。

石上さんが書いた解説によると、この作品はもともと、大勢のバイオリニストが一斉に演奏することを想定して書かれたとか。当時の流行だったそうです。

ちょっとびっくりです。こんな難しい曲を大勢で合わて弾くなんて!

石上さんは演奏前に、こんな話をしました。

「私は大勢で合わせては弾けないような弾き方をしてみます。プロコフィエフは『ロメオとジュリエット』などのバレエ音楽を書いた人なので、この曲でも踊りをイメージしてみます」

石上さんの動きは、すべてが美しく魅力的。演奏する姿そのものが一種の身体表現に思えてきます。

躍動するボウイングから生み出される表現は踏み込みが深く、エッジが立っていて、プロコフィエフの音楽と相性はぴったり。心の浮き立つような音楽が奏でられました。

【参考動画】 ギドン・クレーメルの演奏を。

カサド作曲 無伴奏チェロ組曲

諸岡さんのソロは、ガスパール・カサド(1897~1966)の無伴奏チェロ組曲。

カサドはスペインの生んだチェロの巨匠ですが、ラヴェルとも繋がりがあります。

ラヴェルはフランス人ですが、生地は母親のルーツであるスペイン国境のバスク人の町、シブールです。

一方、カサドはラヴェルの影響を受けて作曲を始めたといいます。直接の接触があったかどうかは分かりませんが、カサドがラヴェルを意識していたことは間違いありません。

なぜなら、この曲の第1楽章には、ラヴェルのバレエ音楽『ダフニスとクロエ』の有名なフルートソロが引用されているからです。

オーケストラ・プレイヤーである諸岡さんにとって、無伴奏の難曲を取り上げるのは、大きな挑戦だったと思われます。演奏前に、こんなことを話していました。

「ツイッターを見ていたら、昨日、同じ京都で、とあるソリストがこの曲を弾いたことを知ってしまい、戦々恐々としています…」

これはおそらく、前日の2月26日にカフェ・モンタージュ(京都)でリサイタルを開いた伊東 裕(いとう・ゆう)さんのことだと思われます。

諸岡さんは、同世代のスタープレイヤーと自分を比較して、恐縮していたのかもしれません。

でも、諸岡さんの演奏は立派なものでした。

諸岡さんの演奏には、武士道精神のようなものを感じました。礼節と潔さがあって、凛とした響きを作り出していました。

【参考動画】 たまたま見つけた動画ですが、素晴らしかったので貼り付けます。アンナ・リトビネンコという女性チェリストの演奏です。

えいぷりお的まとめ

京都は不思議な町です。個性的でハイレベルな演奏会が、町の小さな教会で日常的に行われているのですから。

石上真由子さん目当てで行ったコンサートでしたが、思いがけず素晴らしいチェリストを発見し、なかなか聴くことのできないレアなプログラムを聴くことができました。

気さくなトークにも、ふたりの飾らない人柄が感じられて、楽しいひとときとなりました。

これからも京都に足繁く通ってみようと思います。
【関連記事】 クラシック音楽に関する記事(魅力・おすすめ・感想・旅行記)のまとめはこちら。

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