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【演奏会の感想】Ensemble FOVE「SONAR-FIELD」新時代の音響アトラクション(2019年3月 東京)

こんにちは。えいぷりおです。

現代音楽の最先端で、次々に挑戦的な企画を打ち出している集団、ensemble FOVE(アンサンブル・フォーヴ)。

2019年3月に東京都港区のSHIBAURA HOUSEで行われたライブ、SONAR-FIELD(ソナー・フィールド)に行ってきました。

プレイヤーと聴衆が空間を移動しながら、様々な音響を五感で味わう、まったく新しい聴覚体験。新時代のライブ・パフォーマンスです。

忘れられない1時間となりました。

この記事では、ensemble FOVEの魅力と、この公演の感想を語ります。

演奏会の概要

【Ensemble FOVE presents “SONAR-FIELD”】

 

作曲:坂東祐大
演奏:Ensemble FOVE

 

2019年3月30~31日(4公演)
SHIBAURA HOUSE

 

えいぷりお感激度 ★★★★★

Ensemble FOVEとは

Ensemble FOVEは、現代作曲家の坂東祐大(ばんどう・ゆうた)さんが主宰する若手演奏家集団です。

坂東さんは、クラシック音楽の素養をベースとしながらも、ロックやジャズにも通じた次世代のクリエイターとして注目されています。

坂東さんの東京藝大時代の仲間を中心に、ソリスト級の腕を持つ気鋭のプレイヤーが集結したのがEnsemble FOVEです。

既存の枠にとらわれない新しいコンセプトを掲げ、2018年3月に開催したライブがSONAR-FIELDでした。僕は残念ながら、仕事と重なって行くことができませんでした。

▼2018年7月に公開された「SONAR-FIELD」の動画がこちら。

今回、1年ぶりの再演が行われると聞き、期待に胸を膨らませて会場に向かいました。

【関連記事】 2018年12月に京都で行われたEnsemble FOVE「TRANS」の感想はこちら。

【演奏会の感想】Ensemble FOVE「TRANS」若き作曲家と演奏家たちの挑戦(2018年12月 京都)

演奏会ではなく「アトラクション」

「SONAR-FIELD」のコンセプトについて、プログラム・ノートから引用します。

「SONAR-FIELD」では、核となるサウンド・オブジェから派生したさまざまな音楽を、視る/聴くというコンセプトのもと、会場であるSHIBAURA HOUSE全体をめぐるよう設計された総合的な音響知覚体験をお届けします。彼方から聴こえる音から、プレーヤーがあなたの目前で繰り広げる超絶技巧まで、遠近さまざまな音響が「SONAR-FIELD」の体験を鮮烈に印象付けます。

文章を読んでも、ちょっとピンと来ないかもしれませんね。これは本当に体験しないと分からないんです。

ひとりの聴き手の視点で入口から出口までの流れをたどってみましょう。

▼こちらが会場のSHIBAURA HOUSE(東京都港区)。ビル全体がガラスに覆われ、吹き抜けの空間が散りばめられた、個性際立つ建築です。

SHIBAURA HOUSE

▼1階のロビーで、少し待ちます。

聴き手は5人1組になって、10分毎に呼ばれるシステム。

チケットは完全予約制で、18:00入場、18:10入場、18:20入場… と細かく割り振られています。遅刻厳禁ですね。

▼呼ばれたら、まず2階に連れて行かれて、打楽器の体験コーナーみたいなのがあります。

牛の角のようなこの楽器は、富山県高岡市の合金職人が作った工芸品。叩く場所や持ち方によって、様々な音色が出ます。

今回の公演では、これと同じ素材の打楽器が使われるとのこと。待ち時間に体験することで、ライブへの心の準備をするわけです。

次にエレベーターで5階へ。エレベーターの中にもスピーカーが仕込まれていて、不思議な音に包まれます。徐々にライブ空間にいざなわれるのを感じます。

▼5階に着くと、ライブ会場の手前で10分ほど待ちます。カーテン越しに面白い音が聞こえてきます(再生すると音が流れます)。

(この公演では写真や動画の撮影がOKで、SNSでの拡散も推奨されています)

▼いよいよカーテンの向こうへ。指定されたイスに座ります(再生すると音が流れます)。

▼ライブは10分✕7曲で構成されていて、1曲終わるごとに鈴の音を合図に席を移動します。動線には猫の足跡のような、かわいい印がついています。

▼違う角度から、他の曲も少し動画に撮りました(再生すると音が流れます)。

7曲は、次のような構成になっています。

  • 泡のオブジェ
  • 反響のオブジェ
  • 周期と同期のオブジェ
  • 伸び縮のオブジェ
  • 重力のオブジェ
  • 点のオブジェ
  • 呼吸のオブジェ

(また泡のオブジェに戻って繰り返す)

どの作品も理屈抜きで面白かったです。現代音楽に特有のノイズのような音も、不思議と耳を楽しませてくれます。

けれど決して「分かりやすい」わけではなく、「なんじゃこりゃ???」という瞬間もたくさんあり、頭を抱えたり首をひねったりキョロキョロしてしまったりするのです。

坂東さんの音楽は、小難しい「現代音楽」というくくりを感じさせません。アカデミックなことは分からない僕のような素人でも、子供のように「なんじゃこりゃ???」と楽しむことができます。

そんなこんなで席を移動しながら7曲を聴き終わると、会場から退出するような動線になっています。

入口から出口までライブ空間を一周するというアイデアは、演奏会というよりも「アトラクション」と呼んだ方がしっくりきます。

「視点」が変わる新しいライブ空間

音楽そのものも面白いのですが、曲ごとに視点が変わるのが新鮮でした。ガラス越しに見える東京の夜景も、刻々と変化していきます。

10人のプレイヤーたちも、演奏しながら移動します。さっきまで遠くで演奏していた人が、いきなり目の前で弾き始めたりします。

遊び心も満点で、オーボエ奏者がプラスチック板をペニャペニャ言わせながらぐるぐる走り始めたり、バイオリニストがスライドホイッスルをピューピュー言わせながら踊り始めたり、打楽器奏者がコップの水をストローでブクブクやり始めたり。

いろいろな仕掛けによって視覚と聴覚の遠近感が歪められて、なんだか音のイリュージョンの世界に迷い込んだようでした。

プレイヤーは怖いくらいに至近距離

会場にいる聴衆は、5人✕7組=35人。演奏者は10人。計45人が狭い空間に混在します。

つまり、聴き手とプレイヤーが、通常ありえないような至近距離で向き合うことになります。

凄腕のソリストたちの生音が、バイブレーションとなってダイレクトに肌に伝わってきます。これは本当に刺激的でした。

プレイヤーのお名前は以下の通り。

  • 上野耕平(サクソフォン)
  • 浅原由香(オーボエ)
  • 東紗衣(クラリネット)
  • 中川ヒデ鷹(ファゴット)
  • 大家一将(打楽器)
  • 伊藤亜美(バイオリン)
  • 對馬佳祐(バイオリン)
  • 武田桃子(バイオリン)
  • 安達真理(ビオラ)
  • 篠崎和紀(コントラバス)

皆さん20代から30歳前後。これから日本のクラシック界を牽引していく人たちです。

合奏と即興 ギリギリのスリル

坂東祐大さんの楽曲は弾くだけでも大変そうですが、合奏するのはさらに難しそうです。お互いに離れていて、指揮者もいないのですから。

そんな状況で呼吸を合わせるのですから、すごいアンサンブル力です。

これは僕の想像ですが、彼らは楽譜通り演奏するだけでなく、おそらくかなり即興的なこともやっていると思います。

合わせるだけでも難しいのに、即興の応酬までしているとしたら、とんでもない技量です。

彼らはそんなギリギリのスリルさえも楽しんでいるように感じました。

彼らが新たな創造をし続けるために

「SONAR-FIELD」の課題をあえて挙げると、集客数の少なさです。

ざっと計算すると、4公演の客数は5人✕24組=120人。チケット代は3500円なので売上42万円(数え方が違っていたら、ごめんなさい)。プログラムに広告がないところを見ると、スポンサー収入もないかもしれません。公的な助成を受けていたりするのかな…?

余計なお世話かもしれませんが、これで採算が取れるのか、ちょっと心配になります。普通に考えると、会場を2日間レンタルするだけで、すべて消えてしまいそうです。

10人のプレイヤーと5人ほどのスタッフ、そして坂東さん自身のギャラをまかなえる収益が発生しているのか、本気で不安になりました。

これからも彼らが存分に創造性を発揮して、面白いコンテンツを創り続けていくためには、まったく新しい客層を開拓していくことが必要だと感じました。

えいぷりお的まとめ

若者たちが既存の概念を打ち破って新しいことに挑戦する姿は、本当にまぶしいです。

クラシックの演奏家は、子供のころから型にはまった稽古を積み重ねるので、そこから抜け出すのは簡単ではないはずです。

でも、Ensemble FOVEのメンバーたちは、自由なアイデアを心から楽しんでいて、僕たちを理屈抜きでワクワクさせてくれます。

これからも彼らのライブに通って、ついつい古い思い込みにとらわれがちな脳みそに、刺激をもらおうと思います。

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