【ウイルス性髄膜炎】子供がよくかかる合併症、症状と治療法

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おたふく風邪(流行性耳下腺炎)や手足口病、ヘルパンギーナといった子供がよくかかる病気には、合併症として「ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)」を発症する可能性があります。どのような症状が現れるのでしょうか。

髄膜炎には2種類ある

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まず、「髄膜(ずいまく)」について説明しましょう。髄膜とは、脳と脊髄(せきずい)の表面をおおっている膜のことです。髄膜は3枚の膜(脳に近い方から軟膜、くも膜、硬膜の3層)から成り立っています。軟膜とくも膜との間にはくも膜下腔というスペースがあり、脳脊髄液(のうせきずいえき)という栄養豊富な液体がそのスペースを満たしています。

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(引用:恩賜財団 済生会

この髄膜に、細菌やウイルスが感染して炎症を起こした状態を、「髄膜炎」と呼びます。

髄膜炎には大きく分けて、「ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)」と「細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)」の2つがあります。

細菌性髄膜炎は非常に重い病気です。現代の最善の治療を行っても、死亡率は数%~十数%と高く、後遺症も患者全体の20~30%程度にみられます。

一方、ウイルス性髄膜炎は通常1週間ぐらいで治癒し、後遺症もほとんどみられません。ですが、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)や手足口病、ヘルパンギーナといった子供がよくかかる病気の合併症として起こることが多く、見逃すと悪化する危険性もあります。

この記事では、このウイルス性髄膜炎についてまとめます。

ウイルス性髄膜炎の原因ウイルス

ウイルス性髄膜炎を引き起こすのは、どのようなウイルスなのでしょうか。以下に列記します。

エンテロウイルス

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エンテロウイルスは子供がよくかかる夏風邪、手足口病ヘルパンギーナの原因ウイルスです。これらの病気の合併症としてウイルス性髄膜炎を発症することがあります。

エンテロウイルスの主な感染経路は、糞口感染(感染者の便中に含まれるウイルスが口に入ることで感染する)と、飛沫感染(感染者の咳やくしゃみで飛沫したウイルスを吸い込むことで感染する)です。流行時期は、例年5月頃からみられはじめ、7月にピークとなります。潜伏期間は4~6日とされています。乳幼児の感染が多く、中でも0歳児が最も多いのが特徴です。

ムンプスウイルス

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ムンプスウイルスは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の原因となるウイルスです。おたふく風邪の合併症としてウイルス性髄膜炎を発症することがあります。小さな子供のウイルス性髄膜炎の主要な原因は、このムンプスウイルスと言われています。

ムンプスウイルスの主な感染経路は、飛沫感染や接触感染(感染者の唾液などに含まれるウイルスが口に入ることで感染する)です。年間を通して流行しますが、特に冬から春にかけてが多いと言われています。潜伏期間はおよそ2~3週間で、好発年齢は5~10歳とされています。

ムンプスウイルスによる髄膜炎は、耳下腺が腫れてから3~10日後に発症します。高熱、頭痛、嘔吐の症状がみられたら髄膜炎が疑われます。髄膜炎を合併する確率は、おたふく風邪に感染した人の2~10%とされています。予後は良好で、ほとんどが2週間程度で後遺症なく完治します。

まれにムンプスウイルスが中枢神経内で増殖することにより、髄膜脳炎となることもありますので注意が必要です。

予防するためにはムンプスワクチン(おたふく風邪のワクチン)の接種が有効ですが、注意しなければならないのは、このワクチンそのものがウイルス性髄膜炎を引き起こす可能性があるということです。

ムンプスワクチンは「生ワクチン」と言って、弱毒化したムンプスウイルスそのものを接種します。それによって、おたふく風邪を発症させることなく免疫を獲得するのが狙いなのですが、まれに接種した生ワクチンが髄膜に炎症を起こすことがあるのです。

1989年にMMRという三種混合ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪)が定期接種されるようになりましたが、この中に含まれるムンプスワクチンがウイルス性髄膜炎を引き起こすことが問題となり、1993年に事実上中止に追い込まれたことがあります。MMRワクチンによるウイルス性髄膜炎の発生頻度は500~1000人に1人だったと言われています(自然感染の場合は約80人に1人)。

今はムンプスワクチンの単独接種になっており、髄膜炎の副反応が問題視されることはなくなりましたが、それでも2000~2500人に1人は髄膜炎を起こすと考えられています。発生頻度はゼロではないので、ムンプスワクチンを接種した約3週間後に高熱や嘔吐、頭痛を訴えるような場合は、念のため髄膜炎の発症を念頭に置いた対応が必要になります。

ヘルペスウイルス

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ヘルペスウイルスはとても身近なウイルスで、誰もが感染している一般的なウイルスです。ヘルペスウイルスは8つの種類が知られており、口唇ヘルペス、性器ヘルペス、水疱瘡や帯状疱疹、突発性発疹など、ヘルペスウイルスの種類によって生じる症状はさまざまです。ヘルペスウイルスの中では、性器ヘルペスの原因として知られる単純ヘルペス2型(HSV-2)が、脊髄炎や髄膜炎を引き起こしやすいとされています。

マイコプラズマ

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マイコプラズマは、細菌とウイルスの中間のような大きさと性質を持った病原体です。そういう意味では、今回「ウイルス性髄膜炎」の原因として扱うのは、厳密には正しくないかもしれませんが、子供がかかりやすい病気(マイコプラズマ肺炎)の合併症という意味で取り上げることにしました。

マイコプラズマは、気管支炎や肺炎の原因として知られています。肺の炎症だけでなく、髄膜炎や脳炎などを引き起こすことが知られており、さらに喘息やリウマチ性疾患、アレルギー性疾患などの炎症性慢性疾患に移行することもあります。マイコプラズマに感染した人の25%が、肺以外の症状を発症します。

マイコプラズマには、ある種の抗生物質(マクロライド系やテトラサイクリン系)が有効とされていましたが、近年ではそれに対して耐性をもったものが出現しており、問題視されています。

インフルエンザウイルス

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冬に流行するインフルエンザ、その原因であるインフルエンザウイルスも髄膜炎の合併症を引き起こすことがあります。インフルエンザを発症したあと、高熱がなかなか下がらず頭痛、嘔吐などの症状がみられたら髄膜炎が疑われます。

髄膜炎になったとしても後遺症が残る可能性は低いのですが、インフルエンザウイルスは脳症の合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。インフルエンザ脳症はインフルエンザの合併症の中では最も重篤なもので、死亡率は約30%、後遺症も約25%にのぼると言われています。

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 ウイルス性髄膜炎の症状

大人の場合、ウイルス性髄膜炎の3大症状として、以下の症状が現れます。

・発熱・・・38~40℃が5日間程度
・頭痛・・・頭全体に持続性または拍動性の痛み
・嘔吐

小さい子供の場合は、以下のような現れ方もするので、細やかな観察が求められます。

体温の上昇または低下

乳児および幼児では、発熱だけとは限らず逆に体温が低下することもあります。

嘔吐

成人と同じく、小児でも嘔吐の症状がみられます。嘔吐が続く場合、乳幼児は脱水になりやすいため、補液などの加療が必要となります。

哺乳力の低下

哺乳力(おっぱいやミルクを吸い込む力)の低下は不調を示す大きなサインとなります。お子さんの哺乳量を常に把握しておくようにしましょう。

不機嫌

言葉がうまく話せない乳幼児の場合、機嫌の変化が異常を察知する重要なポイントとなることがあります。乳幼児は熱が高くても比較的機嫌がよいことが多く、その場合は心配する必要はありませんが、不機嫌な状態が続く場合は何かしら痛みや不調があることが疑われます。

甲高く泣く、泣き声が弱いなど、泣き声の変化にも注意を向けて、状態をきめ細かく観察するようにしましょう。

けいれん

髄膜炎では中枢性のけいれんを生じます。2~3日発熱が続いてからけいれんを起こした場合は、髄膜炎や脳炎によるけいれんを疑う必要があります。けいれんを止める処置が必要になりますので、速やかに医療機関を受診しましょう。1時間以上けいれんが続くと、脳に後遺症を残すリスクが高まるとされています。

嗜眠(しみん)

嗜眠とは、放っておくと眠ってしまい、強い刺激を与えないと覚醒(反応)しない状態のことです。意識障害(意識混濁)の程度のひとつです。症状が悪化すると、昏睡状態になっていくので、油断できません。

このような症状が現れたら、髄膜炎を疑うと同時に、脱水状態の可能性も検討します。いずれにせよ、嗜眠の兆候が見られたら、医療機関を受診するようにしましょう。

 頭痛

多くの場合頭全体の痛みを感じます。持続性、または拍動性の痛みを生じます。頭を振ったり、下を向いたり、体を動かすことによって頭痛は増強する傾向にあります。ただ、小さな子供の場合は、その痛みをうまく表現することができないので、上述のように、表情や機嫌、泣き声などから状態を推測する必要があります。

項部(こうぶ)硬直

項部とは「うなじ」のことです。首筋が固まったかのようになってしまい、前に曲がらなくなってしまうなどの髄膜刺激症状が現れます。

ウイルス性髄膜炎の治療法

ウイルス性髄膜炎の場合は、ウイルスに対する特効薬はありませんので、対症療法となります。

安静にし、嘔吐や頭痛で水分がとれない場合には点滴を行います。

より重篤な症状を呈する細菌性髄膜炎である可能性を考慮して、細菌培養の結果が判明するまで(細菌性髄膜炎でないと確定されるまで)抗生物質を使用することがあります。

ウイルス性髄膜炎の後遺症

ムンプスウイルス(おたふく風邪)で髄膜炎になってしまった場合は、聴力が下がってしまう可能性があるので、髄膜炎から回復した後に検査を行うことがあります。

ウイルス性髄膜炎の予防

最も基本的な予防対策は、ウイルスに感染しないことです。問題となるウイルスの主な感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染ですので、一般的な風邪と同じ感染予防対策(手洗いやうがいなど)を励行することが大切です。また、患者との接触を極力避けるよう注意してください。

ムンプスウイルスによる髄膜炎は、ムンプスワクチン(おたふく風邪のワクチン)を接種することによって予防することができます。ですが上述の通り、このワクチンそのものが髄膜炎を引き起こす可能性があることを知っておいてください。

「子供の病気」に関する記事について

子供は様々な病気にかかります。当サイトでは、保育園や学校でもらってくる感染症やアレルギー性疾患など、それぞれの症状や治療法をご紹介しています。

〔子供がよくかかる感染症〕
子供がかかる典型的な感染症を列記します。詳しくは、それぞれの病名をクリックしてください。

インフルエンザ
高熱、寒気、頭痛・関節痛・筋肉痛など全身症状が現れます。11~3月ごろ流行します。
※タミフルやリレンザなどのインフルエンザ治療薬によって、飛び降りなどの異常行動が起こる事例が報告されています。

インフルエンザ脳症
インフルエンザの合併症。痙攣、意識障害、異常行動などを起こし、30%が死亡、25%に後遺症が残ります。
※具体的な事例をこちらにまとめました。

マイコプラズマ肺炎
発熱としつこく長引く咳が特徴。2016年秋の患者数が過去最高と報じられました。

川崎病
4歳以下の子供に多く発症する原因不明の病気。全身の血管に炎症が起こり、心筋梗塞のリスクを高める重篤な後遺症を残す危険性があります。近年増加の傾向があり注意が必要です。次の5つの記事からなります。
【川崎病1】急増する原因不明の難病、その症状と診断
【川崎病2】急性期の治療法「免疫グロブリン大量療法」
【川崎病3】後遺症に苦しむ子供たち・・・NHKの報道から
【川崎病4】後遺症の冠動脈瘤は、どのように形成されるのか
【川崎病5】冠動脈瘤をケアし、心筋梗塞を予防する

溶連菌感染症
喉のはれ、発熱などつらい症状を起こしますが、検査によって正確な診断が可能で、特効薬もあります。

水疱瘡
全身の発疹が特徴です。発疹は水ぶくれになり、かゆみを伴い、熱も出ます。

おたふく風邪
正式名称は「流行性耳下腺炎」。耳の下が腫れあがる症状が特徴です。

麻疹(ましん)=はしか
高熱と咳、鼻水、結膜炎、そして全身に発疹が現れる比較的重い感染症です。空気感染による非常に高い感染力が特徴です。
※年代別のワクチン接種状況と感染リスクについてはこちらを。
※1回のみのワクチン接種では効果がない理由はこちらを。

風疹
顔から全身に広がる発疹、発熱、耳の後ろあたりのリンパ節の腫れなどの症状を表すウイルス性疾患です。

先天性風疹症候群
妊婦が風疹にかかることによって、お腹の中の胎児にも風疹ウイルスが感染。その結果、生まれてくる赤ちゃんに引き起こされる白内障や心奇形、難聴といった障害のことを指します。

ウイルス性髄膜炎
発熱、頭痛、嘔吐が主な症状です。手足口病やヘルパンギーナ、おたふく風邪などの合併症として発症します。

〔夏の三大感染症〕
夏の乳幼児に流行する典型的な3つの病気があります。

手足口病
手と足と口の中にポツポツとした水疱性の発疹ができるのが特徴です。

ヘルパンギーナ
39℃を超える急な発熱と、喉の奥にできる水疱が特徴です。

咽頭結膜熱=プール熱
39℃を超える急な発熱と、痛みを伴う喉の症状(咽頭炎)と目の症状(結膜炎)が特徴です。

〔子供の貧血〕
「鉄欠乏性貧血」は、鉄分の不足によって起こる貧血です。成人女性によく見られる症状ですが、実は子供にも発症します。

乳幼児の鉄欠乏性貧血
乳幼児の鉄欠乏は発育に大きな影響を及ぼす危険性があると言われています。妊娠中の母親の鉄欠乏が、おなかの中の胎児の鉄欠乏の原因にもなるので、お子さんを授かったら、ママ自身のケアが重要になります。

思春期の鉄欠乏性貧血
思春期によく見られる「顔色が悪い」「疲れやすい」「注意力や集中力の低下」といった問題は、鉄欠乏が原因かもしれません。特に思春期の女性は、その約10%が治療が必要なレベルの鉄欠乏性貧血と言われています。

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