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【低血糖症の特殊な例】「インスリン自己免疫症候群」とは

疲労感やうつ、動悸など様々な症状をもたらす「反応性低血糖症」が近年注目を集めています。

そんな中、ちょっと特殊な原因、「抗インスリン抗体」によって低血糖症が引き起こされる「インスリン自己免疫症候群」についてお伝えします。

低血糖症とは

これまでにいくつかの記事を通じて「反応性低血糖症」についてお伝えしてきました。これについて簡単にポイントだけを列記すると、次のようになります。

  • 糖質を摂取すると、血糖値が急激に上昇
  • それに伴いインスリンが大量に分泌される
  • その結果、血糖値が急降下
  • 低血糖状態になり心身に様々な症状が現れる
  • 代表的な症状は疲労感、めまい、うつなど
  • 治療の基本は食事療法
  • 血糖値を急激に上げない食材が有効

発症の機序などは次の記事に詳しく書いてありますので、まずはこちらをお読みいただくのがいいかもしれません。

【反応性低血糖症の症状】「うつ傾向」「疲れやすい」は低血糖症の可能性が 有効な治療法はまだ知られておらず、食事療法が主な対処法となります。それについては、次の記事を参考になさってください。

【反応性低血糖症の治療】 食事の工夫と「低GI値」「低GL値」の食品 実例や体験談はネット上にもあまり公表されていませんが、2016年のAKB48の選抜総選挙で14位に入った岡田奈々さんが、選抜入りのスピーチで自分が機能性低血糖症(反応性低血糖症と同じ)であることを告白し、話題になりました。そのことに関連した記事がこちらです。

【機能性低血糖症】 AKB48岡田奈々さんの告白 加えて僕の高校生の長女が最近、反応性低血糖症と診断された経緯についても記事にしています。

【反応性低血糖症】僕の長女(高校生)の体験談 ここまでは最近注目を集め始めている反応性低血糖症についてですが、今回お伝えするのは、ちょっと特殊な原因、「抗インスリン抗体」によって低血糖症が引き起こされる「インスリン自己免疫症候群」についてです。

インスリン自己免疫症候群とは

抗体分子構造

インスリン自己免疫症候群とは、血糖値を下げる働きをするホルモン「インスリン」に対して、抗体が作られてしまう疾患です。

この抗体を「抗インスリン抗体」と呼びます。(上図は抗体の分子構造のイメージです)

「抗体」とは、体内に侵入してきた細菌やウイルス、微生物に感染した細胞を抗原として認識して結合する物質のことです。異物と認識した対象を排除しようとする生体の防御機構を担っているのが抗体というわけです。

自己の身体の一部を、何らかの原因によって「非自己」と誤認してしまい、排除しようとしてしまう作用を「自己免疫反応」といいます。

体内で重要な役割を担っているインスリンを排除すべき異物と誤認して、抗インスリン抗体が作られてしまうのが「インスリン自己免疫症候群」なのです。




抗インスリン抗体はなぜ作られるのか

インスリン注射

抗インスリン抗体が誤って作られてしまう最もよく知られた引き金は、糖尿病の治療で行われるインスリン注射です。体外から投与されたインスリンを異物と認識して抗体が作られてしまうわけです。

この場合、投与されたインスリンに抗インスリン抗体が結合して、インスリンの働きを阻害します。その結果、注射をしているのに効かない、つまり血糖値が高いまま下がらないという事態が起こります。

ですが、今話題にしているのは、このような糖尿病患者の例ではありません。インスリン注射を受けていない人の体内で、抗インスリン抗体が作られてしまうケースがあるのです。

ダイエットサプリの「αリポ酸」が原因?

インスリン注射を受けていない人の体内で、抗インスリン抗体が作られてしまう要因として、遺伝体質が関わっていると考えられています。

研究によって、HLA-DR4 というタイプの遺伝子が、ほぼ100%関係していることが明らかにされています。

この体質にある種の免疫刺激が加わると、インスリンに対する抗体が形成されると考えられています。

刺激をもたらす物質として、抗甲状腺剤のメルカゾール、肝庇護剤のチオプロニンやグルタチオン、そしてダイエットサプリメントの成分として知られる「αリポ酸」などが挙げられています。

これらの物質の構造の一部がインスリンのSS結合と呼ばれる箇所を切断し、それが自己免疫反応を惹起するというメカニズムが推測されています。難しいですね!

「αリポ酸」を含むダイエットサプリは、今も普通に販売されているので、安易に摂取するのは控えたほうがいいかもしれません。

なぜ抗インスリン抗体が低血糖を引き起こすのか

普通に考えると、インスリンの働きを阻害する抗インスリン抗体ができると、血糖値を下げることができなくなって、高血糖を招いてしまうはずですよね。

ではなぜ、抗インスリン抗体が低血圧を引き起こすのでしょうか。

その理由は、この抗体の性質によります。抗インスリン抗体は、インスリンとすぐに結合してその働きをいったんは阻害するのですが、結合力は比較的弱く、何かのきっかけですぐにはずれてしまいます。

そのため、結合していたはずのインスリンが大量に抗体から遊離すると、一気に血糖値を低下させてしまうのです。

血糖値が急降下すると、動悸や手足のふるえなど様々な身体症状、そしてうつや焦燥感などの精神症状が現れます。



インスリン自己免疫症候群の治療

基本的には反応性低血糖症の治療と同じです。食事制限ですね。

食事の回数を増やしたり、炭水化物の摂取を減らして低GI値の食品を取り入れたりすることで、急激に血糖値が上がらないように食事を工夫することが基本になります。

もちろん、αリポ酸を含むダイエットサプリを摂取している場合は、すぐに服用をやめることが重要です。

臨床例では、このようにコントロールすることで、抗インスリン抗体は、おおむね3ヶ月以内で身体から消失すると報告されています。

個人的な話ですが…

今回、なぜ「抗インスリン抗体」による「インスリン自己免疫症候群」というマイナーな話題を取り上げたのかといいますと、実は僕の高校生の長女が、つい最近の血液検査で抗インスリン抗体の値が高いという結果が出て、主治医から電話があったのです。

近いうちに主治医から詳しい説明を受けるのですが、その前にできる限りの知識を得ておきたいと考え、記事にまとめさせてもらいました。

ネット上にも情報が少なく、分かりやすい記事を書くのが大変でした。皆さんの参考にもなると幸いです。

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