【がん治療革命】プレシジョン・メディシンの衝撃!がん治療の最新情報(NHKスペシャル)

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日本人の2人に1人がかかる病、がん。その治療が根底から変わろうとしています。2016年11月放送のNHKスペシャルは、「“がん治療革命”が始まった~プレシジョン・メディシンの衝撃~」と題して、がんの最新治療法を伝えました。この期待の治療法について、補足情報も交えてお伝えします。

プレシジョン・メディシンとは

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Precision Medicineは、そのまま和訳すると「精密医療」。個人の遺伝子情報など詳細な情報をもとに「より精密な対応を行う医療」という意味で、特にがんの治療において目覚ましい進歩を遂げている分野です。

アメリカでは、プレシジョン・メディシンを国家戦略と位置づけています。2015年1月に、オバマ大統領が一般教書演説の中でその重要性を説き、2016年には80億円の予算を投じて2000の病院で大規模な臨床試験が始まったといいます。

がんは遺伝子変異によって起こる

がん細胞は、もとは正常だった細胞に遺伝子変異が起こることによって生まれます。

人間の細胞には、2万あまりの遺伝子があります。その中で、どの遺伝子に変異が起こるとがんになるかが分かり始めています。

例えば肺がんは、EGFR、ALKといった遺伝子に変異が起こることによって発生することが分かっています。

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こうした遺伝子変異は、それぞれタイプの異なる異常なタンパク質を作ります。このタンパク質が、がん細胞を異常増殖させる犯人となります。

この異常なタンパク質の働きを阻害するのが「分子標的薬」という新しいタイプの治療薬です。

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プレシジョン・メディシンは7割の患者に効果

従来の抗がん剤治療では、進行した肺がんに対しては、およそ3割の患者にしか効果が出ませんでした。

一方、プレシジョン・メディシンの場合は、がん細胞の遺伝子型を調べた上で、効果が見込まれる患者に絞り込んで投薬が行われるため、代表的な肺がんの分子標的薬の場合、およそ7割の患者で効果が見られ、がんが小さくなりました。

従来の抗がん剤治療に比べて、圧倒的に高い効果が期待できる治療法と言えます。

〔事例1〕

番組で最初に取り上げられたのは、48歳の男性。22歳でがんを患い、これまでに5回の手術と抗がん剤治療を受けてきました。そのたびに再発に苦しめら、2016年5月には、新たにリンパ節に転移が見つかりました。新たながんは、手術のできない箇所だと告げられました。

そのときに医師から、新たな治療法を試す臨床試験への参加を勧められます。それが、プレシジョン・メディシンに基づく分子標的薬の投与でした。

治療を開始してから2ヶ月。CT検査で、大動脈のそばにあるリンパ節のがんが4割も小さくなっていることが分かりました。治療は大きな効果を上げたのです。

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〔事例2〕

進行性の肺がんを患い、骨にまで転移している69歳の男性。手術では対応できないとされ、肺がんに通常使用される抗がん剤を使用してきましたが、効果が得られませんでした。2016年8月には、新たに肝臓への転移も見つかりました。

男性はプレシジョン・メディシンに基づく遺伝子解析の検査を希望。国立がん研究センター東病院を受診し、がん細胞を取り出すところから検査は始まりました。採取されたがん細胞は、遺伝子解析を行う検査会社に持ち込まれます。そこで最新の装置「次世代シーケンサー」を使って、がん細胞の遺伝子解析が行われます。

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肺がんの場合、現時点では16の遺伝子変異に対して、延命が期待できる分子標的薬が存在しています。期待する遺伝子変異がひとつでも見つかれば、新たな治療の可能性が開けます。

この男性の検査結果が出ました。しかし、残念ながら、この男性のがん細胞の遺伝子解析では、治療薬の存在する16の遺伝子変異に該当するものは見つかりませんでした。

男性とその家族は落胆の色を隠せないものの、新たな抗がん剤治療を行うことを選択。新薬の登場に希望をつなぎます。

〔事例3〕

4年前に進行性の肺がんと診断された女性。ステージ4との診断、68ミリの大きさのがんで、余命2年と宣告されました。4種類の抗がん剤を投与し治療を続けましたが、十分な効果は得られませんでした。

がんと診断せれた9ヶ月後、医師の勧めで遺伝子診断を受けました。その結果、RETという遺伝子に変異が見つかりました。しかし、この遺伝子変異のタイプに効く肺がんの薬はありませんでした。

その時、医師が提案したのは、甲状腺がんの分子標的薬でした。実はRET遺伝子の変異は、甲状腺がんを引き起こすものとして既に見つかっていて、薬も存在していたのです。同じRET遺伝子の変異なら、同じ薬が効くのではないかという予測で、臨床試験が始まりました。

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1ヶ月後。68ミリあったがんは、なんと48ミリに。2ヶ月後には、さらに縮小が見られました。この女性は、当初2年と言われていた余命をはるかに超え、5年目を迎えています。彼女の例が、いま起きているがん治療革命の典型的な成功例と言えます。

この女性はその後のCT検査で、心臓の近くのリンパ節に新たな転移が見つかります。分子標的薬の効果の持続には限界があったのです。

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しかし幸い、RET遺伝子の変異に対する分子標的薬には、複数のタイプがあります。この女性は、新たな薬の臨床試験を受けることになりました。

女性は言います。「RET遺伝子の変異を見つけてくれた先生に感謝します。あとは薬が頑張ってくれると思います」

この女性の事例のように、がんの治療は、これまでのように臓器別で考える時代から、遺伝子変異別に考える時代に、大きく舵を切っていくことになります。

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抗がん剤よりも優先される治療に

がん治療の第一選択は、やはり手術です。これに勝る治療法は、現段階ではないと言います。

そして、第二選択は、放射線治療。

この次の選択として、これまでは抗がん剤治療がきました。それが今後は、プレシジョン・メディシンによる分子標的薬の投与になっていくだろうと考えられています。

抗がん剤は、効くかどうかはやってみなければ分かりません。そして、抗がん剤は、がん細胞だけでなく、増殖する他の細胞をも殺してしまうので、髪の毛が抜けるなどの副作用も問題でした。

その点、プレシジョン・メディシンは、効果が期待できる患者に対して最適な薬を投与するため、あらかじめ高い確率での効果が見込めること、そして分子標的薬は問題となるタンパク質を選択的にたたくことができるため、副作用も少ないことが大きなメリットとなります。

※ただし、まれに重篤な副作用が起こることも報告されいてます。

遺伝子解析でも原因が分からないことがある

〔事例2〕の69歳の男性患者のように、せっかく遺伝子解析の検査を受けても、原因の遺伝子変異が特定できないことがあります。

番組では、最も研究が進んでいる肺がんを例に、遺伝子解析の結果を示した円グラフが示されました。

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全体の半数あまりの患者は、EGFRとALKという遺伝子に変異が起きていて、これに対しては既に保険適用の薬があります。

オレンジの部分に該当する患者には、効果が見込まれる薬はありますが、まだ臨床試験の段階です。

残りの2割の患者は、そもそも原因となる遺伝子変異が特定できず、薬がありません。

実は、がんの原因となる遺伝子変異を特定することは容易ではありません。がんに関わる複数の遺伝子変異が同時に起きていて、どれが直接の原因か特定するのが難しいのです。

患者を支える「メディカル・コンシェルジュ」

希望をもって遺伝子解析の検査を受けたにもかかわらず、原因が特定できず、薬が紹介されなかった患者の落胆は、非常に大きいものがあります。彼らを支える試みとして、北海道大学病院では、「メディカル・コンシェルジュ」というスタッフを置いています。

メディカル・コンシェルジュは、治療薬の見つからなかった患者と継続的に連絡をとり、心の支えになります。そして、より重要な役割は、近い将来、新薬が登場したときに、すぐに連絡がとれる関係を築いておくことにあります。

この分野は日進月歩。数ヶ月後には、新薬の臨床試験が始まるということも、実際に起こりえます。その時に迅速に連絡をとって、治療につなげていくことができれば、せっかく行った遺伝子解析の検査も無駄になりません。

実際にプレシジョン・メディシンの治療を受けるには

まずは、日本の国家プロジェクト「スクラム・ジャパン」に参加している医療施設の外来を受診し、遺伝子変異について解析してほしいと依頼をします。

スクラム・ジャパンとは、国立がん研究センター東病院を中心に、全国の医療機関と製薬会社が協力する大プロジェクトです。2016年11月現在、全国235の病院と15の製薬会社が参画しています。

スクラム・ジャパンの外部リンクは、こちらへ。

遺伝子解析の検査には保険が適用されない

遺伝子解析の検査は保険適用外で、自由診療になります。北海道大学病院の例では、1回の検査に40~100万円の費用がかかるとのことです。

北海道大学病院では、2016年11月現在、62人の患者の遺伝子解析を行い、そのうち29人に効果が期待できる薬を紹介してきました。しかし、半数以上となる33人は、原因となる遺伝子変異が分からなかったか、最適な薬が見つからなかったため、治療に結びついていません。

薬があっても多額の薬代がかかるケースも

北海道大学病院の患者の例で、子宮体がんを患った女性が紹介されました。遺伝子解析の結果、彼女に紹介された薬は、腎臓がんや乳がんに使われる薬でした。この薬は、子宮体がんに使われる場合には保険が適用されません。その結果、毎月の薬代は90万円に上ります。

この女性は、「こんなにお金がかかってしまって、夫に申し訳ない」と語っていました。治療の道が開けただけ運がよかったと言えるのかもしれませんが、この高額な治療費を考えると、身につまされるものがあります。

今後はより迅速に保険適用される可能性も

異なる臓器のがんに対して、薬を応用していくことに対して、厚生労働省もPMDA(医薬品医療機器総合機構)も積極的になってきているといいます。これまでよりも、より少ない臨床試験で、より迅速に保険適用されていくことも期待されています。

人工知能が治療薬の決定に成果

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IBMが開発した人工知能「ワトソン」が、プレシジョン・メディシンの領域でも、この2年ほどの間に驚くべき成果を出しているといいます。

先ほど述べたように、遺伝子解析した人の2割ほどは、原因となる遺伝子変異が特定できないのが現状です。ワトソンはそういったケースで活躍します。がんの遺伝子変異について書かれた2300万件にのぼる論文をワトソンに学習させたところ、複数の遺伝子変異を持つ患者に対して、原因となる遺伝子変異を特定すると同時に、最適な薬まで選び出したというのです。

アメリカ政府は、こうした研究開発に本腰を入れて取り組んでいます。膨らみ続ける医療費を抑制することが狙いです。プレシジョン・メディシンが進めば、効果の期待できる治療に絞り込むことができるため、無駄打ちの治療が減り、医療費の大幅な抑制が期待できるのです。

まさに日進月歩。いま治せないものが、数ヶ月後には治療薬が開発されている可能性があるのです。

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