【大人の発達障害】夫のアスペルガーは妻の「カサンドラ症候群」を引き起こす(僕の体験談4)

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皆さんは「カサンドラ症候群」をご存じでしょうか。アスペルガー症候群のパートナーを持つ人が相手との関係に悩み、心身を病んでいくものです。世間にはほとんど知られておらず、医学の世界でも正式には認められていません。僕の妻もカサンドラでした。

カサンドラ症候群とは

僕の体験を語る前に、「カサンドラ症候群」について説明しておきましょう。

カサンドラはギリシア神話の女神

カサンドラ

カサンドラとは、ギリシア神話に登場するトロイの王女の名前です。太陽神アポロンに愛されたカサンドラは、アポロンから予知能力を授かります。しかし、その能力でアポロンに捨てられる未来を予知したカサンドラは、アポロンの愛を拒絶します。怒ったアポロンはカサンドラに呪いをかけ、カサンドラの予言を誰も信じなくさせてしまいます。カサンドラは未来の真実を知って人々に伝えても、決して信じてもらうことができませんでした。

アスペルガーの夫が妻を病気にする

このカサンドラの置かれた立場が、アスペルガー症候群の夫を持つ妻の立場と重なる部分があるということで、妻に現れる心身の症状を「カサンドラ症候群」と呼びます。どんな点が似ているのでしょうか。

アスペルガー症候群の夫を持つ妻は、家庭内において夫が人の気持ちをまったく考えずに、ひどいふるまいをしているという「真実」を知っています。そのことを世間の人々に伝えて助けを求めようとしても、誰も信じてくれません。なぜなら夫は社会の中では一見普通にふるまい、うまく立ち回っているからです。苦しんでいる妻は嘘つき扱いされ、夫による心の傷に加え、世間の無理解によってさらに心身を病んでいくことになります。これを「カサンドラ症候群」と呼びます。

ここでひとつお断りしておきます。カサンドラ症候群は、妻のみが発症するものではなく、アスペルガー症候群の妻を持つ夫にも起こります。ですが、この記事ではシンプルな記載にするために、あえて「妻」と書かせていただきました。アスペルガー症候群が圧倒的に男性のなりやすい障害であるため、カサンドラ症候群を患う被害者は多くのケースで妻の側となるためです。ご了承いただければと思います。

妻の苦しみの原因を医師は見抜けなかった

僕は自分に発達障害の傾向、特にアスペルガー症候群の傾向があることに、ずっと気付きませんでした。妻と出会ってもう20年近く経ちますが、妻がそのことを指摘したのは今から5年ほど前。しかも僕は妻からの指摘を受けても、なかなかそれを認めることができず、ようやく受け入れたのは、ほんの2~3年前のことです。つまり妻は、僕と出会ってから15年以上も、僕という人間に対して得体の知れない違和感を感じながら、傷つき心身を病んできたのです。

妻は僕と付き合い始めた学生時代に、早くも精神的な不調を感じ、心療内科で安定剤を処方されています。その時の医師からは、はっきりと「そんな男とは別れた方がいい」と言われていたそうです。この医師は、彼女の症状の原因がパートナーにあると見抜いた、ほとんど唯一の心療内科医でした。この助言を聞き入れて、彼女が僕と別れる選択をしていたならば、彼女の人生はずいぶん違ったものになったかもしれません。ですが、彼女は僕と付き合い続ける道を選びました。そして、その後、妻の不調の原因が夫にあると見抜く医師は現れませんでした。

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僕は「病弱の妻を支える健気な夫」を演じた

妊娠・結婚をめぐる一連の騒動を経て、地方での結婚生活が始まって間もなく、彼女の精神状態はどんどん悪化していきました。慣れない土地での新生活、慣れない主婦業、妊娠をめぐる不調など、様々な要素があったと思いますが、最大の原因は、日常における僕の思いやりにかける言動や、彼女に対する共感の欠如にありました。

僕は彼女を様々な病院に連れていきました。そういう表面的な部分では僕は彼女のために動いていたわけですが、本気で彼女のおかれた環境を改善しようとしたり、自分自身の在り方を顧みたりすることはありませんでした。妻はうつ病と診断され、処方される薬は増え続けました。薬の副作用で胃の調子が悪くなると胃薬が追加され、頭痛がひどくなると頭痛薬が追加され、徐々に薬漬けになっていきました。妻は回復しない自分を責め、医療費が高額になることをいつも気にしていました。

あるとき妻は医師に対して、夫への不平を述べたことがありました。その医師は、妻に対して優しい言葉をかけることなく、こんな風に説教をしました。

「あなたのご主人は素晴らしい人です。それを理解できないあなたに問題がある」

この言葉を聞いたときの妻の絶望は、どれほど大きかっただろう。誰からも信じてもらえなかったカサンドラそのもの。妻の味方は誰もいなかったのです。

僕はというと、その医師の言葉を聞いて、こんな風に思っていました。

「やっぱりそうだろう。僕に問題などないのだ。妻が病気なった原因は妻自信にあるのだ」

僕は、なんてひどい人間なんだろう。これこそが、相手の心を理解できないアスペルガー症候群なのです。まさにモンスター。ほとんどの医師が見抜くことができなかったように、僕は表面的には世間でうまく立ち回っていました。ですが実際には、人に媚び、誰かを悪者に仕立て上げて自分の立場を有利にするという卑怯な手を使いながら、社会の中で何とか体面を維持していました。その「悪者」が誰かと言えば、妻だったのです。

病弱な妻を支える健気な夫。大企業でハードな仕事をしながら家庭も大事にする優しい夫。妻の病気を利用して、巧みに自分を「いい人」に仕立て上げる。これが僕が妻との結婚生活で手に入れた処世術でした。このことを、どの医師も見抜くことができなかったのです。

さらに踏み込んで言えば、僕は彼女の病気を利用したのではない。彼女を病気の状態にし続けることで、自分は「妻を支えるいい夫」であり続けようとした、といのが本当のところです。妻との間に強力な「共依存」の関係を築き上げたのです。

「共依存」という蟻地獄が妻を病気にし続けた

妻をわざと病気にし続ける夫なんて、いるのか!?信じられないでしょう。僕も信じられません。これは完全に無自覚に行われることなのです。

僕はこれまでの記事にも書いたように、自立できないまま大人になってしまいました。発達障害の傾向から目を背け、この社会で生き抜くために「自分」をなくして、人に媚び続けて生きてきました。

恋人や夫婦といったパートナーシップは、お互いが自立していなければ健全な関係は結ぶことができません。お互いが、まず自分自身の人生を主体的に生き、その上で相手の人生を尊重する。相手の人生を本当に大切なものとして扱うためには、自立していることが不可欠なのです。

僕のように自立していない人間、しかも自己愛を肥大化させた悪質な人格障害を持つ人間が、誰かとパートナーシップを築こうとしたときに、何が起こるのか。まず相手から「自立」を奪います。そして相手が自分なしでは生きていけない状態を作り出します。それが自分の唯一の存在価値となるので、相手が自力で立ち上がろうとするのを徹底的につぶします。

僕と妻の間には、この恐ろしい関係が強固に築かれていました。無自覚に相手を傷つける言動を投げかけ、相手の精神を削る。アスペルガーによるモラルハラスメントと言っていいでしょう。弱った相手を健気に世話する。しかし、本当に健康になるようなケアは決してしない。元気になられると、「妻の世話をしてあげる優しい夫」でいることができなくなるからです。こうした共依存の中で、妻はなんと15年以上も苦しみ続けたのです。

具体的なエピソードは挙げればきりがありませんが、この記事はこのくらいにしておきたいと思います。こうして書いていると、自分という人間のあまりのおぞましさに愕然とします。

「大人の発達障害」一連の記事について

孤独3

「大人の発達障害」について、いくつかの記事を書いています。これらは医学的な専門知識をまとめたものではなく、あくまで僕個人のケースについて記したものです。大人の発達障害の症状は人によって千差万別ですので、僕の例はその重さも傾向も他の方とはまったく違うと思います。

正確な情報は専門家の著述を参照していただくとして、僕は僕にしか書けない個人的な事情を記しておきたいと思います。以下のような構成になっています。順にご覧いたけると分かりやすいかもしれません。

【大人の発達障害】ADHDとアスペルガー症候群の並存…結婚して気付いた自分の致命的な欠陥(僕の体験談1)

【大人の発達障害】ADHDとアスペルガー症候群の二次障害として「自己愛性パーソナリティ障害」が形作られた(僕の体験談2)

【大人の発達障害】アスペルガー症候群と自己愛性パーソナリティ障害は結婚生活を破壊する(僕の体験談3)

【大人の発達障害】夫のアスペルガーは妻を追い詰め、「カサンドラ症候群」を引き起こす(僕の体験談4) ←いまここ!

【大人の発達障害】「カサンドラ症候群」の実例から学ぶ・・・アスペ夫の言動のすべてが妻を追い詰める(様々な体験談から)

【大人の発達障害】自己愛性パーソナリティ障害は治療できるのか?妻に見放されて初めて自覚した心の闇(僕の体験談5)

【大人の発達障害】治療への道のり・・・自分をさらけ出せる友人との出会いが僕の道しるべとなった(僕の体験談6)

〔追記〕その後、僕たち夫婦の関係は決定的に悪化してしまい、ついに「家庭内別居」の状態に至ってしまいます。その引き金となったのは、次女の出産時に起こった「産後クライシス」でした。それらのことについては、こちら↓をご覧ください。

【パートナーシップ】僕たち夫婦が「家庭内別居」をすることになった理由、そして「希望ある離婚」とは

【産後クライシス】妻が僕を憎むようになった理由… 妻の怒りに夫としてどう向き合うか(体験談)

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2 Responses to “【大人の発達障害】夫のアスペルガーは妻の「カサンドラ症候群」を引き起こす(僕の体験談4)”

  1. ヤマモトアキ より:

    初めましてヤマモトと申します。

    少しですが記事を読ませて頂きいつもは読むだけで終わるのですがこんな風にコメントするのは初めてで居ても立っても居られず質問させてください。

    私は今妊娠4ヶ月目で無痛分娩を希望していて色々リスクを調べているところこちらに辿りつきました。読んでも無痛分娩を辞めることは無いですが副作用やリスクをきちんと夫婦で勉強し、向き合っておく大切さをこちらを通して学ぶことが出来ました。

    どちらかというとそのことよりADHDのことで伺いたいのです。

    私の父は最近ADHDという事がわかりました。その前はうつ病という事で15年以上も前から治療を続けています。もっと言えば私が幼いころ、25年も前から精神科には通っていたと聞いています。それはDVでした。母、兄、私へのDVでまだ悲惨な家庭に比べて軽かったと私は思っていますがあれがDVだったということは私が成人してから他人に言われて気づきました。その時はずっとモヤモヤしたものが軽くなったことを覚えています。今は暴力はありませんがADHDの症状が酷く母に出ます。そして父も人を扱う立場にあり、世間では立派な地位にいます。

    そんな父に育てられた私も暴力的なのです。DVは継いで行くというのを以前に聞いた事があり自分が怖くなる時があります。そこまでひどい暴力ではないと思いますが自分の思い通りにならなかったり、夫に苛立つと直ぐに手が出てしまうのです。
    そして今回父のADHDとの診断で症状を読むと幼かった自分から今に至るまで当てはまる事がいくつもありました。それを読みまさか自分も?ととても心配になってしまいました。そしてそんな自分が子供に影響を与えず育てていけるのか、不安になっています。夫に精神科に行こうか話したら、まだいかなくていい、危なくなったら行くように自分から進めるから今のままで良いと言うのです。

    でも貴方の記事を読んでいるとそうなってからでは遅いのではないか、そうなったら夫は私の元にいないのではないか、と感じました。

    失礼な質問かもしれませんが貴方は早めの精神科受診をお勧めしますか?

    このような内容を送るのが適切でなかったら申し訳ありません。

    ヤマモトアキ

    • eiji-maru より:

      コメントに対する返事

      ヤマモトアキさん、コメントありがとうございます。

      ご両親とのこと、出産を控えての夫婦のことなど、思い悩まれているんですね。僕は専門家ではないので、適切なお返事ができるか分かりませんが、個人的な経験から書かせていただきます。

      お父様が若いころから精神科に通われ、ここ15年はうつ病、そして最近ADHDの診断がなされたのですね。DVの傾向もあったとのこと、本当に長い年月、ご本人はもちろん、ご家族もつらい思いをされてきたことと思います。

      発達障害という考え方には、賛同しない医師も多くいると聞きますが、アキさんのお父様の場合、ADHDという診断結果を、今後のためにうまく活用するのがいいように思います。

      若いころに精神科に通うことになった原因も、うつ病に至った原因も、DVの原因も、すべてADHDによって説明がつく可能性があります。

      ADHDは、注意力が散漫で失敗が多いのがひとつの特徴ですから、お父様は社会や家庭において、うまくいかないことが多かったのではないでしょうか。そしてADHDのもう一つの特徴は、衝動を抑えられない点にあります。失敗して傷ついて精神的に追い詰められたとき、暴力の衝動を抑えきれず、DVにつながってしまったのかもしれません。

      お父様は、医師から下されたADHDの診断を、受け入れておられるのですか。もし素直に受け入れておられるのでしたら、改善への希望があるように思います。

      ADHDについての知識をもったカウンセラーにもアドバイスをもらいながら、今もお母様の前で出てしまっているADHD的な言動を見つめて、自分の心の動き、身体の変化、行動に至るプロセスを把握できるようになれば、コントロールできるようになるかもしれません。

      それは、アキさんご自身の希望にもなるでしょう。

      アキさんは、どんなときに苛立ってしまいますか?苛立つと身体にどのような変化が起こるのか、その変化はどのように行動化していくのか。それをつかむ訓練はできると思います。

      僕の場合は、瞑想が役に立ちました。瞑想にも色々な種類があるそうですが、僕が取り組んだのは「気付きの瞑想」と呼ばれるもので、今この瞬間に起こる身体の微細な変化に気付き続ける、というものでした。

      その感覚が身につくと、対人関係の中で心が苛立ったとき、ほぼ同時に身体に起こる変化に気付くことができます。例えば、鼓動が早くなったり、体温が上がったり、背中の筋肉がこわばったり、といった微細な変化です。そうした身体の変化から、自分の感情の変化に気付くことができるのです。そして、その感情が行動化してしまう前に、しっかりと味わって手放していく、という選択をすることができます。

      アキさんが旦那さんに手を上げてしまうとき、その感情をただ抑え込んでしまってはいけません。いつか必ず爆発します。そうではなくて、その感情にきちんと気付いて、味わって、手放すのです。

      ADHDは程度が軽ければ、こうした「気付き」と「手放し」で克服していけるものだと僕は信じています。(程度が重い場合は専門家との長期にわたる治療が必要かもしれません)

      アキさんが、今回僕にこうしたメッセージを送って下さったのは、自分の課題に気付いて、それをどうにかしたいという思いがあったからでしょう。でしたら、僕はきっと大丈夫だと思います。

      旦那さんは精神的に落ち着いた方とお見受けしました。これから出産、育児が始まるにあたって、アキさんの要望や思いを、旦那さんに丁寧に伝える努力をしてみてください。男性は、女性の細かな要望や思いには気付かないものです。でも悪気はないのです。きちんと伝えてくれれば、愛する妻のためにどんなことでも協力したいと思っているはずです。旦那さんのことを信じて、伝え続けてみてほしいです。

      僕は、これまでの自分の生い立ちや、妻との関係を振り返って、色々とつらいこともあったし、妻にもつらい思いをさせてきたけれど、もっと自分を許してもいいんだ、と今は思っています。

      自分を許し、自分をいたわり、自分を癒やし、大切にする。そこから、気付きも愛も生まれてくるのではないでしょうか。

      特にアキさんは妊娠4ヶ月の大切なときです。もっともっと自分を大事にしていいと思いますよ。旦那さんにも、「もっと私を大事にしてね」とかわいくお願いしてみてはどうでしょう。

      なんだか、答えになっていないような気もしますが、お許しください。元気な赤ちゃんが生まれてきますよう、僕も影ながら応援しています。

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