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【流行性耳下腺炎=おたふく風邪】耳の下の腫れが特徴の子供の病気、症状と治療法

子供がよくかかる病気の代表格のひとつ、おたふく風邪。正式名称は「流行性耳下腺炎」。耳の下が腫れあがる症状が特徴です。症状、対処法、ワクチンなどについて基本的な情報をお伝えします。

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)とは

おたふく風邪とはどのような病気なのか、まず概要からご説明します。
(子供のかかる病気は、こちらにまとめています)

原因は「ムンプスウイルス」

ムンプスウイルス

ウイルスに感染することで、口の中にある唾液を分泌する耳下腺(じかせん)が炎症を起こす病気を「耳下腺炎」といって、主にコクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルスと呼ばれるウイルスによって引き起こされます。

その中で、ムンプスウイルスというウイルスによって引き起こされるのが「流行性耳下腺炎」、つまりおたふく風邪です。

潜伏期間は2~3週間

おたふく風邪の潜伏期間、つまりウイルスが体の中に入ってから症状が現れるまでの期間は2~3週間、平均すると18日前後かかります。ノロウイルス(潜伏期間24~48時間)やインフルエンザウイルス(潜伏期間2日前後)に比べて潜伏期間が長いのが特徴です。

感染経路

おたふく風邪の感染経路は、主に次のふたつです。

飛沫感染
患者の咳やくしゃみの飛沫を通じて感染する。

接触感染
患者の手についたウイルスが周囲に付着し、それに触れることで感染する。

接触が濃厚な保育園や幼稚園、そして家庭内では、感染を避けることは難しいのが現実です。

感染しやすい年齢は3~6歳

感染し発症する年齢としては、4歳がもっとも多く、続いて5歳、3歳の順に多く発症します。3~6歳で約60%を占めているとされます。0歳での感染は少ないとされています。

大人になってから感染すると重症化すると言われているため、幼少期に近所でおたふく風邪の子供が出ると、感染して免疫をつけるために、わざわざ患者の家にもらいに行くということが、僕の子供時代には普通に行われていたようですが、今はどうなのでしょう…

おたふく風邪の症状

おたふく風邪の症状を順を追って見ていきましょう。

潜伏期間中の初期症状

ウイルスの潜伏期間である2~3週間の間に、次のような症状が現れます。

  • 頭痛
  • 食欲が落ちる
  • 機嫌が悪い状態が続く

これらの症状に続いて、本格的なおたふく風邪の症状が現れるようになります。

耳下腺の腫れ

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潜伏期間を経て、まず現れてくるのが耳の下の違和感です。小さく腫れ始めたり痛みを感じ始めたりします。

特徴的な部位としては、耳の下、頬の後ろ側、あごの下といった耳下腺部が腫れてきます。通常は片側からはじまります。その後、1~2日間で腫れが両側に拡がります。片側しか腫れない場合もあります。

腫れは1週間~10日ほどで治まってきます。

腫れに伴う痛み

耳下腺部の痛みは腫れとともに現れて、3日ほど続きます。痛みが強く、食べ物を噛めない、飲み込めない、会話がつらいといった症状が起こります

発熱

おたふく風邪にかかると、熱が出ることがあります。ただし、個人差があり、熱が出ないこともあります。年齢が低ければ低いほど発熱する確率は低くなると言われています。

発熱があった場合、発熱から12~24時間後に唾液腺が腫れはじめ、同時に体温は40℃前後まで上がることもあります。それでも、多くは1~3日ほどで解熱に向かいます。

もしも高熱が5日以上続く場合は、髄膜炎などの合併症を併発している可能性があるため、注意が必要になります。合併症については、この記事の後半で取り上げます。

その他の症状

次のような症状も起こる場合があります。

  • 鼻水などの風邪に似た症状
  • 食べ物が飲み込みにくくなる(嚥下障害)

他人に感染させる期間

耳下腺が腫れる7日ほど前から、腫れた後の9日目くらいまではウィルスが上気道から排泄されて、感染力を持ちます。中でも、耳下腺が腫れ始める前後5日間は、感染力がもっとも強くなる期間とされていますので、注意が必要です。

耳下腺の腫れが治まってくる頃には感染力は弱くなっていきます。

症状が現れないことも

感染しても病原性が弱い場合や、免疫力がしっかりしている場合には、症状が現れないことがあります。これを「不顕性感染」と言って、感染者全体の30~35%も占めています。こういった感染者を通じて、気付かないうち感染が拡がってしまうという事態が起こります。

1歳未満のケース

1歳未満の幼児の場合は、症状らしい症状が出ないまま終わる不顕性感染も多く、はっきりとした症状が出にくいとされています。顔のまわりが普段より何となくずんぐりしている、エラが張った感じがする、食べるのを嫌がることがある、などの変化が見られるときには、おたふく風邪を発症している可能性があります。

おたふく風邪の治療法

おたふく風邪には特効薬がありません。対症療法が中心となります。

発熱、痛みへの薬

発熱や痛みに対してはアセトアミノフェンの内服薬や坐薬、イブプロフェンといった解熱鎮痛薬が使われます。必要以上に解熱鎮痛薬は使わない方がいいので、熱が非常に高くなった場合や、痛みが非常に激しいときにのみ、使った方がいいでしょう。

食べやすい食事を

腫れが痛くて食事がうまく摂れないこともあるので、症状が落ち着くまではあまり噛まずに食べられるゼリー飲料や、プリン、ヨーグルトなどを用意するようにしましょう。ポタージュスープなどで、簡単に栄養を摂取できるような工夫もしてあげたいところです。

予防法

ムンプスウイルスは、外側がエンベロープと呼ばれる脂質の二重膜で包まれていて、この部分がヒトの体の細胞に吸着することで感染します。このエンベロープは脂質でできているので、エタノールなどの消毒薬で破壊することができ、感染力を弱めることができます。インフルエンザウイルスも同様の構造をしています。こうしたウイルスには、手洗いやうがい、アルコールによる消毒が有効です。

保育園や幼稚園など子供が集団でいる場所では、感染のリスクをゼロにすることはできませんが、常日頃から手洗い、うがい、アルコール消毒を習慣にしておくよう、子供に教えてあげることは大切だと思います。

ワクチン

ワクチン

おたふく風邪の症状を軽減させるための、もっとも効果的な方法は、ワクチンだと考えられています。1回の接種によって、90%の確率で将来おたふく風邪になるリスクを回避できるとされています。

おたふく風邪のワクチンは、1歳の誕生日以降に受けることができるようになり、生後24~60か月(2~5歳)の間に接種することが望ましいとされています。接種は定期予防接種ではなく任意接種なので、自己負担で1回5,000~7,000円ほどと、やや高い料金となります。自治体によっては、公費助成制度があり助成金を出してもらえるところもあります。助成金には年齢制限などがあるので、各自治体に事前に問い合わせるとよいでしょう。

子供が小さいうちは、抗体がなかなか定着しないので、2回接種を受けることが推奨されています。

間違えやすい別の病気

急性化膿性耳下腺炎

「急性化膿性耳下腺炎」は、ウイルスではなく細菌の感染によって引き起こされる病気です。耳下腺の発赤とずきずきとうずくような強い痛みを伴って腫れてきます。

おたふく風邪では耳下腺の腫れは赤くならないので、区別が可能となります。

反復性耳下腺炎

「反復性耳下腺炎」は、耳下腺の腫れが急に起こる病気で、当初の見た目ではおたふく風邪との見分けが難しい病気です。ただ、おたふく風邪と異なる特徴として、腫れた翌日からは徐々に腫れが小さくなっていくことが挙げられます。おたふく風邪の場合は、徐々に腫れが強くなり、3,4日後にピークとなるのが特徴なので、その違いが診断のポイントとなります。また、耳下腺だけでなくあごの下(顎下腺)も腫れてくれば、おたふく風邪の可能性が高くなります。

ただ、素人には判断することはできないので、必ず受診して、正しい診断を仰ぐようにしてください。

おたふく風邪の合併症

おたふく風邪そのものは、軽症ですむ場合が多いのですが、こじらせると難しい合併症を引き起こす危険性があります。以下に、心配される合併症を挙げます。いずれも高熱を原因として引き起こされる深刻な病気です。

  • 髄膜炎(おたふく風邪患者の約10%)
  • 脳炎(おたふく風邪患者の約0.2%)
  • 難聴(1/15,000の確率)
  • 膵炎
  • 目の充血、目やに

いくつか詳しく見てみましょう。

髄膜炎

「ウイルス性髄膜炎」は、おたふく風邪の合併症としては最も起こりやすいもののひとつです。10人に1人が髄膜炎になるわけですから、かなりの割合ですよね。耳下腺が腫れてきてから数日後に髄膜炎を発症します。病初期よりも治りかけたころ(5、6日後)に起こりやすくなります。

頭痛や嘔吐の症状が現れたら、髄膜炎を考えます。また、発熱は病初期の3~4日目で下がってくるのが一般的ですが、5~6日たっても発熱が続くときには髄膜炎の合併を疑うことになります。

ウイルス性髄膜炎についは、こちらに詳細を記しています。

睾丸炎(精巣炎)、卵巣炎と不妊のリスク

15歳以上でおたふく風邪にかかった人の中で、男性は30%が睾丸炎(精巣炎)を、女性は7%が卵巣炎を発症するという報告があります。おたふく風邪による高熱が原因と考えられます。

睾丸炎を起こすと睾丸が著しく腫れてきて、痛みも強くなります。3~7日で軽快していきます。多くの場合、片方の睾丸に症状が起こります。

こういった合併症によって、不妊のリスクが高くなると言われますが、睾丸(精巣)も卵巣も必ずふたつが対になって備わっています。仮に一方の睾丸(精巣)、卵巣が炎症を起こしてしまったとしても、必ず不妊になるわけではありません。

そういう意味で、「成人してからおたふく風邪にかかると不妊になる」というのは、ちょっと強調されすぎなのかもしれません。

膵炎

発熱と激しい上腹部痛、嘔吐などを伴って急激に起こる合併症です。発症から3~7日で徐々に軽快していきます。

感音性難聴

「感音性難聴」は、内耳から聴神経に異常が起こる神経性の難聴です。音は耳に入ってきているのに電気信号に変換する処理がうまくいかなくなります。治療法はなく、補聴器を使ったとしても、完全には聞き取る能力は戻らず、生活上の困難が続くことになります。

おたふく風邪の合併症として起こる確率は15000人に1人と非常に低いので、心配しすぎることはありませんが、難聴は、子供が小さい場合には自分で訴えることができないため、親が気づくことができずに発見が遅れる危険もあります。

発症後5日は出席停止

おたふく風邪のムンプスウイルスは非常に感染力が高いため、法定伝染病に指定されています。よって、おたふく風邪にかかると保育園や幼稚園、学校では出席停止の処置がとられます。基本的に発症後5日間は登園・登校ができなくなります。

発症から5日以上が経って、耳の下の腫れや熱、痛みなどが落ち着いたら、医師の診断書や出席許可証を提出することで登園許可をもらえます。

「子供の病気」に関する記事

子供は様々な病気にかかります。当サイトでは、保育園や学校でもらってくる感染症やアレルギー性疾患など、それぞれの症状や治療法をご紹介しています。

下のボタンから「子供の病気」に関する記事を分かりやすくまとめたページをご覧いただけます。ぜひ参考にしてください。

子供の病気の記事まとめ

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