【麻疹=はしか】子供の病気、症状と治療法

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麻疹(=はしか)は、高熱と咳、鼻水、結膜炎、そして全身に発疹が現れる比較的重い感染症です。合併症で命を落とすケースもあります。症状、治療法、ワクチンなどについて基本情報をまとめます。

2016年の流行

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2016年8月に関西空港、千葉の幕張メッセ、兵庫県尼崎市の保育園などで、麻疹(ましん)=はしかの集団感染が確認されました。

インドネシアのバリ島で麻疹に感染したと思われる男性から、関西空港の職員や利用客に感染が広がったと考えられています。

この男性は8月9日に39℃を超える発熱、13日以降には全身に発疹が現れていたにもかかわらず、14日に幕張メッセで行われたコンサートに行き、感染を拡大させたと考えられています。感染者は9月時点で40人に上っています。

兵庫県尼崎市の保育園でも、園児や職員6人に感染が確認され、その後の感染の拡大が懸念されています。感染者はいずれも関西空港を利用していないと言い、感染ルートは特定されていません。

患者はみな回復に向かっており、合併症による死亡例などは報告されていません。

麻疹(ましん)=はしかとは

麻疹とは、麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性疾患です。まずはその原因となる麻疹ウイルスについて見ていきます。

麻疹ウイルス

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麻疹ウイルスは、非常に感染力の強いウイルスです。A~Hの8クレード、24の遺伝子型に分類されます。遺伝子型を調べることによって、感染経路や感染地域を推定することができます。

麻疹が流行る季節

麻疹の流行には季節性があり、初春から初夏にかけて患者発生が多いと言われています。

麻疹の強い感染力

麻疹は、一般的な感染症の中では最も感染力が強いことが知られています。この「感染のしやすさ」を数値化したものが「RO(基本再生産数)」です。ワクチン接種などを受けていない集団に対して、1人の患者が何人に感染させてしまうかを表した数値です。

「RO」が1であれば、1人の患者が1人に感染させるということを意味します。インフルエンザの場合、ROは1~2くらいといわれています。つまりインフルエンザに感染した1人は、まわりの1~2人に感染させることになるわけです。

では麻疹の感染はどうか。なんと、麻疹のROは12~18、つまり麻疹を発症した1人は、まわりにいる12~18人もの人たちに感染させてしまうのです。この結果を見れば、麻疹が他の感染症に比べて約10倍の感染力を持っていることが分かります。

日本における麻疹流行の歴史

2000~2001 年には、乳幼児を中心とする 20~30 万人規模の全国流行が発生し、数十人規模の死亡者が発生しました。その原因として、当時の 1 歳児の麻疹ワクチン接種率は約 50%と低かったことが挙げられました。そのため、全国の小児科 医を中心に麻疹対策が強化され、「麻疹ワクチンを 1 歳のお誕生日のプレゼントにし ましょう」をキャッチフレーズとして、1 歳になったらすぐのワクチン接種が積極的に 勧奨されることになりました。その後、麻疹の患者数は減少傾向となります。

しかし、2007 年にはワクチン未接種あるいは 1 回接種歴のある 10~20 代を中心とす る大規模な麻疹の全国流行が発生します。多数の大学や高等学校が麻疹による休校となり、 麻疹ワクチンの不足、麻疹抗体測定用キットの不足など、社会問題にも発展しました。 これを受けて、厚生労働省は「麻疹に関する特定感染症予防指針」を告示し、対策に乗り出します。

2008 年には 10~20 代を中心として 11,000 人を越える大規模な全国流行となり、0 歳 児も多く発症しましたが2007年の予防指針に基づく国を挙げた対策によって、 2009 年には 700 人台、2010 年には 400 人台まで激減しました。

2011 年にヨーロッパで麻 疹の大規模な流行が発生し、国内にも麻疹ウイルスが持ち込まれて、小規模な集団感染が発生しましたが、全国的な流行には至りませんでした。

2012 年はさらに患者数は減少し、2013 年には「排除」に近い状態にあることが示唆されました。10 代以下の患者数が激減し、2013 年は約 7 割の患者が成人となりました。

世界保健機関(WHO)は2015年3月に、「日本は麻疹の排除状態にある」と認定するに至りました。

では2016年8~9月に、再び集団感染が発生したのはなぜか。厚生労働省によれば、関西空港の従業員や利用者から検出されたウイルスは「H1」という中国やモンゴルで流行している型で、7~8月に千葉県松戸市を中心に報告されたのは、東南アジアや南アジアなどで流行している「D8」ウイルスとのことでした。

海外には、いまだにはしかが流行している国は多く、「排除」認定された今日でも、海外で感染して日本に持ち込む危険性は、常にあるということなのです。

麻疹にかかりやすい年齢

年齢別に見ると、最も多いのは1歳代です。次に多いのが生後6〜11か月、そして次に2歳代の順となります。2歳以下だけで全体の約半数を占めます。

赤ちゃんは母体から免疫を受け継いでいて、生後9カ月頃まではその免疫によって発症が抑えられます。ですが、ワクチンの効力が落ちて抗体価が低下している女性が妊娠した場合、胎児が十分な抗体を持たず生まれ、生後5カ月以内で免疫が切れてしまうケースが報告されています。

乳幼児以外では10歳代から20歳代前半が最も多く、次いで20歳代後半の順となっています。

ワクチンの定期接種の接種率が上昇しているため、幼児の麻疹の患者数は年々減少しています。しかし、定期接種を受ける年齢に達していない1歳未満の乳幼児が多い保育園では感染者数が増えている傾向があります。また、幼少時にワクチンを1回だけしか接種したことがない10〜20代の世代でも感染者が増えているという方向があります。

※年代別の麻疹への感染リスクについては、こちらをご覧ください。
※1回のみのワクチン接種では効果がない理由は、こちらを。
※子供のかかる病気は、こちらにまとめています。

感染経路・・・「空気感染」の脅威

麻疹ウイルスの感染経路としては、飛沫感染、接触感染、そして空気感染が挙げられます。順に見ていきましょう。

飛沫感染
くしゃみや咳によって病原体が飛散し、周囲の人の粘膜に付着する感染経路です。風邪、インフルエンザなど有名なウイルス性疾患と同じく、咳エチケット(マスクの着用など)の徹底が、予防のためには重要となります。

接触感染
皮膚、粘膜などの物理的な接触によって感染するものです。誰かがウイルスのついた手で触れた手すりを触り、その手で目などの粘膜をこするといった間接的な接触でも感染します。

空気感染
麻疹の感染経路でもっとも注意しなければならないのは「空気感染」です。一般的な感染症で空気感染するのは、麻疹、水疱瘡、そして結核の3つしかないと言われています。この空気感染は飛沫感染とどう違うのでしょうか。

飛沫感染は上にも述べた通り、くしゃみや咳などで水分を含む重く大きな粒子が飛ぶため、2m以内でほとんどの粒子が床に落ちてしまいます。したがって、距離が離れていれば直接の感染はありません。インフルエンザなどの一般的な呼吸器感染症のほとんどは、この飛沫感染によって感染します。しかし空気感染では、小さく軽い粒子が空中を長く浮遊することで、距離が離れている相手にも感染し、状況によっては爆発的に感染が拡大する危険性をはらんでいるのです。

潜伏期間

麻疹ウイルスに感染してから発症まで10~ 12日間ほどかかります。

ワクチン

麻疹ウイルスのワクチンは定期接種(無料)となっています。1歳になった1年間のうちに1回目を、小学校に入学する前年の1年間のうちに2回目を接種することになっています。2回接種すれば95%は免疫ができると言われています。

2回接種するのには、ふたつの理由があります。ひとつめの理由は、1回だけでは十分な免疫がつかないケースがあるからです。もうひとつの理由は、近年麻疹の患者数が減少したことで、麻疹ウイルスに接する機会が少なくなり、ワクチンで獲得した免疫が、年齢を重ねるに従って徐々に減衰してしまうためです。これらの理由のため、麻疹ワクチンは2回の接種がすすめられています。

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麻疹の症状

麻疹の典型的な症状を見ていきましょう。麻疹の症状は、現れる順序や症状の続く期間に個人差が少ないという特徴がありますので、症状の現れ方から、麻疹かどうかをある程度推測できます。

ただし、ワクチンを接種していたり、一度かかって免疫のある人の場合は、典型的な例よりも症状の程度が軽く、期間も短くなるケースが多くなります。

初期は風邪のような症状

最初の3 – 4日間は、38℃前後の発熱、倦怠感、上気道炎症といった風邪のような症状が起こります。その後、口腔粘膜の奥歯のあたりに、直径1mm程度の少し膨らんだ白色小斑点(コプリック斑)ができます。

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目の症状としては、多量の目ヤニ、涙、眼痛が現れます。角膜潰瘍(角膜が白濁する)や、角膜穿孔が起こり、失明するケースもあるので注意が必要です。

このような初期の数日間は、他者に感染させてしまう力が最も強い時期になります。麻疹だと気付かず、ただの風邪だと思って他者と接してしまい、感染を拡大させてしまうことが、よく起こります。

全身の発疹

風邪のような症状が数日間続くと、いったん熱が下がります。

ところが、半日ほどで再び39~40℃の高熱が出ます。このように発熱の波が2回訪れることを、「二峰性発熱」といいます。この高熱とともに発疹が出現します。発疹は体幹や顔面から目立ち始め、続いて手足の末端まで広がっていきます。

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発疹は鮮やかな赤色で、少し隆起しているのが特徴です

発熱、発疹だけでなく、咳や鼻汁がいっそう強くなり、下痢を伴うことも多くなります。口腔粘膜が荒れて痛みを伴います。こういった症状と高熱による全身の倦怠感のため、口から栄養や水分を摂取するのが難しくなります。特に乳幼児は脱水に陥りやすいので要注意です。

発疹は72時間(3日間)ほど続きます。発熱が3日以上続くような場合には、細菌による二次感染が疑われますので、医師の指示を仰いでください。

回復期

3日ほど経つと高熱が下がってきます。咳は強く残りますが、徐々に改善していきます。発疹は5~ 6日ほどで皮がむけるように取れていきます。

感染力は回復期の2日目ごろまでは残っていますので、学校保健安全法施行規則により下熱後3日が経過するまでは出席停止となります。

麻疹の治療法

麻疹には特効薬がなく、対症療法で対処する以外に治療法はありません。

高熱でぐったりする場合には、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱剤を使います。しかし、安易に解熱剤を用いると、かえって細菌による二次感染のリスクを高めることになるので、医師の指示に従うようにしてください。

その他、喉や鼻の症状に応じて鎮咳去痰薬を用いたり、輸液や酸素投与などの支持療法が行われます。細菌性の二次感染が疑われる場合には、抗生物質が投与されます。

合併症

麻疹にかかると、以下のような合併症に気を付けなければいけません。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

麻疹ウイルスで注意しなければならないのは、麻疹の症状が治まった後も、ウイルスが脳内に潜伏する可能性があることです。ごくまれではありますが、脳内に潜伏した麻疹ウイルスが変異を起こして、7~10年も経ってから「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」を引き起こします。これは知能障害や運動障害がゆっくりと進行する予後不良の脳炎で、麻疹感染者の数万人に一人が発症するといわれています。

ウイルス性脳炎

麻疹に感染した患者のうち、1000人に1人くらいの割合で発症する脳炎です。発症すると6人に1人が死亡し、3人のうち1人に神経系の障害が残るとされています。

咽頭~気道の合併症

麻疹ウイルスそのもによる中耳炎、ウイルス性肺炎(間質性肺炎)、細気管支炎、仮性クループが起こる可能性があります。

また、細菌の二次感染による中耳炎、細菌性肺炎、気管支炎、細菌性腸炎が起こる可能性があります。結核を患っている人は症状が悪化します。細菌性腸炎を起こすと、激しい下痢と腹痛に見舞われ、下痢は粘血便となることがあります。

妊娠中の合併症

ワクチンを接種していない女性が妊娠中に麻疹にかかると、子宮収縮が必要以上に促されて、流産を起こす危険性があります。妊娠初期に感染すると31%が流産し、妊娠中期以降に感染した場合でも9%が流産または死産、24%は早産になるとの報告があります。

妊娠を望む女性で、麻疹ワクチンを打っていない人は、早めに接種しておくことが重要です。

2016年9月の集団感染を受けて、9月12日付けの「医療介護CBニュース」には、次のような記事が掲載されました。

麻疹(はしか)の患者報告が相次いでいることを受け、日本産婦人科医会は、妊婦やその家族に対する注意事項をホームページに掲載した。妊娠中の罹患で流産・死産の報告があることや、胎児の発育異常が生じる恐れがあることを指摘。感染者が多く発生した場所への外出は避けるといった予防策に加え、感染が疑われる際の医療機関への受診方法を説明している。

(中略)

妊娠中に麻疹に罹患した場合、3-4割が流産や死産、早産になるとの報告があることや、胎児の発育異常や羊水量の異常、新生児麻疹(分娩時に罹患)などが生じる恐れがあることを説明。これから妊娠を計画している人や家族など周囲の人に、麻疹ワクチン(MRワクチン)の接種を考慮するよう促している。

播種性血管内凝固症候群 (DIC)

非常にまれですが重篤な合併症です。本来出血箇所のみで生じるべき血液凝固反応が、全身の血管内で無秩序に起こってしまう疾患です。出血(紫斑、止血不良など)と臓器虚血が主症状となります。脳内出血、消化管出血、多臓器不全が引き起こされ、非常に危険な状態に陥ります。

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