【川崎病5】冠動脈瘤をケアし、心筋梗塞を予防する

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全身の血管に炎症が起こる原因不明の病気、川崎病。ある割合で冠動脈瘤の後遺症を患い、冠動脈狭窄や心筋梗塞のリスクを一生背負って生きていくことになります。そうした後遺症を患ってしまった場合に、どのようにして心筋梗塞のリスクを回避するのでしょうか。

川崎病とは

このサイトでは川崎病について、5つの記事にまとめています。

【川崎病1】急増する原因不明の難病、その症状と診断
【川崎病2】急性期の治療法「免疫グロブリン大量療法」
【川崎病3】後遺症に苦しむ子供たち・・・NHKの報道から
【川崎病4】後遺症の冠動脈瘤は、どのように形成されるのか
【川崎病5】冠動脈瘤をケアし、心筋梗塞を予防する

この記事は最後の5本目にあたります。川崎病についての基礎的な情報や急性期の治療法については、これまでの記事を参考にしてください。今回は、後遺症として冠動脈瘤ができてしまった場合に、死に至る危険性のある心筋梗塞を回避するために、どのような治療が可能かについて見ていきます。

冠動脈瘤ができたら「血栓」に注意

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冠動脈瘤ができてしまったとき、最も注意しなければならないのは、冠動脈瘤の内部に「血栓」ができてしまうことです。

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血管を構成する3つの層の最も内側に位置する「内膜」は、その表面を血管内皮細胞がひとつの層を成して覆っています。血管内皮細胞は、必要な成分を血液から取り込む重要な役目を果たしているほか、細菌など外敵の侵入に対し臓器を保護する役割も担っています。そして重要なのが、血栓(血の塊)ができるのを防ぐ働きです。

川崎病による炎症で血管壁が障害を受けて内皮細胞に損傷が起こると、血栓を防ぐ機能が失われてしまいます。特に冠動脈瘤の内部は大きな損傷を受けているので、より血栓ができやすい状態になっています。

この血栓によって冠動脈が完全につまってしまうと、心筋細胞に血液が送られなくなります。その結果、心筋細胞の酸素が欠乏して一部が壊死し、心臓の働きに重大な支障が生じます。このような状態を「心筋梗塞」といいます。

心室壁が広範囲にわたり障害を受けると、血圧が低下しショック状態になり、突然死することがあります。このような事態に陥らないために、冠動脈瘤ができてしまった場合には、血栓ができないようコントロールすることが非常に重要なのです。

心筋梗塞になる確率

関連記事でも触れていますが、川崎病にかかった患者のうち、後遺症によって心筋梗塞を起こす人は、どのくらいの割合なのか、統計結果を見てみましょう。近年の傾向を反映して、年間15000人が川崎病に罹患するとします。

(1)川崎病に罹患 15000人/年

(2)急性期に心血管に合併症が現れる確率
9.3%(男11.0%、女7.1%)=約1400人/年

(3)後遺症として心血管合併症が残る確率
3.0%(男3.6%, 女2.1%)=約450人/年

(4)冠動脈瘤が残る確率
0.78%=約117人/年

(5)内径8.0mm以上の巨大冠動脈瘤ができる確率
0.22%=約33人/年

(6)巨大瘤を持つ人のうち10年後までに冠動脈狭窄・閉塞を起こす確率
33人の約60%=約20人

(7)巨大瘤を持つ人のうち15年後までに冠動脈狭窄・閉塞を起こす確率
33人の約70%=約23人

(8)冠動脈が閉塞した人のうち心筋梗塞の症状が現れる確率
23人の約3分の1=約7.7人

(9)心筋梗塞の症状が現れたうち死亡した人の確率
7.7人の約20%=約1.5人/年

この結果を見ると、年間に川崎病に罹患する15000人のうち、心筋梗塞で死亡するのは0.01%の1.5人。そのリスクは、ごくわずかだと思うかもしれません。しかし、リスクはゼロではありません。しかも川崎病の患者数は、年々右肩上がりに増えています。一生にわたって適切なケアを続けていく必要があるのです。

心筋梗塞の症状

まず、心筋梗塞とはどのような症状をもたらすのでしょうか。主な症状を以下にまとめます。

・激烈な冷や汗をともなう持続的な胸痛
・背中、肩、腹部の痛み
・息苦しさ
・血圧の低下
・不整脈

乳幼児が心筋梗塞を起こすと、以下のようなサインを発します。

・顔面蒼白
・嘔吐
・不機嫌

乳幼児は自分の症状を言葉にすることができないので、小さなサインを見逃すことなく、適切な対処をすることが重要です。

一口に心筋梗塞といっても、予後は梗塞の範囲、つまりどれだけの範囲が障害を受けたかによって異なります。

重要なのは「血栓」を予防すること

血栓ができるのを予防するため、血小板の働きをおさえる「アスピリン」、「チクロビジン」などの抗血小板薬を継続して服用することが必要です。アスピリンはまれに胃かいようなどの副作用がみられ、貧血になることがあるので、医師の指示に従って慎重に継続します。

血栓ができやすい巨大瘤の場合は、血液中の凝固因子の働きを抑え、血を固まりにくくする「ワーファリン」という抗凝固薬を併用します。これも副作用として出血しやすくなるため、定期的に血液検査を受け、薬の効果を調べてもらうことが大切です。

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このワーファリンは、【川崎病3】の記事に記載した、NHKの番組に登場した小学校2年生の男の子の例もご覧ください。脳や腹部が出血して血が止まらなくなると命に関わるため、大好きなサッカーを諦めざるをえないというエピソード…川崎病の後遺症は、人生を変えてしまうのだということが分かります。

血栓は「心筋虚血」を招く

「心筋虚血」とは、心臓を構成する筋肉=心筋が血液不足になる状態を指します。心筋虚血によって起こる諸症状を「虚血性心疾患」と呼びます。

冠動脈が血栓によってある程度ふさがれた状態になることを、「冠動脈狭窄」といいます。狭窄が起こっても、ただちに何らかの治療を行わなければならないというわけではなく、50%狭窄(正常と思われる血管の半分くらいの狭さ)程度では、「心筋虚血」はみられません。

血管の90%以上がふさがれてしまい、心筋への血流量が減ると、「狭心症」と呼ばれる胸の痛みなどの症状が起こります。このような症状が現れたら、すぐに適切な治療を行う必要があります。これを放置して冠動脈が完全に閉塞してしまうと、「心筋梗塞」に至って命に関わる事態になります。

「無症候性心筋虚血」に要注意!

心筋虚血の状態になっているのに、何の症状も起こらないことがあります。胸の痛み(狭心痛)が起これば、心筋に異常が起こっていることを知ることができますが、まったく症状がないのに、静かに「心筋虚血」が進行してしまうのです。

こうした状態を、「無症候性心筋虚血」と呼びます。川崎病の後遺症で冠動脈瘤ができた場合には、冠動脈が狭窄状態になり、心筋虚血→心筋梗塞に至るリスクを一生背負っていくことになるわけですから、何の症状もなかったとしても、「無症状性心筋虚血」の状態になっている可能性を常に考える必要があります。知らず知らずのうちに心筋がむしばまれてしまうことのないよう、定期的な検査を受けることが推奨されます。

心筋虚血の検査

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心筋虚血になっているかどうかは、検査を受けることで分かります。RI心筋イメージング検査、トレッドミル検査(運動中の心電図変化をみる検査)、体表面心電図、電子ビームCT検査などを定期的に行い、心筋虚血の有無を調べることが大切です。

心筋虚血であることが判明すれば、適切な治療を受けることで、心筋梗塞に至るリスクを軽減することができます。

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狭くなった冠動脈の治療方法

心筋虚血が明らかになると、十分な血液を送ることができるよう、血行再建術を施します。血行再建術には、次の二つが挙げられます。

(1)カテーテルによる治療
(2)冠動脈バイパス手術

どちらにも利点と欠点があり、狭窄の状態によって選択されます。

カテーテルによる治療

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カテーテルの先についている小さな風船を冠動脈の中でふくらませ、厚くなった血管壁を外側へ押しやるようにして血管の内腔を広げるものです。これは早期にできた狭窄の治療に有効です。川崎病発症後1、2年では血管壁がまだ柔らかいので有効です。

もうひとつ、カテーテルの先端についているドリルを高速回転させ血管壁を削る方法があります(ロータブレーター)。血管壁が厚く硬い場合に有効で、発症から10数年経過し、石灰化がみられる狭窄の治療に使われます。

デメリットとしては、カテーテルを使う方法は、風船やドリルで機械的に血管の内腔を広げても、再び狭窄が進行することがあります。それを防ぐために「ステント」と呼ばれる直径2〜4mmの金属製の網状のチューブを、押し広げた血管に留置する方法があります。ただし、ごくまれにステントに血栓が付着して血管が閉塞してしまうことがあります。

冠動脈バイパス手術

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冠動脈バイパス手術は、交通渋滞を緩和するためバイパス道路をつくるのと同じ考え方です。狭窄したり、つまったりした場所より先の部分に、他の血管(グラフト)をつなぎ、血液不足を補います。血液が不足している心筋の部分に、血液を送る血管がもう一本増やすことで、心筋虚血を改善するわけです。

1984年に北村惣一郎(元・国立循環器病センター総長)らによって内胸動脈という血管がグラフトとして使われるようになり、グラフトの開存(つないだ血管が開通していること)成績が上昇しました。この方法は血管の細い幼児でも可能で、体の成長とともにグラフトも成長し、術後15年を経過しても約80~90%の患者でバイパスの機能を果たしていることが確認されています。

冠動脈バイパス手術によって心筋虚血が改善すると運動制限はなくなり、自由に運動できるようになります。これは川崎病の後遺症で運動を諦めていた子供たちにとって、大きな恵みになっています。

急性心筋梗塞を起こした場合

徐々に進行する冠動脈狭窄に気付くことができなかった場合、心筋梗塞はある日突然、何の前触れもなく起こります。

急性心筋梗塞を起こした場合は、緊急に治療を受ける必要があります。まずは、血管をつまらせている血栓をとかす薬を静脈内に投与します。または冠動脈内に投与する「冠動脈内血栓溶解療法」によって、血栓をとかし血管を再開通させます。

「冠動脈内血栓溶解療法」は、カテーテルを使って冠動脈内に血栓溶解剤を直接流し込み、血管内部にできた血栓を溶かして血流を改善させる方法です。直接患部に働きかけることができるため、投薬に比べて即効性・有効性がある一方で、心筋障害発症後速やかに行わなければ効果が見込めないという問題点もあります。

「子供の病気」に関する記事について

子供は様々な病気にかかります。当サイトでは、保育園や学校でもらってくる感染症やアレルギー性疾患など、それぞれの症状や治療法をご紹介しています。

〔子供がよくかかる感染症〕
子供がかかる典型的な感染症を列記します。詳しくは、それぞれの病名をクリックしてください。

インフルエンザ
高熱、寒気、頭痛・関節痛・筋肉痛など全身症状が現れます。11~3月ごろ流行します。
※タミフルやリレンザなどのインフルエンザ治療薬によって、飛び降りなどの異常行動が起こる事例が報告されています。

インフルエンザ脳症
インフルエンザの合併症。痙攣、意識障害、異常行動などを起こし、30%が死亡、25%に後遺症が残ります。
※具体的な事例をこちらにまとめました。

マイコプラズマ肺炎
発熱としつこく長引く咳が特徴。2016年秋の患者数が過去最高と報じられました。

川崎病
4歳以下の子供に多く発症する原因不明の病気。全身の血管に炎症が起こり、心筋梗塞のリスクを高める重篤な後遺症を残す危険性があります。近年増加の傾向があり注意が必要です。次の5つの記事からなります。
【川崎病1】急増する原因不明の難病、その症状と診断
【川崎病2】急性期の治療法「免疫グロブリン大量療法」
【川崎病3】後遺症に苦しむ子供たち・・・NHKの報道から
【川崎病4】後遺症の冠動脈瘤は、どのように形成されるのか
【川崎病5】冠動脈瘤をケアし、心筋梗塞を予防する

溶連菌感染症
喉のはれ、発熱などつらい症状を起こしますが、検査によって正確な診断が可能で、特効薬もあります。

水疱瘡
全身の発疹が特徴です。発疹は水ぶくれになり、かゆみを伴い、熱も出ます。

おたふく風邪
正式名称は「流行性耳下腺炎」。耳の下が腫れあがる症状が特徴です。

麻疹(ましん)=はしか
高熱と咳、鼻水、結膜炎、そして全身に発疹が現れる比較的重い感染症です。空気感染による非常に高い感染力が特徴です。
※年代別のワクチン接種状況と感染リスクについてはこちらを。
※1回のみのワクチン接種では効果がない理由はこちらを。

風疹
顔から全身に広がる発疹、発熱、耳の後ろあたりのリンパ節の腫れなどの症状を表すウイルス性疾患です。

先天性風疹症候群
妊婦が風疹にかかることによって、お腹の中の胎児にも風疹ウイルスが感染。その結果、生まれてくる赤ちゃんに引き起こされる白内障や心奇形、難聴といった障害のことを指します。

ウイルス性髄膜炎
発熱、頭痛、嘔吐が主な症状です。手足口病やヘルパンギーナ、おたふく風邪などの合併症として発症します。

〔夏の三大感染症〕
夏の乳幼児に流行する典型的な3つの病気があります。

手足口病
手と足と口の中にポツポツとした水疱性の発疹ができるのが特徴です。

ヘルパンギーナ
39℃を超える急な発熱と、喉の奥にできる水疱が特徴です。

咽頭結膜熱=プール熱
39℃を超える急な発熱と、痛みを伴う喉の症状(咽頭炎)と目の症状(結膜炎)が特徴です。

〔子供の貧血〕
「鉄欠乏性貧血」は、鉄分の不足によって起こる貧血です。成人女性によく見られる症状ですが、実は子供にも発症します。

乳幼児の鉄欠乏性貧血
乳幼児の鉄欠乏は発育に大きな影響を及ぼす危険性があると言われています。妊娠中の母親の鉄欠乏が、おなかの中の胎児の鉄欠乏の原因にもなるので、お子さんを授かったら、ママ自身のケアが重要になります。

思春期の鉄欠乏性貧血
思春期によく見られる「顔色が悪い」「疲れやすい」「注意力や集中力の低下」といった問題は、鉄欠乏が原因かもしれません。特に思春期の女性は、その約10%が治療が必要なレベルの鉄欠乏性貧血と言われています。

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