【梅毒】急増する性感染症、その背景と症状

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性感染症のひとつ「梅毒(ばいどく)」の患者が、2012年以降急増しています。2016年は早々に前年の患者数(2698人)を超え、10月初旬の段階で3000人を上回りました。その背景には何があるのか?梅毒の症状はどのようなものなのか、まとめました。

梅毒とは

性感染症の基礎知識

梅毒について説明する前に、まずは性感染症の基礎知識に触れておきます。

性感染症とは、性行為によって感染する病気の総称です。以前は「性病」という呼び方が一般的でした。また、「Sexually Transmitted Diseases」略して「STD」とも呼ばれます。

感染症法の規定では、主な性感染症として次の6つを挙げています。

性器クラミジア感染症
・性器ヘルペスウイルス感染症
・尖圭コンジローマ
・梅毒
・淋菌感染症
・B型肝炎

一般に性感染症という場合には、より広範な病気を指し、以下のようなものも含めて考えます。

・HIV感染症/エイズ
・腟トリコモナス症
・性器カンジダ症
・非クラミジア性非淋菌性尿道炎
・ケジラミ症
・疥癬
・軟性下疳
・A型肝炎
・C型肝炎
・赤痢アメーバ症
・細菌性腟症
・伝染性単核球症(キス病)
・サイトメガロウイルス感染症
・成人T細胞白血病

また、「性行為」とは、腟性交(通常のセックス)だけでなく口腔性交(オーラルセックス:フェラチオ・クンニリングス・リミング)、肛門性交(アナルセックス)も含めるのが一般的です。リミングといのは聞きなれない言葉かもしれませんが、口で肛門に触れる行為を指します。

梅毒の病原体

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梅毒の病原体は「梅毒トレポネ−マ(学名:Treponema pallidum subsp. pallidum)」で、直径0.1~0.2 μ、長さ6~20 μの螺旋状の形をした細菌です。通常の明視野光学顕微鏡では視認できず、暗視野顕微鏡で観察されます。

梅毒の感染経路

性行為による感染が多いことから「性感染症」に分類されます。感染力は非常に強くて、この菌を排出している感染者と、コンドームをしないでセックスをしたり、口によるオーラルセックスをすると、高い確率で感染します。

梅毒の症状

梅毒の進行の仕方は、「3週間3ヵ月3年」という表現されます。順を追ってみていきましょう。

第1期(感染から3週間程度)

感染部位(主に性器)に痛みのない小豆大のしこりができたり、リンパ節が腫れたりします。しこりは悪化して潰瘍になることもありますが、いつの間にか自然消滅してしまうことが多いです。この時点では、あまり目立った症状があらわれないため、気がつかないまま過ごしてしまうことが多いと考えられています。

第2期(感染後3ヵ月経過)

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手足の平や背中など、全身に「バラ疹」と呼ばれる赤色系の斑点(発疹)が現れます。さらに脱毛、発熱、疲労倦怠感、全身のリンパ節が腫れるなどの症状も伴います。バラ疹もしばらくすると自然に消えてしまいます。

この段階で梅毒と診断されることが多いのですが、似たような症状を示す他の皮膚病と間違えられることもよくあると言います。医師の中にも「梅毒は昔の病気」という認識が残っていて、臨床経験のない医師がほとんどという状況が、正確な診断を妨げています。

アレルギー、風しん、麻しん等に間違えられることもあります。この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器の障害につながることがあります。

第3期(感染後3年以上)

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皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生します。ゴム腫が崩れると瘢痕(傷)となるため、「鼻が落ちる病」などと表現されました。さすがに現代の日本では、ここまで悪化させるケースは稀だと考えられていますが、こういったリスクがあることを知っておいた方がいいでしょう。結局は自分の身体を守るのは自分自身なのです。

第4期

感染後10年以上経ってから現れる症状。中枢神経系と循環器系を中心に全身が冒され、麻痺や痴呆、精神障害などが現れます。多くの臓器に腫瘍が発生することもあり、死に至ることもあります。現在では、ここまで病状が悪化することはほとんどありません。

梅毒の診察と検査

梅毒に感染したかどうかは、医師による診察と血液検査(抗体検査)で判断します。どの医療機関でも検査は可能です。第1期の最初の数週間は抗体検査をしても陽性反応が出ないことがあるため、感染してから十分な期間(約3週間)をおいて、検査結果を確認する必要があります。

正確に検査をするために、感染の可能性がある時期や感染の予防状況(コンドーム使用等)について、きちんと医師に伝えましょう。 梅毒に感染していたと分かった場合は、周囲で感染の可能性がある人(パートナー等)も一緒に検査を行うようにしましょう。

梅毒の治療

一般的には、外来で処方された抗生物質を内服して治療します。投与期間は第1期で2〜4週間、第2期では4〜8週間、第3期以降は8〜12週間ほどで、長期にわたってペニシリン系の抗生物質を内服します。海外ではペニシリンの筋肉注射を打つ治療が一般的ですが、日本では筋肉注射は認可されておらず、長期の内服が一般的となっているようです。内服期間などは医師が判断します。病変の部位によっては入院のうえ、点滴での治療を行うこともあります。

医師が治療を終了とするまでは、処方された薬は確実に飲みましょう。性交渉等の感染拡大につながる行為は、医師が安全と判断するまでは控えることが重要です。

パートナーも感染している場合には、一緒に治療を行う必要があります。

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梅毒の歴史

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すごく古い話から始めると、梅毒は、15世紀末にコロンブスがアメリカ大陸に到達した成果とともにヨーロッパに持ち帰り、その後またたくまに世界に広がったと言われています。長らく治療法が見つからない難病として恐れられました。

コロンブスによってアメリカ大陸からヨーロッパに梅毒が最初にもたらされたのが1493年。その後、大航海時代にインド、マレー半島にわたり、16世紀の初めには中国の広東にまで達したと考えられす。江戸時代には、吉原などの風俗街を感染源に流行したため、「花柳病(かりゅうびょう)」とも呼ばれました。杉田玄白は著書の中で「毎日1000人の患者を診るうち、実に700〜800人が梅毒である」と書き残しています。

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このように、アメリカ大陸のローカルな病気だったと思われる梅毒は、なんと20年足らずの間に世界を駆け巡り、その後400年以上にわたって、各地で大流行を起こしたのです。

梅毒には長らく有効な治療法がありませんでした。水銀やヨウ素などを使った危険な治療法が行われたり、怪しげな民間療法が行われたりもしました。わざとマラリアに感染させて、その熱で梅毒を駆逐するという、とんでもない治療法が1920年以降に実際に行われていたというから驚きです。

そんな状況を一変させたのが、1940年代に初めて発見された抗生物質「ペニシリン」です。日本では戦後から使われるようになり、これによって梅毒は完治させることのできる感染症となりました。

戦後の梅毒の患者数

国立感染症研究所のデータによると、日本における梅毒感染者は1948年にはおよそ22万人。それがペニシリンの導入によって激減。90年代以降は1000人を下回り、ほぼ横ばいが続いていました。

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ところが、2013年から増加傾向に転じます。2014年は1671人、2015年は2698人。そして2016年は10月初旬の時点ですでに3284人と、すでに前年を超えています。

中でも女性感染者の増加が際立っています。全国で2010年から2015年までの5年間に5倍に急増。全体の患者数の半数を超える東京都では、20~24才の女性患者数が突出して増え続けていて、2013年に51人、2014年に87人、2015年に271人と、たった2年の間に5倍以上のペースで増え続けています。

若い女性の梅毒感染者は「先天梅毒」を招く

若い女性に感染は注意が必要です。妊娠している場合、胎盤を経由して胎児に感染する可能性があります。その場合、流産や死産を招く危険に加えて、生まれた赤ちゃんが先天性の梅毒になる可能性があります。

先天梅毒の赤ちゃんは、神経系の障害や肝臓の病気を持っていることが多いとされます。赤ちゃんの梅毒は、現在においても治療が難しいそうです。

厚労省が標準とする妊婦健診では、妊娠初期(13週まで)に1回、梅毒を含めた性感染症の有無を調べることになっています。その時点で感染が分かれば、妊婦が薬を飲むことで完治させることができ、胎児への感染を避けることができます。しかし、妊娠中期(14週)以降に性交渉を行って梅毒に感染する可能性もあります。その場合は、妊婦が自身で検査を受けない限り、赤ちゃんの感染に気づくのは困難となります。

近年の梅毒感染者急増の背景

梅毒感染者が2013年以降急増している理由は、はっきりとは分かっていません。専門家は、次の様な可能性を考えています。

性風俗産業の低価格競争

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20年来続く日本経済のデフレ傾向は、性風俗産業にも影響し、ここ数年で激安風俗が増えていると言われています。名の通った老舗や高級店は、変な噂が立つのを防ぐ意味も含めて、従業員女性の性病検査を定期的に行っているそうですが、新規参入してきた事業者の中には、衛生面をおろそかにしているところもあるようで、性病に対する認識をおろそかにしたまま、女性に接客させています。

激安店で働く女性の中には、ちょっとでもいい条件を求めて勤め先をころころ変える回遊魚のような女性も多いようで、彼女たちが結果として梅毒などの性感染症の流行をうながしている可能性が指摘されています。

LINEなどによる手軽な「出会い」

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ここ数年で、スマホの普及によって、LINEなどを駆使して出会うことに、抵抗を持たない若い女性が増えていると言われています。性風俗産業に勤めている女性でなくても、ごく「普通」の女性たちが、手軽な「出会い」によって梅毒の感染源になっている可能性があります。

その相手となっているのは30~40代の男性と考えられ、それを証明するかのように、40代男性の梅毒感染者数も急増しています。

梅毒の感染を防ぐために

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アメリカなどでは、梅毒にかかりたくなかったら、パートナーとだけセックスすること、と言われています。パートナーが変わった時は、お互いに性感染症の検査をして交換し合う「ブライダル・チェック」のようなことを推奨している国もあるといいます。

そのうえで、セックスする時には必ずコンドームを使用すること、口からも感染する可能性があるので、口を使ったオーラルセックスは控えることが求められます。

自分の身を守るのは、結局は自分自身。一人のパートナーに対して、お互いが感染源になることのないよう、注意深く身体を重ねることが大切です。

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